95話 別荘

 通りを進んでいた俺たちは、


「ねえねえ!あそこのお店良くない?」


「あっちもすごいよ!」


 などなど。

 超お気楽な気分で進んでいた。

 ……買い物ばっかりしてるからこれが進んでいるのか俺にはよくわからないけど……。


「トオルはどれのお店がいいと思う?」


「……お金は渡すから好きなところに行ってていいんだぞ?」


「分かってないなぁ……」


 何故かルーナにそう言うと、呆れられてしまった。

 俺は別に買い物したいわけじゃないし……。

 回るんだったら女子で回ってきたらどうなんだ?


「みんなで回るからこそ楽しめると言うものじゃない!」


「そんなに力説されても……」


 俺……もうそろそろ人混みで酔いそうなんだけど……。

 帰っていいっすか?


「むう……なら夜には付き合ってよ?」


「別にそれならいいけど……」


「じゃあ決まり!みんなに伝えてくるね」


 そしてルーナはいろんなお店で選んでいるみんなのところへと走っていった。


「俺はもういいかな……」


 流石にこの人混みは疲れる。

 この人混みをあえて例えるのなら銀座の混み具合がずっと続いているみたいな感じだ。

 そこまで慣れていない俺にとっては地獄でしかない……。

 とりあえず俺は人混みを避けるために、例の地下室へと転移した。


 地下室の入り口まで転移し、入り口の扉を開ける。


「「「「「お帰りなさいませっ!アニキっ!!」」」」」


 まさかのあの囚人たちが一列に並んで綺麗にお辞儀してきた。

 ……どした?急に?

 さっきまでの囚人とは思えないような態度だな……。


「……どした?急に?」


 俺は心で思ったことと同じことを聞いた。


「私たちはアニキに助けられました!このご恩を返すために我ら、何でもする所存です!!」


 ……いや、そこまでしなくても……。

 て言っても聞く耳を持たないだろうなぁ……。

 ホント、何でここに連れてきちゃったんだろう……。

 部屋を見てみると、囚人服が綺麗に折り畳まれ、俺が予備として買っておいた服のほとんどが消えていた。

 ……いや、いいんだけどね!


「うーん……それじゃあ先ずは他の場所を探すか……」


 40人ぐらいがここに泊まるのは少々……、いやだいぶ狭い……。

 詰めに詰めまくってようやく全員が、といったところだ。


 流石にここに住まわすのは俺の良心が痛む。

 それにここは王国近くの洞窟をさらに掘って作ったものだから見つかるかもしれない。

 かと言ってあのダンジョンはもう定員オーバーだ。


「……どこかに住みたい希望とかあるか?」


 考えても場所が出てこなかったから俺は野郎どもに尋ねた。


「アニキのお役に立てるのならどこでもいいであります!!」


 その意見に全員がうんうんと、頷いている。

 ……そこ頷くところか……。

 なるべく見つからないところと言えば他に何かあったかな?

 ……あ!あの王国湖辺りはどうだ?

 あそこなら戦争の影響で入場に規制がかかっているし、何よりあそこに別荘を建てたいと思ってたところだ。


「じゃあ移動するぞ」


 俺は大人数のまま、転移した。


 メルトリリス王国湖は戦争の余波は受けておらず、綺麗な湖のままだった。

 ……ほっ。そこまで被害が出ていなくて助かったぜ……!

 これで戦争により生まれた有害物質がここの湖を害していたなんて事を見たらショックで膝から崩れ落ちてしまうわ!


「それでアニキ?これからどうするのですか?」


「ちょっと待って」


 俺は湖から約5分ほど歩いた平原に移動する。


「ここなら大丈夫だろう」


 見る感じ土壌もしっかりしてるし、ここでいいだろ。

 流石に森を伐採して建てるわけにはいかないしな。


「じゃあ……〈創造〉」


 俺は今から住みたい家を考える。


 ……大きさは大体700坪ぐらいだな。

 そうじゃないと住めるかわからないし、他にもいろんな速を用意したいからな。

 ……少し広すぎるかもしれないけど。

 だって700坪って言ったらバスケットボールのコート6面……よりは少ないぐらいか。

 敷地面積でそれだったら結構ヤバイ。

 だって3階ぐらいの高さで作ろうと思ってるし。


 それから十分後。

 ようやく完成した俺たちの家はあの貴族の屋敷をはるかに凌駕しているものだった。


「それじゃあ探検に行くぞー!」


「「「「「「おおーーー!!!」」」」」


 大の大人が騒ぐとうるさいな……。

 まあ俺がそうさせたんだけど。


 まずは横に5人ぐらい並べそうな扉から中へと入る。

 玄関は上まで吹き抜けみたいになっており、高い。

 学校の3階ぐらいまでの高さが吹き抜けになっている。


 そしてリビング。

 全員がここに来ても空きがあるようにするため、ここを一番広く作った。


 次に各々の部屋を回る。

 一人一部屋といった時、とても喜んでいた。

 ……そこまで嬉しいものか?

 まあ他人と一緒の部屋なんていうのはコミュニケーションが取れない奴となると最悪だからな。

 そこも喜ぶ点に入っていることか。


 次は遊び場だ。

 ここが一番凝ったかもしれない。

 ビリヤードにダーツ、卓球にミニゴルフなど、様々な遊び道具が置いてある。

 それにちょっと再現が難しかったが、魔力で動くゲームなんかも作ってみた。

 これは実際に使ってみた感想を聞いてみて、どのように改造するのか決めるつもりだ。


 後は風呂。

 40人用の超デカイ風呂があったり、サウナ、外が見えないようにしてるけど、露天風呂もある。


 そして最後に庭だ。

 ここは鍛えられるようにトレーニング用具を置いたりだとか、ガーデニングの為の区画を設けたり、後重要なのは家の周りにある柵だ。

 これは魔鋼鉄の純度を落としたバージョンのものを使ってある。

 そうすると、呪いのような効果は無くなり、鉄よりも数万倍硬い鉄ができる。

 これを壊せるのはそれこそミサタやライオスレベルじゃないと無理。


 大体我が家の別荘の紹介はこれぐらいかな?

 詳しいことはまたおいおいに。


 ずっと俺がここにいるわけじゃないから、月一でお邪魔することにした。

 流石に別荘に籠るのもなぁ……。

 でも流石に王城に住みすぎるのはどうかと思っているところなんだよなぁ……。

 あそこの食事も美味しいんだけどなぁ……!


 そんなこんなで迷った結果、月一でどうですか?という意見が出てきたので俺が採用した。

 それだったら全然問題ないだろう。

 ていうか他のメンツにも誘ってここに来るのもいいかもしれないな。


「それじゃあ何かあったらここに連絡してくれ」


「……これは……一体何ですか?アニキ?」


「それは携帯電話と言って……ここに書いてある番号があるだろ?そこをここ押したら俺にかかるから、何か用があったらかけてくれ」


「分かりました!!」


 野郎どものリーダー格の男が携帯をまるで宝物のように大事に扱っていた。

 そしてそれを羨ましそうに見る他の野郎ども。

 ……これは大量生産も視野に入れないとダメなのかな……?


「お前ら、仲良くやれよ!」


「「「「「行ってらっしゃいませ!!アニキ!!」」」」」


 俺は大勢の野郎どもに見送られて、タルサ王国へと戻った。

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