35話 猛吹雪とインフェルノ

 天谷と奏音は国に結果を報告しなければならないからと、一度帰宅しなければならないそうだ。

 功績は俺と協力してやったと言っていいと言ったが、あの国の王は二人でやったと言わないと認めないらしい。

 それを話してくれたから俺は手柄は全てそっちに譲ることにした。

 俺は手柄のためにダンジョンに潜ってるわけじゃないからな。


「ご主人様、これからどうするの?」


「どうするって何がだ?」


 俺とエルはテントの中で、お互い横になりながら今後の話をする。


「このダンジョンをクリアしてからだよ。このペースだったら絶対一年以内にはここをクリア出来るよね?」


「そうだな。……その時に決めようと思ってる。今決めて、もし一年以内にクリア出来なかったら恥ずかしいしな」


「わかった……」


「じゃあおやすみ」


「おやすみ」


 今は先のことなんで考えてる暇はない。

 とりあえずはダンジョン攻略!

 それを目標に頑張っていくつもりだ。

 まあ、それ以外は考えていないんだけどな。強くなって帰ってくると行った以上、今よりも数段階強くならないと楓たちに顔向けできないからな。

 再度そう決意した俺は、とりあえず今は寝るのだった。


 そして翌朝。

 久しぶりにスッキリ起きれた俺はエルが起きるまで少し素振りをしていた。

 使うのはトルリオンじゃなくて、普通のドロップした剣を使っていた。

 ……トルリオンだったらテント自体が吹っ飛ぶかもしれないからな。

 振るごとに、爆風が発生するんだから。

 ……ホント、俺ってどんだけ馬鹿力になってんだよ。昔は引きこもりだったのに。引きこもりとは考えられないよな。


「あ、ご主人様。早いね」


 素振りをしていると、パジャマ姿のエルがテントから出てきた。

 このパジャマはエルを買った時、服屋で買ったもののうちの一つだ。

 ずっとワンピースだったらシワになりそうだからな。


「まあな。今日は早く起きることができた」


「いつもなら遅いのに」


「それは言わないでくれ……」


 俺は朝に弱いんだよ。

 日本にいた時だって母さんに起こしてもらってたからな。

 まあ、その時は3時ぐらいまでゲームしてたからなんだけどな。


「じゃあちゃっちゃとご飯作っちゃうから、ご主人様は何かしといて」


「ああ、素振りでもしとくわ」


 今は特にやることないしな。

 そして俺は素振りに戻る。

 ……今のところ曲芸のような戦い方しかしてないからもうちょっと型とか意識したほうがいいのかな?

 でも、この戦い方でも十分やっていけてるから、これを変えろって言われるほうが難しいかも。

 まあ完全に我流だから他の人に習うことも視野に入れといていいかもしれないな。


「ご主人様ー、ご飯できたよ!」


 相変わらずご飯作るの早いな。

 一体何分で出来るんだろう?

 しかも美味いし。


「「いただきます」」


 今日はパンにミルクと言った普通の洋風の朝ご飯だっだ。

 こんな朝ご飯も久しぶりなんだけどな。

 俺はすぐさま食べ終わると再び鍛錬に戻った。

 少しでも戦い方を増やしておくほうが、後々必要になる戦法が出てくるかもしれないからな。


 1時間ほどいろんなやり方を試していると、天谷たちがきた。


「珍しいね。透がこの時間帯に起きてて、さらに鍛錬までしているなんて」


「失礼な。俺だってちゃんと鍛錬する」


「……起きているの方は否定しないんだね」


 そりゃあな。


「俺が朝弱いの知ってるだろ」


「そうだね。それよりもう準備出来てる感じ?」


「エルに聞いてみないと分からん。エル、どうだ?」


「いいよ!」


 エルの方を見ると、テントも片付け終わり、水色のワンピースも着ていた状況だった。


「大丈夫そうだな。じゃあその前に、〈炎魔法〉ファイアバリア、ファイアバリア」


 と俺は二回唱え、4人の体の方と、服の方へと魔法を付与する。

 これで本当に準備完了だな。

 そして俺たちは次の階層を目指すのだった。


 俺たちは猛吹雪の前にいた。


「これから吹雪だと……気分が滅入るね」


「仕方ないだろ!進まなきゃ話にならないんだから!」


「そうは言っても……」


 ……まあ分からんでもない。

 でも、俺たちには魔法という神秘の力がある!きっと守ってくれる……はずだ!

 そして俺は扉を開ける。

 そこは昨日と同じように吹雪が吹き荒れている状態だった。


「「「……」」」


 この光景を見たことがない3人は余りのことに言葉を発せずにいた。


「ねえ、あの奥に見える少し黒いのが次の扉なのかな?」


「さあ、それは分からないが多分そうだろうな」


 ここからザッと1キロほどはありそうだな。しかもこの猛吹雪。いくらファイアバリアで寒気を守ってくれるからって、気が滅入るのも仕方ないかもしれない。


「仕方ないな、少し本気出すか(魔法面で)」


「……何やるつもりなの?」


「そりゃもちろん。ここら辺の雪を全て溶かして、扉があるのか確認するに決まってるだろ」


 そして俺はこの雪をどうするかを考えながら扉をくぐった。

 こういう時の検索ツールだと俺は思うの。


〈スキル検索開始……合致スキル1件。表示します〉


 そしてこの状況で雪を吹っ飛ばせる魔法が。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 <炎魔法 インフェルノ>


 自身の周りに急激な温度の炎を大量発生させ、辺りを地獄のような炎で包む。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 これだな。

 ていうか現状打開策はこれしかないだろう。


「〈炎魔法〉インフェルノ!!」


 俺はそう唱えると、俺の周りから黒い炎が溢れ出し、雪を溶かすどころか溶けた水を瞬時に蒸発させた。

 吹雪は以前吹き荒れているが、溜まっていた雪は全て溶かすことができた。

 奏音が言っていた通り、あの薄く見えていた黒い影は扉で間違いなかったな。

 魔物に関しては所々にドロップアイテムが落ちてたからインフェルノでやったのだろう。


「おい!走るぞ!」


 俺はそうエルたちに声をかけると、見ないっせいに走り出した。

 吹雪は止んでいないため、しばらくしたらまた積もるだろう。

 なんとか元の状態に戻る前に全員が渡り終えることができた。


「はあはあ……、やるんだったら最初に言ってよね」


「悪い悪い。でも上手くいっただろう」


「私たちがどっと疲れたことを除いたらね」


「……そうか」


 仕方ないな。次の階層では全力で運搬するか。

 俺の足だったら本気出したら1キロなんて5秒もかからないし。

 少し疲れるがこっちの方が早くいくだろう。


「じゃあ次行くか」


「ちょっと待って……」


「分かった」


 全力ダッシュは疲れたのだろう。

 しょうがない。5分ほど休憩するか。

 そして俺たちは階段で暫し休むのだった。


 そして75階層まで俺がなんとか頑張って運んだ。

 ……はっきり言おう。クソ疲れた!!

 俺これだけで10キロぐらいは少なくとも走ったと思う……。

 そして75階層のボス部屋だが……。


「グアアアアアアアッッ!!」


 体に氷を纏った氷のドラゴンだった。

 だけど70階層のボスとは比べものにならなほど強くなってる。


 とりあえず、焼けるか試してみるか。


「〈炎魔法〉インフェルノ!」


 黒い炎が溢れ、ドラゴンの体を焼いていく。

 だけど、これだけじゃ致命傷に至ることはなかった。

 焼けて氷の部分が剥がれたものの、体表の火傷は瞬時に回復されてしまった。


「上等っ!」


 これぐらい防がないと俺の相手にもならないな。

 俺はトルリオンとダーインスレイブを取り出し、連続で斬りかかっていく。

 ドラゴンは氷を纏うのが最大の防御だったらしく、俺の攻撃には付いていくことは出来なかった。

 そしてちょうど50連撃目。

 ドラゴンは耐えきれず、ようやく地面に体をつけその命を散らしていった。

 やっぱり階層が上がっていくほど強くなっていくな。

 今回のが一番硬かった……かも。

 もう結構斬ってきたからどれが硬いか感触を忘れてしまった。

 まあ、そんなことより無事75階層は攻略することができた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る