17話 大浴場

 腹一杯になった俺は自分の部屋に戻り、ベッドに寝転がっていた。


「あー、疲れた」


 今日はいつにも増していろんなことがあったな。学園の入学式やったり、戦闘訓練やったり。

 だいぶ汗かいたから風呂に入りたいな……。


「そういえばこの城には大浴場があるって聞いたことがあったような……」


 よし!早速聞いてくるか。

 部屋から出て城を知っている人を探した。

 あ、あそこに誰かいるな。執事服を着ているってことは執事の人なんだろう。


「あの、すみません……。ってシュデルトじゃねえか!」


「ん?ああ、トオルか。何の用だ?」


 こいつ、レオンがいなくなった途端に敬語で話すのやめたな。


「風呂に行きたいんだけど、どこにあるんだ?」


「部屋にあるだろ。お前の目は節穴か?」


「そっちの風呂じゃねえよ!大浴場の方だ!」


 確かに部屋にもあるけど!俺が入りたいのはそっちなんだよ!


「ああ、大浴場か。それなら案内してやる。付いて来い」


 ……こいつすっごい上から口調だな。俺一応勇者なんだけど。

 案内している時にメイドさん(ルーナではない)人に出会ったけど、その時の対応はちゃんとしていた。


「……お前ってなんで俺の2人だけの時には敬語使わないんだ?」


「それは、お前が嫌いだからな。公の場以外でお前に敬語を使うなど屈辱以外のなにものでもない」


「ひでぇな。まあ、俺もお前には敬語使いたくないけどな」


「お前は使え」


「なんでだよ!」


「ふっ、冗談だ。それより着いたぞ。ここが王城の大浴場だ」


 そこは二つの入り口に分かれており、青の暖簾がかかっているところに男、赤の暖簾がかかっているところに女と書かれていた。


「……だったっけな?まあ、いいや。じゃあ、ゆっくり入るんだぞ。道を忘れても俺は知らないからな」


「分かっとるわ!」


 シュデルトがさっきぶつぶつ喋っていたけど俺には聞き取れなかった。

 俺は男と書かれていた暖簾をくぐり、風呂へ向かった。



「あら、かけ間違えるわね」


 風呂担当のおばちゃんが暖簾を男女逆に掛け替えた。


「あら、あの方はルーナ王女殿下と勇者様ですね」


 おばちゃんが見たのは楓と笑いながら話しているルーナの姿だった。


「ごきげんよう。大浴場は使用してもよろしくて?」


「はい」


「なら、使わさせていただきます。お手伝いは要りませんので」


「かしこまりました」


 そう言って数分前透が入っていった大浴場に楓たちも入っていくのだった。


 風呂場についた俺は早速服を脱いで、タオルを腰に巻き、ガラガラっと風呂の扉を開けた。

 そこは広く、たくさんの種類がある風呂場だった。広さはこの一室だけでも一般家庭の家(庭も含めて)ぐらいあり、泡風呂、電気風呂、ジェットバスなど、さまざまな風呂がある。もちろん、サウナ付き。

 外にはこれまた広い露天風呂があり、街の景色を一望できるいい眺めだ。

 俺は体を洗うために洗い場にいた。

 相変わらずこの城は俺の一般感覚をぶち破る感じの壮大さだな。シャワーがデカイし、いろんな機能が付いていた。キリ、シャワー、ストレートなど。……って水やり機かよ!

 キリとストレートって誰が使うんだ?

 はっきり言おう。この世界には石鹸という概念は無い。もちろんシャンプーやボディーソープなども無い。

 だから入念にあらうしかないのだ。……これ、泥まみれとかなった時には無かったら不便だな。また今度製作を考えるとしよう。

 洗い終わった俺は、まず泡風呂に入るのだった。


「ふぅー」


 やっぱり大浴場で最初に入りたい風呂はこれだな。泡風呂が一番体があったまるわ。銭湯に行った時もいつもこれから入るようにしている。

 しっかし、いい湯加減だな。ざっと42度ぐらいってところだな。それなりに熱湯好きな俺にとってはちょうどいい温度だな。


「ん?」


 浸かっていると、脱衣所の方から何やら声がしてきた。これからここに入る人がいるんだろう。

 泡風呂も堪能したことだし、他の風呂も入ってみるか。

 俺がそう思い、立った瞬間にガラガラっと扉が開いて人が入ってきた。


「え?」


「「え?」」


 あれ?俺の見間違いかな?すぐそこにタオルを手に取っている裸の楓のルーナがいるんだが……。


「「きゃあああああ!!!!」」


 楓とルーナはタオルを思いっきり隠して、側にあった桶などを投げまくった。

 放心状態にあった俺の体は身動きが聞かず、そのまま顔面に桶が激突して撃沈するのだった。

 ……ああ、やべえ。このままだったら俺……死…ぬ……。

 意識が飛び、俺は風呂に溺れたままになるのだった。



「う……」


 あれ?俺は確か……。

 俺はそう思い記憶を辿る。

 そうだった。俺はあの時桶にぶつかって意識が……。


「あっ!」


 そうだった!2人に謝らないと!

 ていうか今ってどういう状態?

 ふと自分の体を見てみるとバスタオルが下半身にかけられていて、それ以外は服を着ていなかった。

 俺は慌てて服を着て、外に出た。


「遅い!」


 出た途端に大声で遅い!と言われたからビクッとなった。


「トオル起こしてからだいぶ待ったんだからね」


「それは……その……すまん」


「どっちのことで?」


「……どっちもだ。だが、俺にも言い訳させてほしい!ここは確か男風呂だったはずなんだが?」


「え?女風呂だよ?ほら、後ろ見てみ」


 そう言われて見てみると、俺が入った時とは真逆に暖簾がかかっていた。

 おい!俺が来る時はちゃんと男湯だったぞ!


「……マジで?」


「マジで。どう責任とってくれるのかな?」


 やばい!後ろに修羅が見える!


「すいませんでした!!」


 これぞ謝罪の究極奥義Japanese土下座である。


「結婚前の乙女の裸を見るなんて……、ちゃんと責任とってよね」


「そうだそうだ!」


 ルーナに賛同して楓も俺に追い打ちをかけてくる。


「俺に出来ることならばなんでもする。だから許してほしい。この通りだ」


 本日2度目のJapanese土下座をした。


「んー?どうしよっかな?ねえ、カエデちゃん。ちょっと話さない?」


「いいけど……、透はいいの?」


「ガールズトークだから。トオルはそこで待っててね」


「……わかった」


 そしてルーナは楓を連れてどこかへ行ってしまった。

 ……ガールズトークって何を話すんだろうか?多分俺のことについて話すんだと思うけど……。

 俺に出来ることならばなんでもするとは言ったけど、なるべくキツイのはやめてほしいと切に願う。

 そんなことを考えているうちに楓とルーナはは戻ってきた。


「……なんの話をしてたんだ?」


「トオルのことだよ。……ねぇトオル。私たちと付き合ってよ」


 ………………は?

 ルーナはとんでもない爆弾を落としてきた。

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