全スキル保持者の自由気ままな生活

藤堂獅輝

プロローグ 日常から非日常へ

 俺は金山透。今年の春から高校生になり、今は6月。言ったらピッチピチの男子高校生だ。

 そんな俺は現在所属している美術部の午前の部活から幼馴染である楓と一緒に帰っていた。

 本当なら帰宅部ですぐに帰ってゲーム三昧の予定だったのだが、現部長に土下座で頼まれて仕方なく週1の部活に参加している。

 部長がそこまでしたのは俺の絵はなんだかとてもうまいらしい。俺自身は全然そうは思わないんだが、試しに出してみた絵が何故が受賞されたので、世間一般では俺は上手いという部類に入るのだろう。

 おっと、俺の以外なエピソードを語っていたらつい楓のことを言い忘れてたぜ!

 楓は俺と幼稚園時代からの幼馴染だ。

 楓を一言で表すと超絶万能美少女。

 全てのことを一度に覚えることができ、テストではいつも満点。小学校から弓道を初め大会には出ていないものの、的にはしっかり構えられるるのならば100発100中と達人もしくはそれ以上のレベルである。さらにノルウェー人の父親とのハーフともあって髪が銀髪の超絶美少女と化していた。まさに万能の異名を持ってもおかしくないほど楓は才能の塊で埋め尽くされているのだ。

 まあ、そんな感じじゃモテない訳がない。安定のごとく告白される日々。ついこの間1000人切りを達成したそうだ。

 え?こんな超絶万能美少女と幼馴染になって嬉しい?冗談でも言っていいことと悪いことがあるぞ。なんたって1000人切りの一番最初の犠牲者は俺なんだからな!幼稚園の頃に一目惚れして勇気を出して告白したらなんて返ってきたと思う?


「気持ち悪い」


 だぞ!そんなこと言われた俺の幼い心はズタズタに引き裂かれ、結果3日寝込むはめになった。幼馴染でよく恋人になったとか言うけどそんなの嘘。てな訳で楓とは友達として一緒にいるけど、恋愛対象では断じてない!

 非リアの皆さん!俺は無実です!彼女いない歴=年齢の俺は皆さんを裏切ったりしませんよ!


「何か考えてたの?」


 隣から楓の声が聞こえてきた。流石に本人の前であなたにフラれた時のことを考えていました、とか言ったら気まずくなるので俺はスルーする。


「いや特に考えていなかったけど?」


「いや、絶対に考えてた!」


「 ……まあ強いて言えば楓が俺と基本趣味があったことを考えていたな」


「やっぱり!もう、嘘つかないでよ」


「特に考えてなかったのも事実だから嘘をついているわけじゃない」


「もう、屁理屈はいいから!」


 おっと、姫の機嫌を損ねたらしい。こういう時は基本俺たちの趣味の話をしたら水に流してくれる。


「なあ楓、結局俺が推したあのアニメは見たのか?」


「うん、見たよ。すっごい良かった!最終回がすっごい泣けたね」


「だろ!あのシーンは俺の感動したランキングトップ5には入っている名作だからな!」


 そう。俺たちの趣味とは言わずもがなアニメ鑑賞である。世間一般で言うところのアニオタだな、俺たちは。


 ボロボロ(心が)の俺が楓とやり直せたのも某国民的アニメの話で盛り上がったからのが大きな要因だな。

 このアニメから始まり、今では様々な自分が気に入ったものを探しては勧めるなど寝込んだ時期からは考えられないほど俺たちは仲良くなっている……はず!


「そういえば、もうすぐ期末テストだけど。勉強してるは大丈夫?」


「大丈夫だったら苦労はしない!っていうか楓はなんでそんな頭良いのにこの学校にしたんだ?」


「それ、前にも聞いたよね。家が近いからだよ」


「そういえばそうだったな」


「もう……」


 いや待て!何故そんなに呆れられる?俺は確認のために聞いただけなのに!


「まあ、透がバカなのは知ってるからもういいや。それより、勝負しない?」


「おい、何さらっと罵倒してるんだよ。まあいいや。で、内容は?」


「テストの順位」


「おい待て!それ、俺が受ける意味は!?」


「透が勝ったら何でも私に命令していいよ」


 くっ、それは魅力的だ。なんたって楓の家は金持ちだからな。

 父親はとある有名企業会社の社長で母親はとある病院の凄腕医師ということで、ここで楓に勝つと一生養ってもらえるだろう。


「その勝負乗った!」


「透が負けたら私が命令するけどね」


「えっ……」


「ああ、テストが楽しみだなー」

 楓は俺から逃げるように走っていった。

 確かに俺が最後まで確認を怠ったのが悪いけど、けど!


「ちょっと待てー!!!」


「いやーだよ!」


 俺は自分の失態を取り消してもらう交渉をするために楓へ向けて走った。


 俺と楓はそれなりにこの日常を楽しんでいた。

 だが不運なことに俺たちは自分たちの足元が光っていることに気づくことができなかった。それに気づいていればまだこの日常が続いていたかもしれない。だが、もう間に合わない。

 次の瞬間、光の原因となる魔法陣のようなものが発動し、俺と楓はその中に落ちていくのだった。

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