第506話
異世界9ヵ月と11日目。
遊園地をオープンした翌日から、様子を見ていた商会や個人らが、挙って周辺の土地の確保に名乗りを上げだした。
まあ、そんな面倒な折衝はオスカーさんや、ヨーコさん達に任せ、海渡は拡張したエリアの開発に注力する。
先ずは、敷地を囲む塀を延長して開発予定地を確保した。
それから地下工房に籠り、ジャングルクルーズ的な物の構想を練り始める。
そもそもだが、元の世界でジャングルクルーズ的な物が成立したのは、元の世界の『非日常』であったからではないのか? と考えるに至った。
この世界では、ジャングルと言うか、森や林、猛獣も魔物も『日常』の1つである。
となると、わざわざお金を払ってまで体験する必要が無いと言う事である。
「うーん、困ったな。
だとすると、ジャングルとかはあまりにも意味が無いか。」
と1人頭を抱えて考え込む海渡。
暫く考えていたが、アイディアが纏まらず、取り合えず、別の物から取り掛かるべく、頭を切り替えたのだった。
まずはゴーカートを作成する事にした。
これは、既に前々から温めて居た物なので、方針は決まっている。
元の世界のゴーカートを思い出しつつ、フレームを鋼材のパイプで作成し、1人乗り用と2人乗り用の2種類の鋼管フレームを作成し、タイヤとホイール類、アクスルシャフトに、ハブ、ハンドル周りを作成する。
その他の細かいパーツを作り、組み上げて完成。
「簡素な物だけに、自動車以上に簡単だったな。
さて、試乗してみるか。」
と1人乗り用のゴーカートに乗り込み、軽くアクセルと踏むと、
「キキー!」
と凄まじいスキール音をたてて、猛ダッシュするゴーカート。
海渡は、真っ青になりつつ、慌ててアクセルOFFとブレーキを踏む。
暴走カートは、地下工房の壁の1m手前で止まったのだった。
「ヤッベーー! 危うく激突する所だったな。」
と額の冷や汗を、手の甲で拭きながら呟く。
小径タイヤになっている事と、車重の軽さや、魔動モーターの馬力とか、諸々が原因と判断し、魔動モーターのコントロールプログラムの係数を変更し、テストを繰り返す事にした。
係数を大幅に低速寄りに変更すると、全開で一般人の走る速度ぐらいになったので、そこから徐々に係数を高速寄りに変更していく。
7回程係数を変更し、最高速はザックリ時速40kmぐらいで概ね良好なのを確認した。
後は、実際のコースとのマッチングを見るてから、微調整を入れる事にする。
しかし、どんなコースであっても、事故は避けたいので、安全機構を取り入れる事にする。
近接センサーや、コースの座標とベクトルで、光シールドのショック吸収バリアが発動する様にしてみた。
更に、コントロールセンターからの遠隔操作で、緊急停止が可能な仕掛けも追加した。
2人乗り用のゴーカートも同様にセッティングし、アイテムボックスに収納して、コース予定地へとゲートで移動する。
サーキット風のコースにするか、ワインディング風にするか、市街地風にするか、悩んだ結果、1周約3kmぐらいのワインディングコースとした。
コース幅は5mで中低速のコーナーやロングストレートを立体交差等を上手く配置し、滑走路と同じ様な水捌けと、グリップの良い路面を作って行く。
一応、各コーナーのエスケー部ゾーンは多めに取っておいたでの、死亡事故は起きないだろう・・・。
コースの作成が終わり、試乗を始める。
地下工房の床と違って、コースの路面では、シッカリグリップし、安全に楽しく運転出来る事を確認した。
コースも、カートも特に拙い箇所は見つからなかった。
最後にピットレーンと、コントロールタワー、入場ゲート作成して完了。
更にちょっと思い付き、ダメなら破棄するつもりで、スリックカートのコースを作ってみた。
こちらは、ショートコースで1周400m程。
タイトなコーナーとストレートを繋いだ、ミニ筑波サーキットの様なレイアウトにしてみた。
ツルツルの路面にし、更に光シールドでコーティングして、摩擦係数を微調節した。
ゴーカートで走ってみると、
「ウヒョー! これは楽しいな!!」
と大興奮する海渡。
ドリフトの切り返しが実に楽しい。
1周は短いが、寧ろ、こっちのコースの方が人気出るんじゃないか?
まあ、1回で5周ぐらいに設定すれば、良いか・・・模擬レース形式にするのも良いかもな。
等と運用面を考えつつ、20周程奇声を上げながらドリフトを楽しむ海渡。
勿論、こちらのコースもこのまま採用決定。
こちらもピットレーンと、コントロールタワー、入場ゲートを作成して完了。
地下工房に戻り、ゴーカートの生産ラインを本稼働されたのだった。
スリックカートで久々に興奮した海渡は、そのテンションのまま、本格的なレーシングカートも作る事にした。
せっかくここまでの下地を作ったのだから、少しは自分の遊びも追加して良いよね?と。
基本の鋼管フレームは変わらないのだが、フレームの剛性をセッティング出来る様に、サブフレームを追加したり、物理的なディスクブレーキを新たに作った。
また、アクセルのレスポンスの基本をゴーカートより格段に上げてダイヤルでセッティング可能にし、更にエンジンブレーキに代わる物として、パーシャル時の制動力を上げ、こちらもダイヤルでセッティング可能にした。
タイヤは、耐摩耗性よりもグリップ重視な物を、スリックと溝有りのレインと、2種類新たに制作した。
また、これらのセッティングや分解整備に必要な、工具も生産ラインを作り、生産販売出来る様にした。
あとは、本格的なカートコースを作るだけである。
当初、ワンダーランド内に併設も考えたのだが、カテゴリーが違うかと思い直し、別途北門側に作成する事とした。
不人気と言う訳ではないが、北門側は特に特色が無いので、ここらで一発!と言う目論みもある。
ヨーコさんに念の為確認したが、拡張したエリアに関しては、まだ販売を開始していないらしい。
「ふふふ、カイト様の事ですから、そんな事もあろうかとw」
と和やかに笑っていた。
早速北門側に飛び、現地を上空から視察し、鈴鹿の様な自動車用の本格コースとカートコースの2つを作成する事にした。
十分な敷地を塀で囲んで、早速自動車用の鈴鹿サーキットをコピー・・・いやオマージュしたコースをハイグリップ舗装で作成して行く。
傾斜角度等も完コピしたので、もし鈴鹿を走った事のある転生者が居ると、直ぐにバレるだろうなw と一人でクスクス笑う海渡。
カートコースは馴染みが無いので、先程と同じ筑波サーキットのを更にテクニカルな感じにアレンジした物にした。
更に両方のコースにピットレーンやピット、パドック、コントロールタワー、観客席、駐車場等を追加で一気に作り上げて行く。
ようやくこれらの作業が完了し、「さて試乗だ!」と意気込んだが、時刻は夕方の6時を過ぎており、あともうちょっとで日が沈む頃合いだった。
当然であるが、まだここにはナイター設備が無いので、日が沈むと辺りは真っ暗である。
「うむ・・・無理に今日走るのは厳しいかな。」
と冷静になり、翌日に持ち越す事にしたのだった。
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