第500話

 その後、海渡達はドラゴンら全員で、夕食を兼ねた宴会に突入したのだが、如何せん雑な性格のドラゴン達が、自身満々に並べた料理は、海渡がビックリする程に創意工夫も無く、テーブル(海渡が提供した)の上に並べられた、ただ焼かれたて塩が塗してある肉塊を出されて、頭を抱えてしまっていた。


「こ、これは流石にこれは・・・酷すぎる。ちょっと調教が必要だな。」

と海渡が呟くと、食に五月蠅いフェリンシア、ステファニーさん、ケモ耳ズらも激しく同意する。


「流石に、これはあかんって・・・。こんなん料理ちゃうで?」

と真っ黒に焦げた表面に塗された塩だらけの肉塊と、中は全く火が通ってない超レアな物体を目の前にして、嘆くステファニーさん。


 それを聞いた調理担当のドラゴン達が、ガーーンって表情で膝付いていた。


「判ったよ・・・。じゃあ、ちゃんとした料理が出来る様に、調理スキル、生やしてやるから。

 まずは、厨房を作るか・・・。」

と海渡が宣言して、大厨房と大食堂を作成し、キッチンカウンターやシンク、調理器具類を設置して・・・完成させた。


「おお!これは凄いな!!

 なるほど、土魔法とトレントの柱を使った建物じゃな?

 ふむふむ・・・そう言う発想はなかったのぅ~」

とレッドさんが感心してウンウンと頷いている。



 海渡は、調理担当のドラゴンの他にも希望者を募り、調理スキル講習会を実施する事にしたのだが・・・


「いやぁ~、驚いたねw ほぼ全員じゃん!」

と唸ってしまったのだった。

 大厨房を作ったが、流石に100名ぐらいを目処に作っているので、2回に分ける事にして、まずは最初の100名をドーピングして、講習を開始した。


 が!ですよ、これが本当に大変で、まず第一に包丁が使えない・・・と言うか包丁の存在すら知らない。

 じゃあ、普段は何で切ってたの?と聞いてみると、


「え?普通に爪で切ってましたが?」

と驚きの回答が。


 と言う事で、残りの100名にもドーピングを行って、海渡達全員で包丁の使い方から教える事に。

 只管ジャガイモの皮を剥かせる事、1時間・・・やっと包丁が使える様になり、一旦休憩を挟んだ。


「いやぁ~、思った以上に大事だな。」

と嘆く海渡。



 そして、講習会を再開する。

 何故、食材を切るのか、何故大きさを揃えるのか、何故火を通したり、温度調節をするのか等々、基本の基本から教え途中交代交代で、フライパンを使ったり、鍋を使ったりと悪戦苦闘の3時間・・・


「やっと、これで全員に調理スキルが生えたな・・・。まさか、こんなに時間が掛かるとは思いもしなかった。」

とグッタリした表情の海渡達。


 それとは真逆に大喜びしているドラゴン衆。


「いや、ホントに驚きじゃ! なるほどのぅ~、調理とは正に奥が深いのぉ~」

とレッドさんが、感心していた。


 日もトップリ暮れて、時刻は既に午後7時半を過ぎていた。



 一休みした後、海渡達は、調理講習会の続きとばかりに、ドラゴンにレクチャーしながら、シチューやステーキ、サラダ、パン等をドンドンと作り出す。


 ちなみにだが、ドラゴンの集落には、殆どスパイス類や野菜が存在し無かった。

 あるのは塩ぐらい。

 だから、味付けは塩しかなくて、タップリの塩=最高の味付け と言う認識だったらしい。

 そう言う状況だった事もあって、海渡達が調理した料理を食べて、塩気以外の味に驚き、大喜びするドラゴン達。


 小麦粉やパン粉を使って、サクッと挙げたオークカツと、トンカツソースに驚き、カレーライスのスパイシーな味に狂喜乱舞するドラゴン達。

 海渡達は手分けして、パンの作成チームや、オークカツチーム、シチューチーム、カレーチーム等に別れて講習会の続きをする。


 スキルを生やすまでは、非常に時間が掛かったのだが、流石はドラゴンと言うか、全員が非常に頭が良く、一旦納得すると、スポンジの様にレシピや味を吸収して行った。


 和食、中華、イタリアン、フレンチ等、色々な料理を抜粋して出すと、どの料理も食べる度に大騒ぎするので、ちょっと海渡達も面白くなって来て、調子に乗って、色んな料理を披露して行き、時刻は夜の10時になった。


「ふぅ~・・・流石に作り続け過ぎたな。今日はここまでにしよう。」

と宣言し、別荘型の宿舎を設置して、就寝するのだった。



 こうして、海渡達は1日目を終えたが、この調理講習会は、更に3日間続いた・・・。

 その間にも、海渡達の宿舎や大厨房と大食堂の建物自体に興味を持ったドラゴン達には、建て方を教えたりして、ドラゴン達の生活に、多大な変化をもたらした。

 元々道具を使って何かを作ると言う概念が、ほぼ無かったドラゴン達だったが、包丁や、調理器具、リバーシ等のゲーム類等、色々な道具が自分達の生活に変化を与えてくれる事を知り、多大な興味を持ったらしい。

 その結果、ドラゴン達の一部は、海渡の日本へと留学・・・いや遊学に来る事にしたらしい。


「いや、来るのは構わないけど、マジで暴れるのは禁止だからな?」

と海渡が釘を刺したが、


「うむ、任せるのじゃ! ガハハハ!!」

と豪快に笑うレッド・ドラゴンをはじめとした遊学希望者達に、一抹の不安を感じる海渡であった。



 そして、6日後の朝、海渡達は、ドラゴンの集落土産代わりのドラゴンの鱗等の素材と共に、ドラゴンの遊学希望者を連れて、ゲートで宮殿に戻る事になったのだった。






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