第482話
「ふう・・・寄り道が長かったな。」
と海渡がため息交じりに言うと、
「でも、取りあえず店長の超ファインプレーで登録されてたのには、驚いたっすねw
もし、気付かなかったら色々大変だったっすよ?」
とラルク少年が慰めてくれた。
じゃあ、急いで商業ギルドへ! って思ったら、時刻は12時20分。
ギルドも昼休みだろうから、その辺で適当に食う事にしたのだった。
一応、女神様の神託によって作られた国と言う事で、食べ物に関しては過大な期待をしていたのだが、普通だった・・・。
食べ終わって店を出た後、
「なあ、ラルク、美味しい事は美味しかったけど、普通だったな。」
「うーん。確かに普通でしたね。美味しい事は美味しかったんですけどね。」
と微妙な反応の2人だった。
そして、やっと午後1時丁度に商業ギルドへとやって来た。
「では、気を取り直して、行ってみようか!」
と意気揚々と中へ入っていく。
「いらっしゃいませ。商業ギルドへようこそ! って坊や達、おつかいかな?」
とお揃いの黒のコートに黒のズボンを着ている少年2人に声を掛ける受付嬢のおねーさん。
海渡は苦笑しながらも、
「ああ、お遣いじゃ無く、会員ですよ。これ、ギルドカードね。
ここの王都に敷地・・・まあ上物があっても構わないんだけど、広めの所があればなぁ欲しいと思ってね。」
と海渡がギルドカードを見せながら、カウンターへ近付いて行く。
「えぇ? Sランクのカード!? マジで?」
と驚きで、口調が素に戻っている受付嬢のおねーさん。
「うん、マジで。」
と海渡。
「あ、これは失礼致しました、カイト・サエジマ様ですね。
どうぞ、こちらの打ち合わせ室へ。」
と別室へ案内された。
そして、分厚いファイルを片手にキリリと戻って来た。
「えっと、ご予算はお幾らぐらいとか、広さはどれくらいか仰って頂ければ、条件に合う所をピックアップ致しますが?」
と意外にアッサリ復旧して、営業スマイルモードになるおねーさん。
流石は商業ギルドだなw
「広さは、そうだねぇ。最低120m×100mぐらいあれば嬉しいんだけどね。もっと広くてもOKだし。出来ればメインストリート沿いで。
まあもし、近辺で合計それぐらいになる土地を複数所有出来るなら分散しても良いんだけどどう?」
と海渡が言うと、
「まぁ、それはかなりの広さになりますね・・・確か該当する箇所が何箇所か有ったと・・・。
あ、ありました。これとこれとこれですね。」
と3箇所を紙を見せてくれた。
「なるほど、流石は商業ギルドですね。冒険者ギルドでは該当する箇所が無いとの事だったんですがw」
と感心する海渡。
今度から、冒険者ギルドだけでなく、もっと商業ギルドも有効活用せねばな。
トータル面積で一番大きい物件は、表面は5軒分の店舗と裏が別の倉庫になっている複合物件だった。
どうやら、とある計画で立ち退き?地上げ?があったらしいのだが、その計画主が破産し、その一帯をギルドが接収したらしい。
「あのぉ・・・もしかして、験担ぎとか、そう言うのを気にされますか?」
と少し申し訳無さそうに聞いて来たので、
「いえ、特にはw」
と海渡が言うと、ちょっとホッとした表情になって、
「実は、そんな縁起の悪い所は要らん!って言う商人の方が結構いらっしゃいましてね。」
と言っていた。
「まあ、俺としては、寧ろ俺の為に女神様が用意してくれた場所!って感じですがねw」
と笑いながら言うと、おねーさんも笑ってた。
トータル金額を聞くと、黒金貨1枚と白金貨5枚だそうで。
「じゃあ、これ代金ですね。」
とサクッと渡すと、
「え?現地を確認されないんですか?」
と驚いていた。
海渡は端末を出して、そのエリアのマップを表示し、
「このエリアですよね?」
とおねーさんに確認を取る。
あれ? おねーさんが口を開けて、ビックリしている。
「これは!? 凄いですね!!何ですか、この詳細な地図は!!」
と一瞬間を置いて、身を乗り出してきた。
「ああ、これは当方が発売している、情報タブレットって言う魔道具のマスター管理者版です。
これをポチッと押すと・・・ほら、上空から見た実際の映像に代わるんですよ。
ふむふむ・・・結構荒れた感じですね。まあ問題ないですね。」
と海渡がドローンの航空写真を拡大しながら、ふんふんと頷いていた。
「凄いです。これは今回の敷地の店舗で発売されるんですか?」
と興味津々のおねーさん。
「ええ、これだけでなく、遠く離れた人とリアルタイムに話が出来る通信機とかもありますよ。」
と通信機を取り出して見せると、これまた大興奮。
「あとは、そうですね・・・スイーツのお店や、美肌効果もある温泉とかも作る予定です。」
と言うと、
「び、美肌効果!! それは素晴らしいですね! でそのスイーツって言うのはどんな物でしょうか?」
海渡は、質問の答えに、1つプリンとスプーンを出してやり、目の前に置いた。
「スイーツと言うのは、お菓子やデザートの様な物の総称ですね。よければ、お一つどうぞ!」
と言うと、
「え?何処から出したんですか? あ、冷たい!! きゃ!何これ超美味いんですけど!!!」
と目がハートマークになって喋り口調が素に戻るおねーさん。
ついでに、カフェオレと、ホットケーキを出して、更にその上にメイプルシロップを掛けると、もうその甘い匂いに堪らないらしく、
「こ、これも食べて良いんですか?」
と食い気味に聞いて来た。
海渡が頷くと、
「うわっ!何これーーー! 激ウマ!! マジで、超ヤバいんですけどーーー!」
と完全にキャラ崩壊中のおねーさん。
海渡はちょっと面白くなって、ホットケーキを頬張り終わった頃合いを見て、次にチョコレートケーキと、紅茶を出した。
ガバッと目を見開き、海渡の方を見たので、ウンと頷くと、添えられたフォークとお皿を手に取り、切り分けながら、パクリと一口。
「うっほーー! ヤバいヤバい、蕩けるーーー!」
と絶賛w
次にシュークリーム、その次はチョコレートパフェと、次々と波状攻撃を仕掛け、悪い笑みを浮かべる海渡。
隣では、ラルク少年が、苦笑いしてる。
おねーさんは、
「これヤバす!」
「マジすか!」
「キャハ!うみょうーーー!」
とドンドンと壊れていった。
そして、8種類を食べ終わった頃に、
「も、もう、勘弁してーーー、壊れちゃうーー」
と切なげな叫び声を上げていたw
「そうですか? 残念ですね・・・これは割と私の好物だったんですが・・・」
とベリータルトを取り出してみると、また手を伸ばしていた。
ウマウマと食べ終わったおねーさんが、
「も、もう、本当に勘弁して下さい。」
と涙ながらに訴えて来たので、
「まあ、こう言うのをスイーツと呼んでます。まだ他にも色々な種類があるんですよね。
オープンしたら、是非ご来店をw」
とドヤ顔で締め括った。
暫く、余韻とお腹の満腹感でボーッとしてたおねーさんが、復活し、
「いや、カイト様のお店、本当に素晴らしいですね。オープンが待ち遠しいです。」
とキリリとして言っていた。
うん、だけで、口の周りには、クリームやら、チョコやら一杯着いてるからねw
面白いから黙っておくけどw
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