第465話

 やっと落ち着いた少女を残し、海渡が馬車から降りると、フェリンシアとステファニーさんが、馬の前に、バケツにハチミツ水を入れたバケツを置いて、片手にニンジンを持って、食べさせて餌付け中。もう片手には、自分用の肉串を持って食べてた。



 海渡は、従者のデクスタさんに、

「もう大丈夫です。お待たせしました。

 で、この馬車どうしますか? 車軸・・・修理しましょうか? それとも、俺達の方に乗って行きますか?」

と聞くと、1名は馬2頭を引き連れて、3名(少女+従者2名)は自動車に同乗させて欲しいとお願いされたのだった。

 ちなみに、壊れた馬車は置いて行くらしい。


「え?勿体ないですね。 車軸だけ修理すれば良いのに。

 じゃあ、俺の方で運びましょうか?」

と打診してみたら、


「え? 運ぶってどうやって?」

と聞かれ、目の前に2列シート型の自動車を出して見せると、驚きの声を上げるデクスタさん達3名。


「アイテムボックスって言う収納系のスキル持ってるので、壊れた馬車は格納すれば、運べますよ。

 まあ、生きてる物は収納出来ないんですがね。」

と言うと、


「まさか、実在のスキルとは思いませんでした。お伽噺の作り話だとばかり・・・」

と更に驚いていた。


 結局、車3台に分乗する事となり、先頭に少女と従者を乗せた海渡の車、2台目にフェリンシアが運転する真っ赤な3列シート、3台目にミケの運転する3列シートが続く形。


 海渡は悪路を運転しながら、

「しかし、この道、本当に街道かよって言うぐらい、整備されてませんね。

 これじゃあ、車軸も折れますよね。」

と海渡が言うと、


「ええ、お恥ずかしい話です。まあ悪路であるのには理由があるのですが・・・。」

と口籠もるデクスタさん。


「まさか、敵が攻めて来た時に移動が困難とかが理由じゃないですよね?ww」

と冗談交じりで言うと、


「え?何故それを?」

と驚きの表情をするデクスタさん。


「マジか・・・。冗談で言っただけなんですが。

 それだと、逆に住民が避難する際も、逃げにくいですよね?

 更に、商業面でも交易が難しいから、発展しにくくなりませんか?

 まあ、空を飛べば関係無いですけどね。」

と言うと、真顔で、


「カイト様、本当に6歳なのでしょうか? なんて凄いお方なのでしょうか?」

と少女がグイグイ持ち上げてくる。


「ははは・・・いや、それぐらい、経済が判ってなくても、だれでも判りますよ?」

と言うと、従者達が悲しい顔をしていた。


 ああ、何となくここの王様の問題判った気がするな・・・。


「ところで、カイト様! カイト様ってSSランクの冒険者なんでってね? その若さで凄いですわ。

 やはり、戦闘となると魔法とかがメインなんでしょうか?」

と少女が聞いて来る。


「あー、相手によるかな。魔法が効かない耐魔法攻撃とか持ってる場合、魔法だけでって無理があるしから、そう言う場合は、剣と言うか、刀でやるし、まあどっちが好きかと言われると、刀かな。」

と答えると、


「えっと刀って何ですか? 剣とはまた違うんでしょうか?」

と聞いて来た。


「ええ、剣と刀は丸っきり形状も製造工程も違いがありますね。

 同じ斬るのでも、全然テクニックが違います。

 剣だとどうしても『叩き斬る』って感じになりますが、刀は全然違いますよ。『スパッと斬る』って感じなんですよね。

 引く様に斬るって言うのかな? うーん、説明はしづらいですがw」

と言いながら、自分でも判りづらい説明だなと苦笑するのであった。



「ところで、お嬢さんは、何で矢なんかを受ける事態になっちゃったんですか?」

と気になる事を聞いてみた。


 後ろの席の従者はお互いの顔を見て、目でどうする? と語っている感じ。

 すると、少女の方が、


「良いのよデクスタ。カイト様は命の恩人で、特別なお方ですわ。全てをお話致しましょう。

 その前に、お嬢さんではなく、私、ミルフィーと申しますの。親しい仲では、ミルって呼ばれてますの。

 カイト様には、是非ミルとお呼び頂ければ。」

と少女ミルフィーが頬を赤くしながら助手席でクネクネしている。


「あー、じゃあミルフィーさん。ミルフィーさんは、どう」

と言いかけてる途中で、食い気味に「ミルですわ!」と訂正させられる海渡。


「じゃあ、ミルさんはどうして、命というより、攫う事を前提にされた襲撃を受けたんでしょうか?

 車軸も細工された後がありましたし、どうもミルさんを命を奪うまではないが、蹴落としたい又は邪魔したい何者かが居る様に思えたのですが?」

と言うと、目に見えて後部席の従者が狼狽えている。


「まさか、車軸まで!? 実の妹なのに・・・」

と言い淀むデクスタさん。


「ふむ・・・家督争いですか・・・。実にくだらない。」

と思わず吐き捨てる様に海渡が呟く。


「もしかして、護衛ってもっと居たのではないですか? 誰かを王都まで伝令に出したりしましたか?」

と海渡が聞くと、デクスタさんが、青くなっている。


「ええ、ひ・・・お嬢様が怪我をされて、馬車も壊れ、馬も足をやられていたので、1名馬で救援を求めにやりました。

 しかし、何故それを?」

とデクスタさん。


「えっとですね、この先3kmぐらいの所に、こちらに向かっている15人ぐらいの悪意を持った連中が居るんですよ。

 どうやら、移動速度からして、馬に乗っている様です。」

と海渡がマップを確認しながら、伝えると、愕然としていた。

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