第445話

 城内は活気に溢れ、人も多く露天や屋台も多かったwww


「何と素敵な街だw 屋台が沢山あるよ?」

と海渡が興奮気味に叫ぶと、ウンウンと頷く食いしん坊万歳シスターズに対し、ジャクリーンさんは苦笑していた。


「ダーリン、そこ? そこが街の判断基準なの?www」

と突っ込んで来る。


 すると、海渡が取り出した伊達眼鏡をキリリと掛けて、

「何を言ってるのだジャクリーン君。私が何十年も掛けて研究した、『都市と屋台の相対性理論』によるとだな、屋台の数が多く人が多ければ多い程、美味しい物に溢れていると言う結果が出ているのだよ。」

とスカして言うと、全員が腹を抱えて大爆笑していた。言った海渡自身もw


「お、何やら楽しそうですなw」

と遅れて来たレイファルさんが声を掛けて来た。


「ああ、どうもww お待ちしておりました。」

と海渡。



 海渡達は、レイファルさんの案内で現在自動車にて移動中である。

「カイト様、どうか一度店まで乗せて頂けませんでしょうか? この通りお願い致します。」

と土下座せんばかりの勢いに、慌てて止めて自動車を取り出したのだった。


 と言う訳で、現在助手席には、上機嫌過ぎて、浮かびそうな状態のレイファルさんが、ホクホクしながら、道案内中である・・・と言っても、メインストリートをただ人を避けながら、真っ直ぐに走っているだけなのだがw


「レイファルさん、ここの王都って、店舗とかの敷地とかって余ってたり、売ってる所とかあるんでしょうかね?」

と道沿いにビッチリと並んだ店舗だけでなく、溢れんばかりの屋台の列を見て、海渡が聞いて見た。


「うーーん、ご覧の通り、余る所か、実際、足り無いぐらいなんですよね。なので、滅多に店舗や敷地が売りに出る事って無いんですよ。

 裏通りでさえも、状況は同じですね。完全に飽和しちゃってます。」

とレイファルさんが苦い顔で答える。


「なるほど、予想以上ですね。そうかぁ・・・残念だなぁ。どうせなら城壁を拡張しちゃえば良いのに。」

と海渡が言うと、


「計画は持ち上がっているんですが、現在この王都の直径が、12kmぐらいなんですよ。それを15kmとかにすると、工事費用と年月だけでもの凄い期間が掛かっちゃいますからね。

 費用対効果でプランが頓挫しちゃった感じです。」

とレイファルさんがため息と共に教えてくれた。


「ふむ・・・直径15kmだと実際に不必要な城壁の距離は、たったの45km強か。レイファルさん、王様に謁見出来ませんかね?

 城壁拡張のナイスなプランを提案出来ますが? なんなら、直径20kmでもOKですよ?」

と海渡が言うと、


「え!? どう言う事でしょうか? そのご様子だと、簡単に城壁拡張を行える と仰りたい感じに聞こえるんですが?」

と驚いて聞き返された。


「ええ、実はこう見えても私達、結構魔法も得意なんですよ。なので、何度も城壁工事をやってますね。総延長100kmぐらいの城壁なら高さ20m幅3mぐらいで、1日ぐらいあれば、行けるよな?」

と海渡がステファニーさんに聞くと、


「うん、レイアと1期生も動員すれば、もっと早いんちゃう?」

と笑いながら答えるステファニーさん。


「え??? 1日!? 本当ですか? ああ、疑う様で申し訳ないのですが、それが本当なら、是非とも王に謁見して、ご提案頂きたいですね!

 あ・・・でも費用的にはどうなんでしょうか?」

と顔を曇らせるレイファルさん。


「ふむ・・・直径20kmで黒金貨20枚・・・つまり直径1kmで黒金貨1枚でどうですかね? 強度的にはそうですね・・・大体ワイバーンの体当たりぐらいなら余裕で防げる程度って事で。」

と海渡が言うと、


「わ、わ、ワイバーン・・・・」

と声を詰まらせた。


「いや、まあ物の例えですよ。残念な事に、そうそうお目に掛かれない美味しい奴なんですよね・・・。」

と残念そうに海渡が言うと、ウンウンと3人も同調する。


「ダーリン、私一度で良いからドラゴンとやってみたいのよ。」

とジャクリーンさんがクネクネと身を捩る。


「そうだ! ドラゴンってこの大陸に居るの? 俺も見て見たいんだよね。」

と海渡が聞くと、


「え?ドラゴンですか? 伝説では、魔宮山脈に居るとされてますが、実際に見たと言う話は聞いた事がありませんね。」

とレイファルさん。


「え!マジですか!! 魔宮山脈って何処ですか?」

と早速タブレットを出す海渡。


「え?こ、これは? わぁ・・・なんて緻密な地図ですか! と言うか、これは魔道具なんですか!?」

ともの凄い食いつき様のレイファルさん。


「これは、私の所で発売している『情報タブレット』・・・通称タブレットと呼んでる物です。

 これにはこの世界全体の地図や本、書類や、計算機能等がありましてね。」

と説明すると、滅茶滅茶興奮していた。


「ああ、ナビ機能的には自動車に付いている物と同じになりますね。」

と補足して置いた。


 で、海渡がこの大陸の地図を見せると、レイファルさんは大陸の真ん中辺りを指さして、

「魔宮山脈はこの辺ですよ。」

と教えてくれた。


 なるほど、この真ん中に『絶界の森』の山脈版みたいな感じの山がある訳ねww


「よし、その内行ってみようww」


 ニヤリと笑う海渡にワクワクする他の3名。


 レイファルさんは呆れた様に海渡達を見つめつつ、

「ドラゴンが本当に居るかは判りませんからね? それよりも、どう致しましょうか? 王様への謁見ですが、本日とかって可能ですかね?」

と日程を聞いて来た。


「ええ、本日なら大丈夫ですよ。もし今日じゃ無い日となると、5日後とかじゃないと無理ですね。

 ちょっと他で野暮用があるのでww」

と海渡がニヤリと笑う。


 そう、今日が5月14日で、16日に開戦の予定だから、明日と明後日は完全にフリーにしておかないと拙いんだよね。

 ズレ込む事があれば、かなりタイトなスケジュールになってしまうし。



「判りました。早速王宮の方へ連絡致します。1時間程お待ち頂けますでしょうか?」


「うーん、じゃあせっかくだから1時間程街をブラついて来て良いですかね?

 ああ、これを渡しておきますよ。これは通信機と言って、離れた場所の特定の相手に連絡出来る魔道具です。~~(ry」

と使い方と海渡の番号を教えて、驚くレイファルさんを放置して街へと繰り出すのであった。




 ようやく魅惑の観光タイムですww

 サウザンド商会を出て、無作為に屋台や露店を虱潰しに蹂躙・・・いや、堪能して行く海渡達。

 買って食べて、美味しい物は爆買いww このループの連続である。


 しかし20店目を迎える前に、早くもジャクリーンさんが、ペースダウンの末に、リタイヤした。


「あらあらw もうですか? まだまだですねぇ・・・」

とフェリンシアが冗談交じりで、ダメ出しすると、


「いや、フェリンシアちゃん、普通に無理だってww」

とジャクリーンさんが苦笑いしていた。


 だよなぁ・・・この2人と同じペースって、一般人には無理だよなw

 四次元ポ○ットならぬ、四次元胃袋持ってないとねww


「確かになぁww」

と海渡もボソッと呟く。



 さて、ここラースデン王国の王都の食べ物だが、色んな種類の食べ物が混在している感じ。

 流石は商業都市?貿易都市?と言った所だろうか、エスニック風あり、スタンダード風あり、中華風あり、和風テイストあり・・・と何でもありそうな雰囲気だ。

 珍しい所だと、タコスやケバブ、ちょっと辛さの足り無い麻婆豆腐とかもあった。

 だからといって、米が普及している訳でも無かったが・・・。


 勿論、全ての屋台や露店が『当たり』ではなく、微妙な物も多数ww

 勝率で言うと、4割5分?ぐらいかな。


 27軒目の屋台を荒らしている頃に、通信機に着信があり、リリリリリーーン♪ と鳴った。


 一瞬、周りの通行人が海渡達をギョッとした表情で見る。


「もしもし、海渡です。

 はい、今から直ぐOKですか! 了解しました~。 戻ります!!」

と通信を切ると、周りの商人が海渡達に殺到していたww



「ぼ、坊主! それってもしかして連絡が取れるみたいな魔道具なのか?」

「少年!それは、何処で売ってるんだ?」


 等と、ワイワイ言いながらグイグイ詰め寄られる。


「あー、皆さん、お静かに。 聞いて下さい!!

 こちらの物ですが、魔動通信機と言います。どんなに離れた場所に居ても、特定の相手の通信機にリアルタイムに連絡が取れる物です。

 利用可能期間が、2年~5年・・・通信の頻度等によって、利用可能期間が変わります。

 発売元は当方の『さえじま商会』です。

 こちらの王都に店舗を出すかは、検討中ですが、エリーゼン王国の王都支店は近日にオープンしますので、どうしても早急に欲しい方はそちらの方へ・・・。」

と宣伝した後、全員で気配を消して、包囲陣を脱出し、サウザンド商会まで戻って来たのであった。



 海渡達は知らない事ではあるが、この日ラースデンの王都から、異常とも思える数の商隊が、一路エリーゼンの王都を目指し、出発したのだった。

 通常、ラースデンの王都からエリーゼンの王都までは、直線距離で約2700km離れており、地形上の理由等で、実際の道のりにすると、約3300kmとなる。

 200を超える数の商隊の群れが、一心不乱に・・・まるでラリーの様な勢いで、エリーゼンの王都を目指すと言う事態になっていたのだったwww

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