第302話
異世界3ヵ月と5日目。この世界の暦では12月25日。
クリスマスと言うか、収穫の日、キターー!!!!
日の出前なのにハイテンションで、目覚める海渡。
寝る前に思いついた事があり、地下工房へとゲートで飛ぶ。
ガトリング式レールガンだが、これが成功したので、小型のハンドガンに出来ないかと思っている。
まずは弾は9mmとし、レール部分をスケールダウンして作成する。
銃身の冷却は、ガトリング式の方では、空冷フィンを取り付けたのだが、今回は水冷にする事にした。
銅管をフィンの代わりにコイル状に巻き、高熱になったら蒸気を解放する感じにしてみた。
直接冷やすより、水を生成する方が魔力燃費が良い為である。
ハンドガンだけに、大きな魔石は使えないので、小さいホーンラビットやゴブリンサイズの魔石を使う予定だ。
魔石は、本来であれば撃鉄がある場所に配置する予定。
ボディだが、92Fの無骨な感じが好きだが、作りやすそうなグロッグ17の様なボディ形状を真似る事にした。
ちなみに、スライドはしない。(不要なので)
智恵子さん情報によると、ホーンラビット級の魔石1個の場合、1万5000ジュールの電力で、ザックリ15~22発ぐらい撃てるらしい。
但し、発射の反動を反重力で打ち消す場合、それが7発~11発程度になるらしい。
だが、1万ジュールにする場合、反重力込みで、15~17発との事。
1万ジュールの場合の弾速を智恵子さんに聞いた所、弾丸の材質や形状にもよるが、おそらくマッハ1.1~1.3ぐらいじゃないかとの事。
「うーん、そう考えると、弾と一緒にマガジンを代える感じの方が良いのかな?」
とも考える。
ちなみに、マガジンには、9mm弾が15発入る様に考えている。
これを12発にすれば、十分に魔石が入る。
そこで、マガジンに魔石を入れてカートリッジごと交換するタイプとした。
魔動CPUを撃鉄位置に置いて、小型水晶記憶体にプログラムを入れる。
物が小さいので芸の細かい作業となる。
ちなみに、ボディや引き金等のパーツ類は、強化TFG製とした。
弾丸は素材違いで何種類かを作成した。
取りあえず、各種類の弾丸のマガジンを10個づつ用意した。
「早速テストだ♪」
と喜んで最南端の別荘へ出たのだが、銃をかまえてみて愕然とした。
「大人サイズで作ったから、引き金に指が届かないし・・・」
悲しい顔で、コーデリアの部屋へと戻った海渡。
目覚めたフェリンシアに、
「早く大人になりたい!!!」
と嘆くのだった。
ちなみに、フェリンシアに構えて貰ったら、フェリンシアはギリギリセーフ。
なので、再度別荘へ飛んで、目の前で試射して貰った。
「バシュン」
と言う発射音がした時には、ターゲットの直径1mの木に直径50cmの穴が空いていた。
「海渡! これ凄いです!! これ、私も欲しい!」
とウキャウキャ喜びながら、自然破壊中のフェリンシアさん・・・。
「どう?撃った時の反動は無い?」
と聞くと、全然問題ないそうで。
なので、弾の種類を変えて、色々撃って貰った。
銅の弾は当たった際に潰れ、大きな穴をあけつつ炸裂する事が判明。
鋼鉄の弾は貫通力が高い。
タングステンの弾は破壊力が大きく、木が倒れる。
と、そんな感じ。
結局場合によって使い分ける感じが、一番良いと言う結論になった。
ハンドガンの0号機は、そのままフェリンシアにあげる事にし、トリスターに帰ったら、もう少しグリップを細身に出来ないか検討する事にしたのだった。
コーデリアの部屋に戻って、5人と1匹で朝食を食べ、屋敷の外で(このまま住み着かない様にね)ドロスさんとヨーコさんに挨拶をして別れる。
既にカフェの前には軽く人集りが出来ていたが、屋敷の門から出る際に、自動車に乗ったまま出たので、お構いなしに門をロックしてその場から離れた。
街の中を走ると、みんな物珍しいらしく、凝視している。
一部の住民は、カイト印を見て、「あー!」と納得した顔をしていた。
南門から出る際、衛兵からは、ギョッとされたが、無事に出る事が出来た。
門から暫く走った所で、ステファニーさんに
「僕ら、これから絶界の森で7000匹始末しに行くんで、このままゲートで先に帰って貰えますかね?」
と言うと、かなりブーイングが出たが、7000匹の中には、多少強い物も混じってる可能性があるので、守りながらは戦えない(嘘だけど) と力説し、帰って貰える事となった。
そして、ステファニーさんは一足先にトリスターへ、海渡とフェリンシアとレイアは、絶界の森のユグドラシルの木の下へとやって来た。
「お母さん、ただいまーー!!!」
とフェリンシアが母親へ飛びつく。
「おお、フェリンシア、元気そうじゃのぉ~。海渡も久しぶり! おや、その小さくなってるのは、ベヒモスの亜種か?」
とフェンリル形状のお母さん。
「初めまして、あっしはカイト親分の舎弟で、レイアと申しやす。シルバー・ベヒモスになりやした。以後お見知りおきを!」
と挨拶するレイア。
そして、目的であるユグドラシルの木を見上げる海渡。
「女神様から、今日食べ頃のユグドラシルの実があるとの事なので、採取しに来たんですよww」
と嬉し気に告げると、
「確かに、既に良い匂いがしておるぞ? 500年振りか・・・久しぶりだな。」
とフェンリルお母さん。
海渡は飛び上がって、フェリンシアと手分けして採取を始める。
さて、件のユグドラシルの実だが、形状は、巨大な落花生というか、瓢箪と言うか、そんな形状。色は美味しそうなピンクと赤の中間で、大きさは、木がデカいだけあって、お相撲さんと同じくらいのデカさ。
しかも、木が大きいので、半端無い数がなっている。
今回を逃すと、次は500年後との事なので、必死で採取する。
しかし、ふと不安になり、
『智恵子さん、これ全部採っちゃっても良い物なの?』
と聞くと、
『特に問題は無いです。魔物が落ちた実を食べる程度ですから。無くても問題無いですよ。』
との事だった。
魔物に与えるぐらいなら・・・と尚一層励む海渡とフェリンシア。
20分ぐらいやっていたが、
「あ、これ闇魔法の触手で採取すれば良くない?」
と思い出し、地上へと戻って来た。
2人は3Dマッピングで▲表示された実をロックし、100個単位で採取を進める。
ユグドラシルの一番上の最後の1個を採取したが、それだけ色が違っていて、金色に光っていた。
「お!これだけ色違うね?」
と海渡が言うと、
『それは、2000年に1回だけなる、ワンランク上の実ですね。 通称『神の実』と呼ばれてます。』
と智恵子さん。
なるほど、じゃあ、女神様へ献上しよう。
通常の実は海渡が約5700個、フェリンシアが4900個。合計1万個を超えた。
フェンリルお母さんにもお裾分けで1/3置いて行こうとしたが、10個ぐらいあれば十分と言われ、10個をお裾分け。
なので、色々食料もお裾分けした。なかでもタンカー・ホエールの肉は大喜びされた。
ついでに、せっかくだから、骨粉入りハチミツ水も飲ませ、少しお裾分けしておいた。(何かの際のポーション代わりに)
骨粉入りのハチミツ水の効能の驚いていた。
せっかくユグドラシルの木まで来たので、少年少女に作る武器の柄に使ったり出来るだろうと、落ちてるユグドラシルの木の枝を探し、結構な本数を集めておいた。
その後、早めの昼食を食べ、色々と最近の下界の話をしたりして、マッタリと2時間程過ごし、7000匹を始末する為に、お暇をする。
レイアと出会った場所へとゲートで飛び、狩りを開始する。
最上位のボス格が消えたせいか、3つのグループに分かれていた。
1人、1グループを担当する事にして、それぞれの担当するグループへと向かう。
大体だが、海渡が担当する最後尾のグループが3000、フェリンシアとレイアが各2000となる。
ただ面倒なのが、結構分散しており、フェリンシアとレイアが担当する各2000匹の魔物は半径約300mぐらいの中に集まる感じ。
海渡が担当する3000匹は半径約900mに居る感じで、どのグループも密度が薄いので効率が悪い。
海渡は外周部から渦巻き状に攻めて行く事にした。
刀を取り出し、『鋭利増加』『貫通増加』『斬撃加速』を4回付与し、更に身体強化、身体化速、クロックアップを発動して超高速で移動しながら、魔物らが気付く前に生命を絶つ。
刀で瞬時に斬り付けつつ、他の個体にアイスニードルを使って100匹単位で抹殺し、即座に闇魔法で収納し、次の集団へと移動する。
凄まじい勢いでマップ上の赤い点が消えて行く。
フェリンシアも似た様な経路で外周部から中心へ追い込む様に襲撃を掛けているようで、外周部から赤い点が激減していた。
問題は、レイアの所。
まだ全然減ってない。
「あいつ、何やってんの?(怒」
と呟きつつも、斬撃を繰り返し、魔法を連発して無双して行く。
最初の15分で、外周部に散らばっている2500匹近くを倒し、残りは中心付近の500匹強となった。
「あ・・・フェリンシアに先を越された・・・」
マップにはフェリンシアの担当したエリアの赤い点が全て消えていた。
レイアの所は、少しずつ赤い点が外周から減って行ってるが、実に遅い。
こちらの担当の500匹をサクッと倒してレイアの所に合流する事にした。
この500匹だが、真ん中にいるオークキングの配下らしい。
特性を考えると、真っ先にオークキングを倒した場合、散らばって逃げる可能性もあるので、まずは外側から攻める事にした。
外周部に居る200匹を3Dマップでロックし、雷撃で一気に間引く。
そして、刀を片手に、グルグル回りながらサクサクと斬って行く。
最後の集団が半径100mに集約した所で、超高速回転アイスカッター5枚でサクッと切り込み、わざと残したオークキングを含む最後の3匹は、刀による三太刀でアッサリ終了。
ちなみに、オークキングはLv82だったが、ハッキリ言ってラルク少年の方が強いと思った程。
ステータス的には、確実にオークキングなのだが、全然スピードが遅く、判断も鈍い。
なんで、過去にあれほど苦労したんだろうか?と不思議に思う程の弱さだった。
気を取り直し、500匹の残骸を回収し、レイアの方へと向かう。
既にフェリンシアが合流したらしく、片側から凄い勢いで減って来ていて、徐々に反対側へと魔物が逃げ始めている。
海渡はフェリンシアとは反対側(つまり逃げる魔物を迎え撃つ方向)から攻撃を開始する。
2方向から囓られた様に、赤い点が減り、レイアを見ると、ムシャムシャと一心不乱に食べていた。
「え? お前さぁ、食べて減らしてたの?」
と聞くと、
『だって、勿体ないじゃないですか!!』
と言っていた。
「あーー、それは遅いよね・・・」
と項垂れる海渡だった。
フェリンシアは爆笑してたけどね。
まあ、そんな訳で、7000匹も始末完了。
時間は午後1時過ぎ。
「よし、ついでに、トレントも補給していこうかな。」
と森の南側、トレントの群生地帯へとやってきた。
「やっぱり、トレントの繁殖率ってすげーよなw 刈っても刈っても直ぐ生えるしw」
と喜びながら超高速回転アイスカッター10枚で幅200mを一気に刈り取る。
触手のネットを使って、サクッと収納する。
そして、一気にトリスターの南門の格納庫裏へと出て、トリスターに戻ったのだった。
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