第49話


 異世界17日目。トリスターに来て2日目。


 日の出と共に目が覚める。目を開けると、見覚えの無い天井が見える。

 横には俺をホールドしているフェリンシア。


 そうか、やっと森を抜けてトリスターに辿り着いたんだったな。

 フェリンシアの包囲から抜け出し、着替えを済ませ、アイテムボックスからコップとお茶を取り出して、ソファーで一息ついてから、中庭(昨日兵たちが訓練していた)の外周を軽く10周し、小太刀で素振りと型を軽く済ませる。


 今度は、(小さい体に見合わない)刀の方をだして、軽く素振りをしてみる。

 うん、ステータスが格段に上がった事で、キレが良くなたった。

 まあ、手が小さいから、かなり厳しい事は厳しいのだが・・・早く成長したいものだ。

 少し汗をかいたので、フェリンシアが使っている、『クリーン』を真似て使ってみる。

 おお、これはこれで気持ち良いものだな。服まで綺麗になって、爽快感がある。


 そして、部屋に戻ると、フェリンシアも抱き枕が無くなったからか、ゴソゴソと起き出す。


「おはよう、フェリンシア」


「おはよう、カイト」


 昨日はまた濃い1日だったけど、アルマーさんが良い人で助かった。

 どうやら、俺は結構飛んでもない事をやったらしい・・・と言う事がアルマーさんの反応で判った。


 体が小さい内は、平穏無事にこの世界で過ごす為にも、もっとこの世界の常識や知識等を仕入れておかないとな。


 と言う事で、ヤル事リストを考えてみた。


 ・冒険者の資格をとって置く。

 ・アイテムボックス内の死蔵品の整理。

 ・食料や食材の確保。

 ・生活基盤と資金の確保。

 ・本や人から世界の情勢や常識や知識を学ぶ事。

 ・この世界の人のステータス値の確認。

 ・この世界の魔法や魔道具の確認。

 ・あと魔道具や料理(日本の食事)の研究。

 ・教会に行って、女神様への近況報告とお礼。

 ・観光&美味しい物食べ歩き。


 と、こんな所かな? よし、後でアルマーさんに聞いてみよう。


 そうこうしている内に、館の中にも人の動きを感じるようになってきた。

 暫くすると、ドアがノックされ、食事の知らせを受ける。


 食堂へと赴くと、昨日のメンバーに加え、奥様がテーブルに着いていた。

「おはようございます。奥様は、もう起き上がって大丈夫なのですか?」

と挨拶を交わす。


「おお、カイト君、フェリンシアさん、おはよう。昨夜は本当にありがとう。あれから、マギ・マッシュと精霊の水を使ったスープを作らせて、少し飲ませ、最後にハチミツを一サジ舐めさせたら、益々元気になってな。本当に君らにはお礼のしようがない・・・。」

と頭を下げるアルマーさん。


「私を治療してくださったのは、あなたでしたか。私はアルマーの妻で、ミリティカと申します。本当にありがとうございました。お陰で、また家族とご飯が食べられるようになりました。」

と頭を下げる奥様。


 子供らもみんな目に涙を溜め、頭を下げてくる。


「みなさん、お気持ちだけで、十分ですから。そんなに頭を下げないで下さい。逆に恐縮してしまいます。」


 なんか、見た目年上で、地位のある人から、ここまで感謝されると、身の置き場が無い・・・。


「そうか・・・。じゃあ、また後程と言う事で、取り合えず、みんなで朝食にしよう。」

と切り上げてくれた。


 食事をしながら、昨夜の事の出来事を詳しく聞いたのだが、最後のハチミツがダメ押しになって、完全復活と相成ったらしい。

 しかも、逆に元気になりすぎて、あれから眠気も吹っ飛び、久々に家族で話をしたりしたらしい。

 うむ・・・凄い効果だな。24時間戦える感じかな? 栄養ドリンクでも売り出す?

 冗談はともかく、それだけの物だから、不用心に世に出回らせてはいけないのかもしれないな・・・と考えた。

 しかし、あれを頻繁に舐めても変わらず平常運転のフェリンシアって、ある意味凄いな。

 と、横眼でフェリンシアチラ見すると、皿の肉と格闘していたwww

 ああ、色々食べ方のマナーも教えないとだな・・・。


 アルマーさんが、

「フェリンシアさん、どうだい、我が家の料理は? 気に入ってくれたかい?」

と聞くと、


「はい、とても、美味しいです。海渡の作った、ワイバーン・ステーキやミノタウロスの焼肉も美味しかったけど、このお肉もとても美味しいです。」

と満面の笑みで回答。


 あ・・・アルマーさん以外が固まった。

 ちょっと、頭を抱えてしまう俺・・・。

 奥様と子供らは、「ワイバーン・ステーキにミノタウロス焼肉・・・」と呟いていらっしゃる。


「フェリンシアさん、あまりそういう魔物の名前は口に出さないようにしないと・・・ね」

と苦笑いのアルマーさん。


『フェリンシア、どうやらあの魔物ってこの世界では、ヤバい強さだったらしくてね、知らない人が聞くとトラブルの原因になる可能性あるから、気を付けてね』

と注意を促す。


『ごめんなさい・・・気が付きませんでした。気を付けます。』


「すみません、バタバタしててフェリンシアに口止めするのを忘れてました。」

と海渡が頭を下げる。


「まあ、ここは家の者たちだけだし、口は堅いので、安心してくれ。皆もくれぐれも外に漏らすでないぞ!」

と食堂に居る全員に厳命してくれた。


「しかし、ワイバーンとミノタウロスはそんなに美味いのか?」

と興味を示すアルマーさんご一家。


「どうせなら、食べてみます? まだ結構な量あるし。形状が気にならないなら、フルーツ・キャタピラも美味しいですよ。」


「是非に!」と言う事で、厨房の方へ行き、ワイバーン、ミノタウロス、フルーツ・キャタピラを各20kg程渡しておいた。あと、肉に合うので岩塩も10kgぐらい渡した。

 料理長は、肉もだが、何故か岩塩にもビックリしていた。


 食後、再度アルマーさんと打ち合わせ。

 深々と頭を下げられ、再度お礼を受けつつ、今後のヤリたい事リストを相談する。


 ・冒険者の資格をとっておく。

 ・アイテムボックス内の死蔵品の整理。


「この2つに関しては、本日、紹介状ではなく、私も一緒に着いて行こうかと思っているが、どうだろうか?」と。


 いや、それ、完全に目立ちますよね? やはり、そこは紹介状の方で、目立たない感じでお願いしたい と伝え、了承を取る。

 売却する物や解体してもらって、一部は保持したいものなんかを、現地で調節する事とする。


 ・食料や食材の確保。


 これに関しても全面的に強力すると言ってくれた。米や小麦や葉物野菜等、どんな種類があるのかは、料理長に聞いてみてくれと。

 あとは、市場に行けば、色々見る事が出来るとも、教えてくれた。ありがたい。


 ・生活基盤と資金の確保。


 これにも全面的に強力すると言ってくれたのだが、最悪の状態までは何とか自力で頑張りたいと希望を伝えた。


 ・本や人から世界の情勢や常識や知識を学ぶ事。


 これに関しては、元々この世界では本が高価であることもあり、図書館は王都でないと無いそうで、入館には許可証が必要だそうだ。

 もし、王都に行くのであれば、許可証の手配を約束してくれた。あと、この館にも蔵書があり、そこは自由に閲覧して良いとの事だった。これもありがたい。

 この国(この世界)の常識については、リーファさんとサイファさんが「色々」教えてくれると言っていたが・・・これは危険な臭いがするので、保留。


 ・(この世界の)人のステータス値の確認。


 これだが、鑑定スキルがあるからと言って、他人のステータスを無断で見るのはモラル違反だそうだ。(バレなければ罰する術もないけど と付け加えられた)

 また、家族間では教育や助言の為に見せたりもするが、基本的に他人にはステータスを見せない物なんだそうな。

 ただ、平均的な兵士のステータス値は参考までに教えてくれた。 ちょっと驚いた。


 ・(この世界の)魔法や魔道具の確認。


 魔道具は、結構高価な物で、一般庶民には縁遠い物らしい。

 お風呂も同じ理由でぜいたく品なのだそうだ。

 魔法に関しては、後で、領主様の魔法部隊の訓練を見せてくれるらしい。


 ・教会に行きたい(って、女神様への近況報告とお礼)


 これは、ギルドから比較的近くにあるので、場所を教えてくれるとの事。


 ・観光&美味しい物食べ歩き。


 これは、この町と言うかこの国と言うか常識に慣れるまで、安全の(騒ぎにならない)為にも、この領都内で暫く我慢して欲しい。

 と、あくまでアルマーさんの希望 という感じでお願いされました。

 まあ、すぐに何処かへ旅に出る気は無いので、これも了承。


 そして、アルマーさんからの提案と希望


 ・この館の蔵書の読書や世界の情勢や常識等を学ぶ間だけでも、暫くこの館に滞在してはどうか?


 滞在中は、自由に町へ出ても構わないし、ここの館に用が無くなれば、いつでも自由に出ていってくれても構わない。


 ・他の人のステータスの確認は、実際に騎士や魔法兵の訓練に参加してみたりすると、自分の強さがどの辺りなのか、判りやすいのではないか?


 是非、そうしてみて欲しい。

 

 ・町にある魔道具屋やこの館の魔道具なんかを見て廻ると良い。


 必要があれば、魔道具職人や鍛冶師を紹介も出来る。


 ・最後に自分の子供ら 特に末娘のララーと友達になってやってくれ。


 あの子は歳の近い友達が、周りにおらず、母親が長年伏せっていたので、寂しい思いをさせた。

 どうか宜しく頼む・・・と。


 と言う事で、滞在を少し延長する事にした。

 但し、常識等を教えてくれる先生役は、『平民である自分に合った、(貴族又は貴族の子弟)でない方』をお願いしますと、

 リーファさん、サイファさんの関与をやんわりとお断りしておいた。


 それらの話が終わり、ギルドマスターへの紹介状を書くまで、部屋で待つ事となった。

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