ネッ友恋愛

さばりん

第一章 ネッ友ユミ編

第1話 ネッ友の『ユミ』

 僕の名前は、根倉似鳥ねくらにとり。24歳独身昨日付けで会社を退職し、ニートになった。

何も特にやることがなく、部屋の掃除などをしながら一日を過ごして、今は自室のベットに寝っ転がってSNSアプリ『LANE(らね)』を開いていた。『LANE』は、無料で通話やチャットが楽しめるトークアプリである。

『LANE』を開くと、トークの通知が20件以上来ていた。俺は一つ一つメッセージを読んで、いつものように返信を返していた。


 結局他の人のトークを返している間に、新しいメッセージが来てしまい、何度も会話の内容を見返して返さなければならないのは玉に瑕だが、それはそれで時間潰しになるので嫌いではなかった。


 そして、Laneを返していると、いつものように『ただいまー!!』っと、元気な挨拶のメッセージが届いた。俺はそのメッセージを見てつい画面を前に微笑んだ。そして、『お帰り』とメッセージを返す。

 彼女の名前は『ユミ』、最近アプリで友達になった所謂「ネッ友」である。


 ユミとの出会いは、1週間ほど前、とあるチャットアプリでトークを交わして仲良くなり、LaneのIDを交換したのだ。

 そして、交換してからいきなり通話をすることになり、初対面にもかかわらず、「今日から『にとお兄ちゃん』ね!」と宣言され。そこからというもの、お兄ちゃんとしての立ち位置を得ることになったのだ。

 実際年齢も俺の方が年上だったし、あながち間違ってはいなかったのだったが、こうもいきなりグイグイ来られるのは初めてだったので、正直戸惑った。


 通話を続けていると、少年のような声聞こえるので、一瞬ネカマなのではないかという考えが頭をよぎった。だが、彼女の話す一語一句には、嘘一つ感じられなかった。俺が女の子だと完全に理解できたのは彼女が「お腹痛い」と発したのが要因だった。「大丈夫?」と聞き返すと、「女の子の日だから」と返答してきたのだ。普通ネカマだったら、絶対にこのような嘘は付けないだろう。


 そして、決定的だったのはその直後にトークに送ってきた画像だった。そこに表示されたのは、可愛らしい一人の美少女だった。長髪の黒髪をピンでとめて掻きあげ、カメラを見つめるその表情は、少しあどけなさが残った可愛らしい顔立ちに、ニコっと優しい目をしており、薄い口紅を付けた健康的な唇をした美少女だった。


 僕はその瞬間、心の中の何かがざわついたような気がした。この時から、すでに彼女に何か特別な感情を抱いていたのかもしれない。だが、この時はまだ理解していなかったのだ。自分の気持ちに。



 だか、それからというもの毎日のように通話し続けた結果、僕はユミの色んな部分を知ることとなった。スマホを買い替えたばかりだとか、実は彼氏と別れたばっかりだったとか、朝が苦手だとか…

 そして、気がついた時には、彼女もおれの前では素を見せるようになっていた。

 普通に「よっこいしょ!」と言って立ち上がったり、「あーだりー」とヤル気がない姿を見せたりと、どんどん心を開いていってくれた。そんな気がした。


 そして、彼女が最後にいつも言う決まり文句。


「にとお兄ちゃんは、ユミにとってだよ…」


 この言葉を聞いて、僕はいつも優越感に浸っていたのであった。彼女にとって、俺はな存在なのだと…

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