皆の思い

 「なぁ、みんな。さっきのシャナン…お前ら、本当はどう思う?」


 根拠地ベースキャンプに戻り、夕食を済ませた面々が焚き火を中心に、シャナンが取った行動について話をしていた。当のシャナンは闇猿やみましらとの戦闘疲れか、はたまた泣き疲れたのか早々にテントに入り寝息を立てていた。


 重い雰囲気の中、トーマスが口火を切り、ポツリと話始めた。


「分からんでもない。俺も子供の頃はそう思っていたしな」

「ええ、私もよ。小さい頃って本当に悪いやつなんかいないんじゃないか、って思ってしまうのよね」

「確かにそうです。彼女のあの言葉を責めるべきではないと私は思います」


 面々が意見を述べる。皆、シャナンの言葉に真っ向から反対する気は無かったのである。


「だが……」


 トーマスが枯れ枝をポキリと折り、焚き火に投げ込む。枯れ枝は炎の勢いを強くし、赤々と燃え上がった。


「勇者としては良くないな」


 正論である。


「まぁ、そうだよな……魔物を助けたがる勇者なんて聞いたことがねぇよ」

「勇者かぁ…小さい女の子には不釣り合いよね」

「魔王の配下である魔物を見過ごしては、勇者足り得ない…悲しいことですね」


 本音と建て前……先に述べた意見が彼らの本音であり今の言葉が建前ではある。しかし、世界は本音だけでは渡れない。むしろ建前の方が多い場合もある。


 勇者であるシャナンは小さな少女という本音だけでは生きていけない悲しい宿命を負ってしまったのだ。


「…だからといって、シャナンに無理強いはさせたくない。汚れ仕事は私たちがすれば良いだろう」

「同感…あの子の泣き顔はあまり見たくはないわね」

「私たち、供回りの役目にそのような意味も含まれてたかもしれませんね」

「勇者……かぁ。シャナン、お前、とんでもない重荷を背負っちまったなぁ」

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