死地
──それは彼らが目的地に向かう途中で起きた──
彼らが歩みを進めると木の上から複数の
「ッ…この声、
「何!?その魔物はもっと先に出てくるのではないのか!?」
セシルがあげた魔物の名が皆の動揺を誘った。
「全員集合!セシル!
トーマスのキビキビとした指示に皆が従う。
「
セシルの
「…不味いわね…樹上に5体、背後と側面から10体、それに正面に10体程度いるわ。なんでこんなに数がいるのよ!」
周囲から好奇に満ちたおぞましい声が響く。
──ニク…ニク…ニクガ……キタ──
「お前らのご馳走になる気なんざ全然ねェんだよ!」
ルディがその声に攻撃的に返すが、心なしか震えていた。
「撤退しましょう。私たちのレベルでは勝ち目がありません」
カタリナが言うことも最もである。皆が同意する、はずであったが…
「ダメよ。背中を見せては。奴らは逃げる相手に対して、より攻撃的になるの。下手をすると興に乗った奴らが仲間を呼んで更に状況が悪化するわ」
「じゃあどうすんだよ!」
若干混乱気味のルディが声を荒げる。その状況を見て、シャナンは危機的状況であることを改めて理解し、オロオロとし始める。
「確かに状況は不利よ。でも、群のリーダーを潰せば奴らは逃げ出すわ」
セシルは皆に説明する。
しかし……
「わかった。セシルの案を採用しよう」
「マジかよ、トーマス!勝てるわけねぇだろ!」
「勝つ、ではない。撃退だ。故事にならえば、”背水の陣“だ」
「背水の陣って…お前、あれは援軍があってこその策だろ!誰が助けてくれるんだよ!」
ルディが語気を荒くして反発する。
──背水の陣とは漢の韓信が行った決死の作戦である。趙の20万に韓信率いる漢軍3万は河を背後に自らを囮に時間を稼いだ。退けば必死の状況で奮戦した漢軍に趙軍が攻めあぐねている隙に別働隊が城を取る、という壮大な陽動作戦であった──
トーマスはそれに答えず、次の言葉を紡ぐ。
「セシル、それにシャナン。別働隊として二人に任せる。俺たちが時間を稼いでる隙にリーダーを倒してくれ」
「分かったわ。任せてちょうだい!」
ルディとトーマスは体力が多く、ちょっとやそこらでは倒されることはない。カタリナは魔法の詠唱が目立ちすぎ、隠密行動には向かない。
対して、セシルは弓使いであり遠距離攻撃が可能であり、冒険者としての経験も豊富だ。それに
シャナンは
ケラケラと不快な笑い声が辺りにこだまする。
「シャナン。私の手を握って…
セシルが魔法を唱えるとセシルとシャナンの気配が
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