第64話手詰まり……

 その後も俺と橋川は、かれこれ一時間ほど話合いをしていた。

 だが全くと言っていいほどいい案は出ない。

 もうほとんどんでいた……。

 だいたいなんだよ花を助けるって……。

 ギャルと陰キャで何ができるんだよ!

 そんな正論を心の中で思ってしまい、否定できずにいた。

 

「もう今日はお開きにしない? また明日集まるってことで……」


 明日集まるか……。

 何だかもう何回集まっても無意味な気がしてきた……。

 それどころかこんなことに時間を割いていていいのかとも思ってきてしまう……。

 そんな元も子もないことを考えてしまうほどに俺は諦めていた。

 まだ二日しかたっていないが、そう思ってしまう。

 俺一人じゃ何も出来ないから橋川に協力してもらっているが、これはもう数の問題でもない気がしてきた……。

 まず問題の阿澄あすみたちだが、俺と全く接点がない。

 というか阿澄どころか、俺はほとんどの生徒と接点がない。

 そして橋川は……どうなんだ?

 阿澄達と、花の件で揉めていたから仲良くはないのだろうが、もしかしたら接点はあるのかもしれない。


「帰る前に一ついいか?」


 鞄を肩にかけて、席を立とうとしている橋川を呼び止める。

 

「なにー?」


「いやあのさ……お前って阿澄達と接点あるの?」


 橋川はうーんとうなって、腕を組んで考え始める。

 |長考《ちょうこう》の末に、橋川ははっと顔を上げて手をポンと叩いた。


「そういえば私、あいつと同じ軽音部だ!」


「え……」


 思わず間の抜けた声が出る。

 今の橋川の発言にはいろいろ驚かされた。

 何で同じ部活なのに言わないのかとか、何で同じ部活なの忘れてんだよ! とか……。

 驚いた俺を横に、橋川はあはは……っと頭をかいていた。

 

「ごめんごめん、すっかり忘れてたわ。でも私、軽音部であんまあいつらと関わりないからなー……。せいぜい文化祭で同じバンド組むことになったことぐらいかな」


 めちゃくちゃ接点あるじゃねぇか……。

 逆にどうすれば同じバンドのメンバーを忘れることが出来るのだろうか……?

 

「でも同じバンドって言ってもほとんど喋らないんだよねー。担当楽器が被ってなかったのがあたしらしかいなかったから、しかたなく組んだみたいな感じなんだよ」


 それでも普通忘れるかと思う。

 でもそれならあまり関係ないかもしれない……。

 というか橋川と阿澄達に何かしらの接点があったところで、結局どうすればいいのか考えてなかった。

 橋川と阿澄達が仲良くなったところで花への評価は変わらないのだから、結局意味がない……。 

 振り出しに戻ってしまったが、元からたいして進んでない……というか一歩も進んでないので、やっぱ戻ってない。

 俺達はサイゼの前で別れると、俺はそのまま家に向かう。

 帰り道も、俺は花のことで頭がいっぱいだった。

 そもそも花を助けてやることに意味はあるのか?

 まだ何もされてないわけだし……。

 いやでも手遅れになってからじゃ遅い……。

 でも助けるってどうすればいいんだ……。

 いろんなことを考えるが、結局は何も思い浮かばない。

 今の俺には、何事もなく平穏へいおんに高校生活が過ぎていってほしいと願うしかなかった……。

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