第48話嫉妬……

「あの、放課後時間ありますか?」


 顔を赤らめながらその女子生徒はたずねてくる……。

 まあ24時間365日暇なことで有名(自分の中で)な俺が、忙しいわけもなくもちろん暇である。


「暇だけど……」


 すると女子生徒はホッとした表情になった。


「良かったです! 断られたらどうしようかと思いました……」


 まあ俺なんかに誘いを断られたらそりゃショックで引きこもるレベルのことだからな……。

 

「じゃあ放課後近所のサイゼリアで待ち合わせで」


「分かった……」


 一言そう言い残して俺はその場を立ち去った。

 そして自分の席に座ると、花がすごいにらんできた。

 怖いよ……。

 てかあれ……? 

 体が動かないぞ。

 恐怖で動けないのか? 

 はたまたコイツ実はゴルゴンだったの?

 目が合ったら石化させられる能力でも持ってんの?

 俺は硬直こうちょくした体を何とか花の方へ向けると、花はよりいっそう強く睨んできた……。


「な、なんだよ……」


 俺がそう聞くと、花は口角こうかくを少し上げて引きつった表情になった……。

 

「随分と委員長さんと仲がいいのね……」


 委員長?

 さっきのあの人か。

 どうりで見覚えがあると思った。 

 てか自分のクラスの委員長の顔すらロクに覚えてないって、俺他人に興味なさすぎじゃないか……。

 少し自分にドン引きしていた……。

 

「いや別に仲良くなんかないぞ? 今日だって放課後一緒にサイゼに行く約束しただけだし」


 すると花の顔はよりいっそう引きつった表情になった。


「へー……放課後一緒にサイゼね……」


 なんか言い方が怖いな……。

 花は十秒ほど俺を睨みつけた後、席を立ってどこかへ行ってしまった……。

 結局なんなんだよ……。

 俺はあいつが何に怒っているのかは、はっきりとは分からない。

 付き合いの長いからと言って、相手の思考が簡単に分かったら苦労しない。

 はたから見たら、花が委員長に嫉妬しているように見えるかもしれないが、それだけはない。

 そもそも嫉妬なんて言うのは、何のとりえもない凡人が抱く感情だ。

 矢木澤花という完璧超人にはあってはならない感情だ……。

 それに、仮に花が嫉妬しているとしたら、花が俺に恋愛感情を抱いていることになる……。

 そんなのはもっと有り得ない。

 俺とあいつじゃ釣り合いが取れない。

 そもそもこの世界に、矢木澤花と釣り合う人間なんていない……。

 彼女は完璧で気高けだかく、それでいて孤高なのだから……。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る