第36話彼らの合唱コン……
「では皆さん、長い連休も明けて二週間後には合唱コンクールです。今日から早速練習に取り掛かるので、放課後は残ってください」
短いようで短かかったゴールデンウィークは、一瞬で終わってしまった……。
結局家でずっとゲームをしているだけだった……。
まあ夏休みもゴールデンウィークも、毎年こんなもんなので、今更何も思わない。
それよりも、合唱コンクールとかいうめんどくさいイベントが待っているのを忘れていた……。
「それじゃあ毎日3時40分までは残るので、皆さん机を後ろに下げてください」
担任が指示を出し、生徒が机を後ろに下げ始める……。
はぁ……やだやだ。
合唱コンクールなんて、男子はやる気ないけど、女子は無駄にやる気があるから、意見が食い違って衝突するんだよな……。
それで女子の誰かが泣いて教室から出ていって、みんなで追いかける……。
あほらしい……。
何でそういう女子ってすぐ泣くの?
どうせやる気もたいしてないくせに、『大丈夫?』って同情して欲しいだけだろ……。
なんて、心の中で愚痴をこぼす……。
「じゃあ早速各パートに分かれて練習しますが、それでいいですか?」
早速仕切り始めたのは、パートリーダー
「では男子は教室で、女子のアルトは隣の501号室、ソプラノは502号室で練習を開始してください」
てきぱきと指示を出していく花を見て、流石と言わざるを得ない……。
「では後は各パートリーダーの指示にしたがってください」
花の指示出しが終わり、合唱の練習が始まった……。
「それじゃあとりあえず、このラジカセで歌を聞くから、しっかりと聞いといて……」
学級委員の男子が、ラジカセのボタンを押して、曲が流れ始める……。
曲の一番が終わったところで、男子のパートリーダが曲を止める。
「じゃあまず今流したところまでやるから……」
ラジカセから流れる歌に合わせて俺達も歌いだすが、最初だからというのもあるかもしれないが、すごく酷かった……。
男子はみんなやる気がないからほとんど歌ってないし、歌おうと思っていた俺も初めて聞く曲なのでテンポがよくわからなかった……。
「えーと、まだみんなこの曲の歌詞とかテンポとか分からなさそうだから、今日は歌わずに聞くだけにしたいと思います……」
男子の学級委員がそう言っているが、ほとんどの生徒は聞いていない……。
曲が流れ始めても、喋っているか、携帯をいじっているかのどっちかだった……。
結局何もせずに、初日の練習は終わった……。
「それじゃあ今日は号令なしで解散にします」
担任はそういってすぐさま教室を出ていった……。
俺は施錠という呪いにかけられているから、すぐには帰れない……。
クラスメイトが出ていくのを待っているが、陽キャの女子達が会話をしている……。
盗み聞きをするつもりはなかったが、女子達の会話が聞こえてくる……。
「でも本当に合唱コンとかだるくない? この行事ってなんか意味あんの?」
「ほんとそれな! 一年の中でこのイベントが一番いらないよね!」
女子達の合唱コンの愚痴が聞こえる……。
普通女子ってみんな合唱コンやる気あるもんじゃないの?
女子も男子もやる気ないって、もうやる意味あんのか?
そんなことを思いながら、5分ほどしてクラスから人がいなくなる。
すぐに施錠をして、職員室に届けようとすると……。
「遅かったわね」
「うわぁ!」
後ろから急に声をかけられ、驚いてしまった……。
「なんだ花、まだいたのか?」
「なんだとは失礼ね。せっかく待っててあげたのに……」
「そうなのか……。じゃあ俺職員室よるから、先に下で待っててくれ……」
俺はすぐに職員室にいる担任にカギを渡し、下駄箱へ向かう……。
「それじゃあ行きましょうか……」
「あぁ……」
俺達は靴を履き、校門を出て家に向かう……。
「ところで、合唱コンの練習どうだった?」
男子の練習が酷かったので、女子の方も気になり質問する……。
「どうもこうもひどい
女子の方も男子と同じ様子っぽかった……。
「みんなこんな行事なんて興味ないのよね……。このクラスで合唱をやるのは、最初で最後なのに……」
そういった花の横顔は、酷く
最初で最後か……。
彼女が何故こんなにも合唱コンにやる気なのか、俺には少し分かった気がする……。
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