彼と彼女の過去

第30話昔の彼ら……

 朝……。

 どうして学校がある日の朝というものは、こんなにも憂鬱ゆううつなのだろう……。 

 そしてそれが、長期休み明けの日ともなると、もうだめだ……。

 新学期早々憂鬱な気分でベッドから身を起こす……。

 時計を見ると、まだ7時30分だった……。

 よし、寝よ……。

 俺がもう一度布団をかぶると……。


「バサァ~」

 

 な、なんだ!?

 二度寝をしようと決意した瞬間に、俺の布団が誰かに取られた……。

 まあ誰が取ったかはわかるんだけど……。


「おい万葉! まだ時間はたっぷりあるだろ? 後30分は寝かせてくれ……」


 布団を取った犯人は妹の万葉だ……。

 万葉は呆れた顔で。


「やれやれ……。お兄ちゃん、まだ春休み気分なの? もう朝食も出来てるよ」


 っと言ってくる。

 俺は妹に無理やり引っ張られながら、二階に降りていく……。


「優太、早く食べて着替えちゃいなさい。早くしないと花ちゃん来ちゃうわよ」


 するとその数秒後に……。


「ピーンポーン」


 とインターホンが鳴った……。

 早すぎだろ……。

 まだ三十分ぐらいは余裕あるぞ……。


「ほら、お兄ちゃんが遅いから花ちゃん来ちゃったじゃん! ご飯は代わりに食べといてあげるから、お兄ちゃんは着替えてきていいよ」


 万葉は勝手に俺の朝食を食いだした……。

 俺は重い腰を上げて、学校へ行く準備をする……。

 

「はぁ……」


「大きいため息ね……。そんなんじゃ幸せが逃げていくわよ」


「大丈夫だ。俺にはもう逃げるような幸せはない!」


「会っていきなり自虐を言わないでほしいわね……」


 俺の自虐ネタを呆れた顔で聞いているのは、幼馴染の矢木澤花だった……。

 

「いやだってよ、新学期だぜ? そりゃため息の一つも出るよ……」


「何故新学期だとため息が出るの?」


「そりゃ、今まで仲のいい友達と別のクラスになったり、嫌な奴と同じクラスになったりするからだろ……」


「でも優太には友達いないじゃない……?」


 首をかしげて何気にひどいことを言ってくるこの幼馴染……。

 

「だいたい友達なんて定義がないだろ? つまり話したことのない奴でも、俺が友達と思えば友達なんだよ!」


 そう!

 友達なんて定義がない!

 つまり、俺が友達だと思ってる奴は全員俺の友達ってことになるな……。

 まぁ、相手がどう思ってるかは知らないけど……。


「優太に友達だと思われてる人はかわいそうね」


「それどういう意味だよ? だいたい花だって友達いないだろ?」


 この勉強、スポーツ、容姿、どれをとっても完璧な矢木澤花ですら友達がいないのだ……。

 つまり、俺に友達がいないのは何にも恥ずかしくもない!

 

「私はいいのよ。だいたい私と友人になるなんておこがましいわね! まあ相手が土下座してきたら、考えてあげなくもないわね」


 この上から目線……。

 さすがと言わざるを得ない……。

 こうしてくだらない話をしながら、俺は花と新学期が始まる学校へと向かった……。

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