CHAPTER 13


「うがッ……ぁあぁあッ!」

『ゴボォォオッ!』


 同時刻。HEATヒート-RAIDERレイダーと交戦していたBERNARD バーナードは、全身を赤熱させた彼の者によるベアハッグに捕われ、その灼熱攻撃に晒されていた。

 如何に全身を鋼の鎧で固めている戦闘改人コンバットボーグといえど、内側から生身の部分を蒸し焼きにされてはどうにもならない。赤と白を基調とする外骨格には亀裂が走り、露出しているマスクの口元からは、すでに黒煙が噴き始めている。


「……リック、私は……」

『ゴボォォ、ゴォオボォッ!』

「私は……負けられん、お前が生きる未来のためにもッ!」


 だが、内側から焼き尽くされながらも。BERNARDは決して諦めず、朦朧とする意識の中で、起死回生の一手を打とうとしていた。


「急激に冷まされた鋼鉄が如何に脆いか、貴様は知っているかッ!?」

『ボォォゴッ……!?』


 両腕の手首に搭載された、冷凍ガス噴射器。彼は震えながらもその発射口を、HEAT-RAIDERの両腕に押し当て――至近距離で噴射する。

 赤熱していた鉄人の腕部が、本来の鈍色に戻ったのは、その直後であった。


『ゴボォォオゴッ!?』

「CAPTAIN-BREADの故郷には、こんな諺があるそうだ。――肉を切らせて、骨を断つッ!」


 急激に冷却され、結晶構造が変化した鋼鉄は非常に脆い。その特性を狙い、BERNARDは両手から伸ばした帯電クローを突き刺し――HEAT-RAIDERの両腕を、粉砕してしまう。

 その一撃によってベアハッグから脱出した彼は、再び冷凍ガスを鉄人の全身へと浴びせていき――赤熱していた全身を、元の色に戻してしまうのだった。


『ゴォォオッ……!』

「――さっきの礼だ、覚悟しろッ!」


 両腕だけでなく、全身を急速に冷やされた鉄人は、もはや死を待つ人形でしかない。そしてBERNARDも、多くの命を奪ってきた彼の者に、容赦することはなかった。


 両足の脛に収納されていた可変武器を引き抜き、素早く斧に組み立てた彼は――それを一気に投げ付け、刃を腹部へと沈ませる。


『ゴボォ、オッ……!』

「はぁあぁああぁあッ!」


 さらに間合いを詰め、その斧を引き抜きながらHEAT-RAIDERの肩を蹴り、頭上へ跳び上がると。今度は斧からピッケルへと、滞空しながら武器を変形させた。


BERNARDバーナード-BREAKブレイクッ!」


 そして。最上段から、頭脳部を狙う必殺の一撃。

 その威力をピッケルの先端に込めるBERNARDは、勢いよく刃先を鉄人の脳天に沈め――この戦いに、幕を下ろす。


『……ゴッ、ボッ……』

「悪いが、お前に構っている暇はない」


 それが、彼の勝利が確定した瞬間だったのだが。当のBERNARD自身は全く余韻に浸る気配もなく、仲間達の戦況へと視線を移していた。


「――要救助者の人命が、私の最優先事項だからな」


 彼にとっては自分1人の撃破数スコアなど、何の価値もないのだろう。他者の命にのみ目を向けるその背中が、全てを雄弁に語っていた。

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