第2話君のため
孝は、神々しいものを見ているようだった。
モニターに流れている映像を見て圭介は吐いてしまった。
「お前にこの工場長を任せる。」
孝は、それだけ言うとさっさと工場長室を出て行ってしまった。
「僕は!こんなところに居たくない!」
「お前にはちゃんと用意してある。」
初恋の新島遥香が目の前に立っていた。
「新川さん、わたしを抱いて側に置いて下さい。」
遥香は、圭介にキスをした。
「あなたに拒まれればわたしは知らない男に抱かれます。」
「あの、クソオヤジ!」
一旦、出た工場長室に孝は、戻って来て
「この女が人質だ。お前はわたしの言う通りに仕事をしろ。」
と言った。
孝は、遥香を連れて行ってしまった。
それから…三ヶ月、良い子供が産まれるように
医者に厳しい基準の注文書を渡した。
僕が君のため、僕が君のため…。
圭介は、遥香のためにと呟いていた。
医者やスタッフに気味悪がられた。
体重は、半分に減った。
スタッフの中には圭介を焦がれる者も多かった。
圭介のメンタルを支えているのは毎週、一回だけ遥香に面会出来る事だった。
それなのに…遥香の態度は冷たかった。
遥香は、結婚相手がいるにも関わらずに拉致された。
「で?目標の一億人まではいつなの?」
「遥香…。それがなかなか難しいんだよ。顧客には質の良い子供を提供しないと…。」
バン!!
遥香が机を叩いた。
「ごめん…。イライラしちゃって。」
「いや、良いんだよ。不甲斐ない、ごめん…。」
「圭介なら出来るよ。頑張って。」
「…。うん、ありがとう…。」
君のため、君のため、君のため、君のため、君のため、君のために!
「君のために頑張るよ。」
正直、気持ち悪いと思っていた圭介が遥香は少しだけ信頼出来ると感じていた。
工場長室。
「ドクター、もう少し生産を速められないですか?」
「す、すみません。質の事を考えると今が限界ですね。」
「質か…。」
「H工場は、生産の早さは無くても質はSクラスです。馬に例えればサラブレッドを産んでいるという事です。」
「高値で売られているんですか?」
「はい、うちの工場が全国で一番です。」
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