『ワンダー・もうひとつのワンダー ・365日のWonder ブラウン先生の格言ノート』
格言でおもいだす三冊が、『ワンダー』『もうひとつのワンダー』『365日のWonder ブラウン先生の格言ノート』著: R・J・パラシオである。
本当の自分は消極的で強い心を持った人間ではないため、常に前向きな言葉で自分を応援し、心を強くしようとしてきた彼が、人を前に進ませる言葉の力を感じてもらいたくてこのカレンダーを作ったと思いをつづる松岡修造の『日めくり まいにち、修造!』について、あーでもないこーでもないと、「昇ってこいよ! 君は太陽だから」と鼓舞してくれる熱い物語……とはちがう。
本作の主人公は十歳の小さな男の子、オーガスト・プルマン。彼は生まれつき、
十歳ではじめて学校に通うことになったが、生徒たちはオーガストの顔を見て悲鳴をあげ、じろじろ奇異な目で見、「病気がうつる」と避けるようになる。一方、オーガストの話を面白いと感じる同級生が少しずつ増えていく。
野外学習キャンプで、彼は他校の年上グループにからまれてしまう。そこへ、いじめていたグループの子らが来て助けてくれる。オーガストも年上のグループに「ぼくたち、きみらより小さいんだぞ」とあとに引かなかったことで、学校中から仲間と受け入れられた。
最後まで意地悪く思っていたジュリアンは転校。
オーガストは学年末修了式で、模範となる生徒に贈られるヘンリー・ウォード・ビーチャー賞を受賞する。彼はママに「学校に行かせてくれてありがとう」といい、ママは「うちの家族に生まれてきてくれて……そのままのあなたに、ありがとう」というのだった。
八章にわかれ、オーガスト自身や姉、友達など、それぞれの視点で語られていく。児童書なので、字が大きく、ふりがなもあって、読みやすい。
それぞれのキャラクターが一人称で語っているので、本作を読んで慣れると、一人称がかわる他の小説も苦なく読めるようになるだろう。
また、他のキャラやジュリアンのその後については、『もうひとつのワンダー』で書かれている。
本作では、先生が授業で「今月の格言」を発表している。
何気ない日常に、気づきを与えてくれるような言葉が登場するのも特徴だ。それらを一日に一つずつ、一年間まとめたものが『365日のWonder ブラウン先生の格言ノート』だ。
また、本作は『ワンダー 君は太陽』というタイトルで映画化もされている。
書店の宣伝で本作を知ったのだけれども、わたしが最初に手にしたのは『365日のWonder ブラウン先生の格言ノート』だった。
当時の私は、ほんとうに「欲しい言葉」に飢えていた。
そんなとき本書を手にし、出会ったのである。
『正しいことをするか親切なことをするか、どちらかを選ぶ時は、親切を選べ』
オーガストが初登校し、国語のブラウン先生からノートに『先生の格言』なるコーナーをつくり、毎月書き出す課題を与えられ、それが自分にどんな意味をなすのか作文を書いて、みんなで話し合っていく。
ブラウン先生の九月の格言として、オーガストとみんなが最初にノートに書き、考えた言葉だ。
正しいよりも親切を選ぶ人でありたいと、わたしもノートに書き留めたのを覚えている。
児童書ではあるが、大人が読むに値する本である。
本を読むのが面倒と言うなら、映画『ワンダー 君は太陽』を見よう。
見たら、書籍に興味を持つかもしれない。
本作を見たとき、ハンセン病患者に寄り添いつづけた精神科医、神谷美恵子の書籍を多数読んだときのことが思い出された。
『人は見た目が九割』という本もあれば、『人は見た目が100パーセント』という漫画もある。
たしかに人は、直感的に外見でいい人か悪い人かを判断する。
だけれども、第一印象があっさりひっくり返ることは往々にしてあることだ。
心の中を覗けたならば、誰だって、一人ひとりみんな違っていることがわかるはずなのだ。
見た目で判断しないほうがいいことに改めて気づかせてくれる、そんな作品である。
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