第24話 レルスリ家の娘(上)

 実はロリーナの妊娠は計画的なものだった。両親や兄達のように生きたくなかった。家にいるのもつまらないから、兄達が行っている学校に行くとわがままを言った。

 こうして、時々わがままは言っても基本的に大人しい子供だったので、成長してからもあまり、両親や兄弟達の監視かんしは厳しくなかった。

 学校に行ってみれば、護衛のニピ族が学校内には入れない事が分かった。いつも誰かに監視されていなくていい。その解放感がたまらなかった。学校中をくまなく探検して回った。

 学校の施設のほとんどが男子学生と女子学生では、別々になっていて出会う事もない。ただし、図書館だけは共有だった。男子学生と女子学生が出会える唯一の場所だ。

 そんなある日、新しく入学してきた男子学生が美少年だといううわさを聞いた。年頃の少女達である。すぐに噂話に花を咲かせた。こっそり、みんなで図書室に行って探しに行った。だが、広い館内を探すのは難しい。その上、先生たちの見張りもある。

 そのうちにみんな諦めてしまった。女子学生の数は少ないが侍女になる割合は高い。半分くらいは侍女になる。ロリーナの友達も侍女になる子ばかりだった。

 ロリーナは気楽なものである。一人でぶらぶら探検しながら、歩いて回っていた。その時、一人の男子学生とぶつかった。ほとんど人の立ち入らない棚だったので、人がいるとは思わなかったのだ。

「ごめんなさい。」

 ロリーナはその男子学生に謝った。背は高い。少し冷たい印象があるが、なかなかの美少年である。

(顔はいいじゃない。)

「いいや、別にたいした事はない。それより、君、本を探しているわけじゃないね。」

「どうして?」

「本を一度も手に取っていない。三日前からね。ずっとうろうろして、誰かを探しているんだろう。」

 見られていたという事に、ロリーナは少なからず狼狽ろうばいした。

「そういうあなたこそ、人の事を観察していたの。」

 上手く切り返したと思った。

「ちゃんと本は読んでいるし、課題もこなしている。それなのに、目に入ってくるほど、君は落ち着きなくうろうろしている。一体、何をしているんだ、ロリーナ・レルスリ。私はレルスリ家の事が嫌いなんだ。君も誰かをはめる為にうろついているのか。」

 すっと間合いを縮められて、耳元でささやかれたので、ロリーナは叫んで逃げようとした。それにはめる為だなんて、人聞きが悪い。なんて嫌な奴なの。

 ところが、ロリーナは逃げられなかった。叫び声も出せなかった。どうやったのか、男子学生にいつの間にか抱え込まれて、しかも、唇に口づけされていた。最初は抵抗したのに、ロリーナはその口づけを受け入れてしまった。

 そして、彼は呆然ぼうぜんとするロリーナを置いて去って行った。いきなり、こんなことをするなんて、許せない…!でも、初めての経験で…悪くはなかった。しばらく、彼に体を触られた時の感覚が生々しく残っていた。腰を抱き寄せられて肩を抱かれ、整った顔が近づいてくる。思い出すだけで胸がドキドキして、勝手にほおが紅潮してため息が漏れた。

(だ、だめよ、わたくしは一体、何を考えているのかしら…!)

 思わずうっとりしている自分に気がついて、ロリーナは自分で自分を叱咤した。

(そうよ、こんなことじゃだめだわ…!レルスリ家を馬鹿にしているのだわ!それにわたくしも馬鹿にしているのね…!簡単にわたくしが落ちると思っているのだわ。今度会ったら、抗議しないと。場合によっては先生に言ってやるんだから…!)

 元来負けず嫌いだったので、ロリーナは息巻いてその少年を探すことにした。

 そして、又ある日、彼を見つけた。抗議しようと近寄ると、彼はすっと歩き始めた。明らかにロリーナと目線が合ってから歩き出したのだ。思わず追いかけた。何か危険な目に遭うかもしれないとかは考えなかった。つまり、まんまと彼におびき出されたのだ。古い建物の階段を降りていったので、少し逡巡したロリーナだったが、すぐに中に入った。一人で何かをしたことがほとんどないお嬢様なので、それだけで大冒険なのだ。そこは使われていない倉庫の地下室だった。よくこんな場所を知っているなと感心してしまう。

 暗いが、壊れている上の屋根の隙間すきまから、日の光が差し込んでいて、幻想的だった。

「さあ、抗議を聞こうか。」

 彼は落ち着き払って言った。その態度もまたしゃくにさわる。今までそんな態度を取られた事がなかった。

「どうして、あんな事をしたの。いきなり、口づけしなくてもいいじゃない。事と次第によっては……。」

 ふっと彼は笑った。冷笑と言っていい、その表情になぜかロリーナは心をうばわれた。

「君を試すためだ。私はレルスリ家の事を嫌っている。」

「嫌いって…。この間も言っていたわね。どうして?何かあったの?」

「君は無邪気なのか、無知なのか、それともだまそうとしているのか?」

 その言い方にロリーナは腹が立った。

「この間から、嫌な言い方をするわね。わたくしがレルスリ家の娘だと知っていて、よくそんなことができるわね。普通は八大貴族の娘だから、多少なりとも遠慮するものよ。」

「遠慮?そんなもの、最初からする記はないよ。君は自分の父が何をしているか知らないのか。人をはめて殺すのは朝飯前の事だ。」

 き出しの敵意にロリーナは怖くなった。確かに彼の言う通り、父が何をしているのか知らない。兄達の密会にも参加させてもらえない。何を話しているのか全く分からなかった。

「だ、誰かを殺されたの?わたくしは知らないの。女のわたくしはいつものけ者にされるのよ。」

「ふうん。だから、自分には責任がないって?」

 腹が立っていたはずなのに、ロリーナはなぜか、そんな風に思われるのが嫌だった。

「違うの、そういう意味じゃないわ。…そうじゃなくて、わたくしだって悔しいのよ。女だからってのけ者にされるのは。お前には理解できないだろうって、自分達だってろくに分かってもいないくせに、偉そうに言うのよ。ほんとに頭に来るわ。

 はっきり言って、兄達よりわたくしの方が成績はいいのよ。確かに一人は本当に頭がいいわ。でも、その他はたいした事がないのに、威張っているのよ。本当に腹が立つわ。」

 男子学生のびっくりした顔にロリーナは、はっとして、急に恥ずかしくなった。

「あははは、君は面白いな。」

 彼が楽しそうに笑った。笑われたのに、不思議とロリーナは腹が立たなかった。むしろ、さっきまでの敵意が消えうせ、その事の方が嬉しかった。彼の笑顔に思わず胸がドキリとしてしまう。

「…あ、あんまり笑わないで。わたくしだって、びっくりしたのよ。」

「自分でびっくりした?思ってもいない事だった?」

 ロリーナは頷いた。

「ええ。だって、こんなに不満を持っていたなんて、思わなかったんですもの。だから、この学校に入ったの。それでも、まだ、こんなに不満があったのね。」

「今までに積み重なったものが、それだけたくさんあるという事だよ。」

 大人びた口調で彼は言った。その横顔がどこかさびしそうで、ロリーナは彼の事を知りたくなった。

「あなたも、あるの?今までにいろんな苦しみがあったの?さっき、言ったわ。わたくしの父が簡単に人を殺すって。もしかして、父のせいで誰かが亡くなったの?あの、もし本当にそうなら、ごめんなさい。わたくしが謝ったからってどうにかなる訳でもないし、何もできる訳じゃないけど、本当にごめんなさい。」

 ロリーナは本当に父が彼の家族を殺したのか、もし、そうなら、父が一体、何をしているのか怖くなりながら、謝罪を口にしていた。

「君の謝罪は全然、心にひびかない。」

 彼の低くて怒りのこもった声に、ロリーナは怯えた。冷水を浴びせられたような気分になった。彼の目は冷たかった。さっき近くなった距離が、急に遠のいていく。何か言おうとしても、何を言えばいいのかも分からず、沈黙するしかなかった。

「……。」

「なぜなら、君は自分の父親が何をしているのか、全く何も分からないまま、とりあえず謝罪を口にしているだけだからだ。謝罪したいのなら、自分の父親が一体、何をしているのか、何をしたのか把握はあくしてからにしろ。」

 ロリーナは彼の言葉の重さに打ちのめされた。

 彼が後ろを向いた。このままでは行ってしまう。どうか、行かないで。お願い、いかないで…!本当に彼に謝りたかった。なぜか、彼に嫌われたくない。

「待って!」

 彼が足を止めた。

「待って、せめて、あなたに父が何をしたのか、教えて。そうでないと、きちんと謝罪できないわ。」

 ロリーナの声は震えていた。涙がこもあげてくるが、必死でなんとか言葉を出した。

「自分で調べろ。なんのためにニピ族が護衛についていると思う?」

「だって、口止めされてるわ!わたくしだって、それくらい、思いついたわ!それなのに教えてくれないのよ!父から絶対に言うなと口止めされているのよ!なんにも教えてくれないのよ!」

 まだ叫ぼうとしたロリーナの口を、彼が手でふさいだ。ロリーナは興奮していて、彼の手から逃れようと暴れた。

「しーっ、人に気づかれる。」

 耳元でささやかれ、ようやく、なんのために口を塞がれたのかを理解した。

「分かったか?」

ロリーナは頷いた。

「もう、叫ぶなよ。」

 念を押されて、ようやく手を離してもらえた。

「ごめんなさい、わたくし、興奮してしまって。今日は変だわ。…でも、本当にどうしたらいいのか、分からないの。」

「本当に努力したのか?」

 彼に静かに見つめられ、ロリーナは言葉に詰まった。

「護衛は女性か?」

 聞かれて頷く。

「そうよ、女性だわ。」

「そうしたら、彼女に自分が本気だという事を示すんだ。今までは君が興味本位で知りたがっていると思われていた。君は本気になれるか?本気で父親や兄達が何をしているか知りたいか?知って、それを受け入れる勇気はあるか?知った時、親兄弟達の誤りを正す勇気はあるか?

 もし、それができないなら、やめた方がいい。よく考えてから行動に移すんだ。それでも知りたいのなら、三日後の同じ時間にここに来い。私がどうやったらいいか教えてやる。」

 彼の目は真剣だった。ロリーナは生半可な返事はできないと感じた。

「分かったわ。三日間、よく考えてみる。どうもありがとう。」

 彼が不思議そうな顔をする。

「なぜ、礼を?」

「だって、わたくしに機会をくれたわ。わたくしが変われる機会をくれた。」

 真面目にロリーナが返事をすると、彼が微笑ほほえんだ。柔らかいその笑顔にロリーナは釘付けになった。さっきまで凍てつく冬だったのに、急に春になったような感じがした。

「悪くはないな。」

「なんのこと?」

 今の微笑が嘘のように、彼は意地悪そうにロリーナを見つめた。

「君のおつむだよ。もっと馬鹿だと思ったから。」

 あまりの言われように、ロリーナは口を開けたまま、言葉が出て来なかった。

「分かってると思うけど、この事は秘密だ。当然、誰かに見つかったら君も私も退学だ。それと、口を開けっ放しだと虫が入るぞ。」

 ロリーナは目をぱちくりさせた。からかわれている事に気が付いていない。急いで口を閉じると慌てて言いつくろった。恥ずかしさでほおが紅潮してしまう。

「…分かってるわ。あまり、わたくしを馬鹿にしないで下さる?あなただけ退学になるようにしてやるわ。」

「へえ、どうやって?」

「そ、それは…これから、考えるわ。」

 ロリーナは腹を立てながら出て行った。それでも、きちんと誰にも見られないように気を配った。彼と話をできる機会を無駄にするつもりはない。

 それでも、彼に会いたいからという理由でなく、本当に自分の父の事を知りたいのか考えてみようと思っていた。そうでないと、彼に受け入れてもらえないから。

(名前を聞かなかったわ。でも、三日後に聞けるわね。)

 そして、三日後、ロリーナは彼と話をしていた。

「わたくしは覚悟を決めたわ。父上達はわたくしにただのお嬢様として、育って欲しいのかもしれないけれど、わたくしは嫌だわ。レルスリ家の一員としてもきちんと知っておく必要があると思うの。

 そして、あなたの言ったとおり、もし、父達が間違った事をしていたら、正すべきだと思うわ。これは苦しくて辛い事かもしれないけれど、わたくしに与えられた使命だと思うの。

 だけど、あなたにも言っておくわ。あなたはわたくしを通して、レルスリ家に復讐ふくしゅうをしたいのでしょう。わたくしもレルスリ家の者よ。レルスリ家の過ちは正すべきだけど、あなたも間違った事はするべきではないわ。わたくしを傷つけて、レルスリ家の名前をおとしめるつもりなの?」

 ロリーナは三日間、必死で考えた事を話した。お互いに考えを探り合うように、二人はしばらく見つめ合った。

「確かに、君の言う通り、最初はそうしようと思った。だけど、君と話してそれはやめた。君はレルスリ家の人間だけど、正しい心を持っているから。

 だから、忠告する。もう、私に構うな。私は君を傷つけて復讐する事はやめたけど、君を利用する事はやめない。私に近づけば君は傷つく。君を通してレルスリ家に復讐するのはやめないんだから。それくらい、レルスリ家に復讐したいんだ。」

 ロリーナは激しい彼の感情が見えたような気がして、心を激しく捕まれて揺さぶられた感じがした。

「…何が、あったの?ごめんなさい、調べるわ。」

「いや、いいんだ。この間は意地悪く言ったんだから。君があまりに何も知らなくて、純粋だったから腹が立って、わざと言ったんだよ。」

 思わぬ告白に、ロリーナは驚いて彼を見つめた。

「…兄を殺された。異母兄弟だったけど、いい人だった。母が妓女の私をいつも気にかけてくれていた。父が年を取ってからの子供だったから、兄と私は親子と言っていいくらいに歳が離れていた。自分には娘しかいないからと、とても可愛がってくれて。

 本当は家に連れて行こうとしたけれど、義母に遠慮して行かない私を不憫ふびんに思ってくれた。

 それに母が可哀そうだろう。なりたくて妓女になったわけじゃないのに、子供を産んだら連れて行かれるなんて。妓女だという理由で子供を取られるなんて。」

 ロリーナは胸が苦しくなった。彼の悲しみが身に迫って来て、苦しかった。自分の知らない世界では、人がこんなに悲しんで生きている。ロリーナは恥ずかしかった。自分がいかに楽に生きているかが分かって。涙が勝手にこぼれ落ちていってしまう。彼になんと思われるのだろう。よく知りもしないで泣くなとか言われてしまうのだろうか。

「ごめんなさい。お父さんと同然に思っていた人を、わたくしの父が殺したのね。」

 ロリーナは泣きながらようやく、それだけ口にした。

「そう。濡れ衣を着せてね。私の名前はフェルス・プバンだ。プバン家の名前くらいは知っているだろう。」

 ロリーナは涙を必死で抑えて拭きつつ、頷いた。

「王室にずっと馬を収めていたわね。国王軍の指定の馬商人でしょう。でも、一昨年、父が他の商人に替えたわね。他の指定された商人と一緒に価格を相談して、不当に馬の値段を吊り上げて利益を得ていたと。」

 フェルスは頷いた。

「ああ、そうだ。だが、兄じゃない。他の奴らがやったんだ。兄はめられた。プバン家が嵌められたんだ。八大貴族に協力しないと、どうなるか見せしめにされた。兄はレルスリ家にも正当な価格で馬を売買していたからね。

 国王軍に収める馬は、軍馬に適した馬に決まっているし、王室に収める馬は最高のものに決まっているじゃないか。一体、何が不満なんだ。馬術競争でレルスリ家が莫大な賭け金を儲ける為か。

 ああ、そうだ。兄は不正は絶対にしないと断った。たった、それだけの事で兄は殺されたんだ。事故だと処理されたが、殺されたに決まっている。馬の事をよく知っている兄が、興奮している馬の背後に回って蹴られて死ぬなんてありえない。」

 ロリーナは聞きながら、一つ、に落ちない事があった。

「でも、おかしいわ。」

「何が?自分の父がそんな事をしないと?」

「そうじゃないの。父は慎重な上に計算も緻密ちみつな人よ。なんだかやる事が雑でちゃちすぎる。慎重でなければ、八大貴族の筆頭でいられないし、レルスリ家の家長にさえなれないのよ。あなた、レルスリ家を分かっていないわ。やる時は徹底的にやる。暗殺をするなら、証拠を残さないし、そうしないなら堂々とやるの。もし、仮にあなたが言った通りだったのなら、他に理由があったんだわ。お兄さんはきっと、何か知ってはいけない事を知ってしまったのよ。」

 フェルスはロリーナを見つめた。

「どうしたんだ?この間と別人のようだ。」

「わたくし、あれから帰って護衛を説き伏せたの。そして、レルスリ家が今まで何に関わって来たか、教えるように頼んだの。

 あなたが教えられないなら、レルスリ家が関わった事が載っている新聞や本、レルスリ家の記録、先祖の日記を持ってきてと命じたわ。そしたら、山のように持って来た。

 今、順番に読んでいるけれど、一つ、見えて来た事があるの。自分達が秘密にしたい事に誰かが気が付いてしまったら、殺しているのよ。

 そして、その逆もあって、それ以外には人を利用しても、人をめて殺したりはしないの。むしろ、貴族達の争いの仲介をして、争いをなだめている感もある。それでも、あくどい事もかなりあるけれど。」

 フェルスはロリーナを穴が開くほど見つめていたが、やがて笑い出した。

「どうしたの?」

「いや、感心したんだ。さすが、天下のレルスリ家のお嬢さんだと思って。君の家族が君に隠しておこうとした理由がよく分かったよ。

 君はやると決めたら徹底的にやるんだね。だけど、本当にいいのか?私は君を自分のために、密偵にしようとしているんだ。」

 ロリーナはフェルスに近づいた。

「ええ。いいわ。あなたのために密偵になってあげる。すでに護衛のカリラを兄達の密会に行くように指示してあるわ。侍女として手伝いに行けと言ってあるの。もう一人、侍女はいるから、不便はないし。」

 ロリーナはフェルスの手を取り、彼の目をのぞきこんだ。

「わたくし、レルスリ家に対抗するわ。反旗をひるがえしてやるの。それくらい、腹が立っているわ。でも、女だからそんなにはできないの。だけど、女だからできる事はある。レルスリ家に復讐していいわ。ぜひ、そうして欲しいの。」

「君は、何を言っているんだ?」

「あなたが、言った事よ。わたくし、あなたのためなら、どんなに傷ついたっていい。レルスリ家に生まれた事が、恥ずかしいの。」

 ロリーナの言おうとしている事に気づいて、フェルスは止めようとした。

「だめだ。私は君を傷つけたくない。密偵になってくれるだけでも申し訳ないのに。」

「分かったわ。その事についてはまた今度にしましょう。今はお兄さんの事について調べるわ。今度はいつ、会う事にする?」

 こうして、ロリーナはフェルスにレルスリ家の内情を教え続けた。

 密会を繰り返す間に二人の距離は縮まった。ロリーナは最初からフェルスに一目ぼれしていたし、ロリーナを利用していたフェルスもいつしか本気になっていた。そして、とうとう一線を越えたのだ。

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