想起

 嗅覚というのは強烈に記憶に結びついている。何年も前の事を鮮明に思い出せるのだが、どうにもつまらない記憶ばかりである。

 よく思い出すのが、小学生の頃、靴を洗うのに使っていた石鹸の匂いだとか、実家でほんの僅かな期間だけ使っていた入浴剤の匂いだとか、小学校の校庭の匂いがそれだ。校庭の匂いは本当によく分からない。ただそう思うだけで、その正体が古い建物なのか、雨なのか、土なのか、木の実なのか、花なのか、またはそれら全てなのか、全く分からない。

 どうせ思い出すのなら、もっと愉快な事が良いのだが、そこから連想できるのは、宿題が面倒だったとか、体育が面倒だったとか、そんなことばかりだ。

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