舞台

 幕が上がって

 一言二言喋ったのち

 耐えられなくなって走り出した

 客が居ないのを恥じたのではない

 己の声が通らないのを恥じたのでもない

 ただ 此処に居ること

 それ自体が許されざる行為と感じたのだ

 手には汗が滲んでいた

 そのせいか喉は乾いていた

 ただ 普通に

 それだけが願いだというのに

 誰も見ていなくてもいいのに

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