28話「幸せの続き」
28話「幸せの続き」
翠は、気だるさを覚えながら瞼を開けた。
すっかりと陽が登り、カーテンから光が漏れえている。もう、朝になっている。
寝ぼけながら、翠の家のベットではないのに気づき、ここはどこだろうと、周りを見る。
すると、すぐ横にはあどけない顔で寝ている色がいた。彼を見つめると、一気に昨日の事が思い出されてしまい、翠は頬を染めた。
少し痛い体に、枯れた声、お互いに裸のまま寝てしまっている。それが意味することを考え、そして昨夜の幸せな行為を思い出しては、恥ずかしくなってしまう。
けれども、彼からの告白で恋人同士になった事を思い出しては、ついついニヤけてしまう。こうやって、彼の寝顔を朝一番に見れるのは自分だけの特権なのだ。
少し彼の寝顔を眺めていようと思ったが、フッと時計が目に入る。そこには、午前10時過ぎと表示されている………。
「えっ!?ウソ………っっ!」
翠は驚きのあまり、小さく声を上げてしまう。だが、今日は仕事がある日だ。大遅刻確定に、冷や汗をなきながら、翠はベットを出ようとする。
「……何処に行くんだ?」
「あっ、冷泉様。」
翠は色に腕を掴まれ、ベットから出れなくなってしまう。彼は寝起きのウトウトした幼い表情で翠を見つめている。
「起こしてしまって、すみません。あの、仕事に遅刻してしまって……早く支度をしなきゃいけないのです………。」
「仕事………?」
「はい。なので、そのー、この手を離してくれませんか?」
「あぁ、それは………聞けないお願いだな。」
「へっ、キャッ!」
色は更に力を込めて翠を引っ張り、ベットの中に戻してしまう。そして、後ろからギュッと抱き締め始めた。
「あの、冷泉様!仕事が………。」
「あぁ、言ってなかったか…。おまえの今日の仕事は、俺との打ち合わせになってるから、出勤しなくてもいいんだ。」
「………えっ、あのどうして私が冷泉様と打ち合わせを…?それに出勤しなくていいって。」
色が話していることを全く理解出来ず、色に質問攻めにしてしまう。
どうして、彼と仕事の話をするのか、翠は誰からも何も聞いていないのだ。
「俺の会社がギリシャにオープンする事が決まった。」
耳元でそう伝えられ、あまりの出来事に彼の方を振り返って色を見つめる。
「冷泉様すごいです!おめでとうございますー!やはり、ギリシャで決めてきたのですね!」
「いや、それはたまたまなんだ。それより、もう1つ良いニュースがあるぞ。」
「なんですか?」
「ギリシャの料亭は、「one sin」が内装を手掛ける事になった。そして、日本からの「one sin」の助っ人のスタッフとして、翠が選ばれたんだ。」
色が得意気にそう言い、ニヤリと笑いながら翠を見た。
翠は驚きのあまり声を失ったまま唖然としながら、色の顔を見ているしか出来ずにいた。
「俺が「one sin」で指輪を探している時に、今度日本の店をオープンすると話しをしたら、店のスタッフが興味を持ったみたいでな。トントン拍子で決まったんだよ。それが日本のスタッフにも伝わって、翠の店の店長が、おまえを推薦したみたいだな。」
色は、「落ち着いたら俺から頼もうと思ってたが、先を越された。」と、少しだけ悔しそうにしていた。
「私がギリシャで働けるんですか?「one sin」のスタッフとして、冷泉様の仕事を手伝えるんですね。……すごく嬉しいです!冷泉様、ありがとうございます。私、頑張りますっ。」
「あぁ、期待してる。」
ベットに二人で横になりながら、嬉しい報告を聞く。そして、色に頭を撫でられて、ますますやる気が出てきた。
大好きな祖母が生まれた、憧れのギリシャ。そして、恋人になった大好きな人のために働けるのだ。
これ以上、幸せなことはないと翠は思っていた。
「なんか幸せすぎて、怖いです。一気に夢のような気分です。」
「俺の恋人になってだ。まだまだ、もっと幸せにしてやるから、覚悟しておくんだな。」
「冷泉様………。」
色の殺し文句を言われてしまい、翠は顔を真っ赤にしてしまうが、色はお構い無しに、翠の額にキスを落とした。
「岡崎店長にもお礼を言わなきゃですね。」
「この状況で、他の男の名前を出すな。」
「あ……ちょっと待ってください!あの何も着てないから、恥ずかしい、、、。」
翠は、色に優しく背中や太ももを撫でられて、ビクッと体を震わせてしまう。昨日沢山熱を与えられた体は少しでも彼から刺激を貰うとすぐに反応してしまうようだった。
「昨日、全部見たのに、恥ずかしいのか?」
「恥ずかしいですよ!!」
そう声を上げながら、翠は抵抗しようと体を動かしていると、「ぐぅーー。」と、お腹がなってしまった。少し恥ずかしくなりながら、お腹を押さえ考えてみると、昨日の昼から何も食べていなかったので、大分空腹になっているようだった。
「そういえば、昨日の夕食食べてないな。打ち合わせがてらに、何か食べに行くか。シャワー浴びてから出掛けようか。」
色にそう言われ、翠は頷いた。
一緒にシャワーを浴びるかと、誘われた翠だったが、それは恥ずかしすぎる誘いだったので、シーツにくるまりながら、一人でバスルームに向かったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます