2 装備入手

朝起きると今後の予定を考えながら朝食のパンを食べる。

南の島に移住するのは良いが、俺には農作業等の知識がないため、すぐに食糧難になる自信がある。

そのためまずは仲間を集める事にした。

幸いな事にここ札幌には有名な大学があり、獣医学部や農学部、病院まであるため人材の宝庫だ。

島で重要なのは自給自足と医療の充実だと思っている。

畑作の知識。家畜の知識。医療の知識。

どれも必要なので是非生き残っていてほしいが、難しい事もわかっている。

その大学はここから南へ3km程なので、自転車で行けば15分もあれば着くだろう。

白ワイシャツに黒ズボン、まだ肌寒いので紺色のジャケットを羽織り、バットを入れたバットケースを背中に背負いマンションの外に出る。


「ん?ゾンビが減ったような?」


気にはなったが無視し自転車置場へ向かう。

そこにあったのは俺の自慢の愛車オノダクン1号だ。

もちろんママチャリです。

俺は颯爽と愛車に跨がり大学へ向けて出発する。

最初は札幌駅へ向かう大きな道路を進んでいたのだが、事故車両が多く道が塞がっていて、ゾンビも大量にいたため脇道を進む事にした。

このまま進めば警察署があったはずだ。


「装備がほしいなあ」


バットだけだと対人に問題がある。

このゾンビに襲われなくなった世界で一番怖いのは人間だ。

いくらゾンビの能力を持とうが頭をやられればお終いなのは老人ゾンビで実証済みだ。


「とりあえず見に行ってみるか」


警察署に着くとそこは既に崩壊していた。

辺り一面にはゾンビが無数に群がっていて、敷地内どころか署内にも溢れているようだ。

自宅の周りにあまりいなかったのはこちらに移動したからだろう。

近付いてみるが気付いていないのか逃げて行かない。

ふと入口の方を見ると、最初は抵抗していたのかナイフやバット、透明な盾やヘルメット等が落ちている。

あの盾はテレビで見た事があるな。

ポリカーボネートだっけ?

拳銃ぐらいなら弾けるみたいだし一つ貰って行くか。

あらためて周りを見渡すと、ちらほらと警察服姿のゾンビが見える。

制服姿のゾンビに近付き体を調べると拳銃を持っていた。

近くに落ちていたナイフを使い拳銃の吊り紐を切り、切るのに時間はかかったが計4丁の拳銃を手に入れた。

一つを羽織っていたジャケットの内ポケットにしまい、他はその場で拾ったリュックにしまった。

ポリカーボネートの盾も落ちていた紐を使い背中に括り付ける。

ある程度装備も整ったので、今度は警察署内に入ってみる。

そこには血が巻き散った跡や、バラバラになった手足がそこら中に散らばっていた。

ゾンビに食べられたのか、腹に穴の空いた死体もあった。

人間であった頃なら吐き気をもよおす光景も、ゾンビとなった今は何の感慨も湧かない。


「ああ本当に人間じゃなくなったんだな」


誰にも聞こえないような声で呟き、少し寂しい気もしながら地獄絵図のような廊下を先に進む。

それから色々歩き部屋などを調べたが、生存者はおらず特にめぼしい物もなかったので外に出る。

拳銃保管庫もあったのだが、鍵が閉まっていたので諦めた。

あとで車を手に入れようと思いながら、リュックとバットケースをオノダクン1号のカゴに入れその場をあとにする。


装備入手。第四段階クリアだ。

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