異世界から来た娘が堪らなく可愛いんだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています

第1話 はじまり

  夢はよく見る方で、夢占いも大好き。古本屋で買った夢占いの本を朝から読んでは家族に笑われた。


 なので、こんな森の中を歩く夢も時々見たかもしれない。身体が重くて思うように走れないこともよくある夢。

 でも、こんなに疲れたっけ?

 急に耳元で聞こえた虫の羽音がリアルで、思わず叫んだ自分の声が大きくて心臓がバクバク音をたててしまった。

 なんだか分からないが嫌な予感。

朱璃は立ち止まって深呼吸をした。


「よしっ!落ち着こ。ちょっと落ち着こう」


わざと大きな声を出す。

そして、いつものように、目を覚ますことに集中。

 瞼を開けて、ほらっ思いっきり目を開けて!


「目が開いてる。いや、目が覚めない。なんで?やばくない? いや、ちょっと待て」


 目を覚ますために、両手で叩いた頬の痛さが尋常じゃない。

「痛いし」


固まる事数秒。そして朱璃は歩き出した。


何処にでもいる女子高生。

朱璃は自分の事をそう評価し、むしろなんの取り柄もないことを情けなく思っている。

しかし、頼りなげで保護欲を誘う愛らしい外見とは裏腹に中々のメンタルの持ち主であった。

自分に自信がなくネガティブ、諦めたり譲ることに慣れている朱璃は、自己防衛のためか思慮深さを捨て(ある意味鈍感になった)開き直り精神を成長させていた。


のちに、異世界で生き抜けた全ての根底はそこにあったと言っても良いだろう。


朱璃は、言いようの無い胸騒ぎを覚え自然と早足になっていた。

 とにかく、夢の中だろうが現実世界だろうが、ひとまず位置確認しようと 鬱蒼と生い茂る草木をかき分け前進すると、空を見つけた。


 そう言えば、先ほどまでは月が池に映り幻想的な月明かりだった。

池、何処に行った?

空は青い。夜じゃない。

あーー。訳が分からない。


とにかく、もっとどこか広いところに移動しようとひたすら前進するしかなかった。

 

「んぎゃっ」

 突然きた階段踏み外す感覚。次に襲ってきたのは下腹部にゾワワとくる無重力感。

ジェットコースターみたいだと思った瞬間、目の前が真っ暗になり、朱璃は意識を手放したのだった。

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