女と女、師匠と弟子!
勇者チイはタキシードスィールのいるダンジョンへと目指していた。
そんな時目に飛び込んだのは無残に破壊された街の姿が。
「あの街も壊滅させられとんか!噂では世界一栄えとる街や聞いたのに!」
チイは悔しげに歯ぎしりする。
その街まで近づいた所まで来るとキインキインと言う金属音と「やああぁ!!」と女の子が叫ぶ声が。
「良かった、誰かおるみたいや」
チイはそこまで寄ってみるが決して穏やかな状況ではなかった。
街の建物の上に梅干しの魔物が並び、腐った死体が建物に潜み、破られた巨大なノートの破片がガラスの破片となり一人の少女を取り囲んでいた。
その少女は金髪に近い茶色の巻き髪、軽装の鎧は破かれた状態で、元は綺麗な肌も所々傷をつけられ、しかし目はもう一人の少女に向けていた。
「ドル子!どういうつもりなの?街をこんな風にして挙句に私の宝の魔道書を破いたりして!」
ドル子と呼ばれたローブを着こなした少女はふふふと怪しい笑みを浮かべ、一方の少女に目を向けていた。
「簡単なことよエミリー!私は心底貴女か嫌いだったの!最悪な性格なのにみんなにチヤホヤされて」
そう言われるとエミリーと呼ばれた少女は「たしかに私は性格悪いわ、でもやってる貴女も貴女でしょう?」
とドル子を睨んだ。
「とどめよ!やっちまいなさい!!」
ドル子は梅干しの魔物、腐った死体、ガラスの破片をエミリーに差し向けた。
四方八方から襲ってくる魔物の群れ。
エミリーは覚悟をした。
そんな時一人の影がエミリーの前に出て庇う。
「おどれら…揃いも揃って一人のか弱い乙女に向かって何しとんねん!!」
そして魔物は中央から弾かれ、地面に倒れ臥す。
「な、何者!?」
ドル子の目はエミリーを庇った少女に留まった。
「ウチは浪速少女、いや真の勇者山本チイじゃあ!」
バアアァンと颯爽と現れる浪速の美少女勇者山本チイ!
「くそう!また美少女!私はエミリーやアンタのような美少女が大嫌いなのよ!やっつけてやる!!」
ドル子は尚も梅干し、死体、破片を差し向けた。
「くっ、くそっ!」
流石のチイも沢山襲いかかってくる魔物に苦戦する。
「私も戦いますわ!」
チイに守られていたエミリーも立ち上がり魔物と戦う。
「おおきにな姉ちゃんも強いなあ!」
「対象はあのローブの女、気を抜かないで!」
多少無愛想ではあったが戦況は戦況なので「はいはい」と流し魔物を平らげていった。
「さあ魔物は全滅したわ、降参するならいまよ!」
エミリーとチイはドル子に剣を向けた。
するとドル子は「ごめんなさい!ごめんなさい!」と泣き出した。
「泣いて済むと思ったら…」
エミリーがなおも向かおうとするとチイが手を広げて制止した。
「何か事情があるんやろ?言うてみい?」
チイは弱々しく泣き崩れるドル子の小さな肩に手をやり、優しく語りかける。
「私…タキシードスィールにそそのかされて…」
「タキシードスィールやて!?」
チイが狼狽する。
「タキシードスィールてあの…」
エミリーもその名前に聞き覚えがあるようだった。
「知っとるんか?」
「ええ、奴はジャバウォックでは無いかと噂されているわ…」
エミリーは憎しみを含んだ目で口を震わせて語る。
「私は力を与えられてエミリーは悪い女だからやっつけろと唆されたの、うえーん!」
そんなドル子をチイが慰める。
「そんな泣くな!タキシードスィール言う奴はウチが更正させたるけん!」
そしてチイは立ち上がり、向こう側に見える黒い霧に包まれた山を見据えた。
「私も戦いますわ!街やドル子をこんなにした奴を私は許してはおけない!」
エミリーが向かおうとするチイに宣言する。
「アンタがおると心強いわ、ほな行こうか!」
チイ、エミリーの二人は暗黒のオーラに包まれた山に向かって歩いた。
チイ、エミリーは魔物と戦いながら経験を積み、危機を乗り越え、そしてついに最後のダンジョンに足を踏み入れた。
タキシードスィール、いやノフィン!アンタが何を企んどるか知らんけどお前は根は悪い奴でもジャバウォックでも無いとひと目で見てわかったんや!そんな事をしてまうのも事情があるんやろ?浪速少女の意地にかけてお前を更正させたる!
そしてもうじきタキシードスィールの元に向かおうと言うところにチイにとって見覚えのある少女が立ちはだかった。
「ナリス!!生きとったんか!!」
チイは洞窟が崩れた時に下敷きになったかと思われたナリスに明るい声を上げる。
「でもこの子、様子がおかしいですわ…」
一方のエミリーは怪訝な様子でナリスを見る。
「ジャバウォック!貴女をそこで始末する!!」
ナリスが突然剣を抜いてチイに斬りかかってきた。
キイン!
チイはナリスの剣を受け止める。
「ジャバウォック?何のことか知らんけどいつのまにか腕を上げたな!」
チイは弟子の成長を喜ぶようにナリスに語る。
「うるさい!」
ナリスは剣から殺気を放ちチイを弾く。
「私だって可愛いのに!私が対象にされずゴミ捨て場に捨てられて貴女がゴブリンに唆られるなんて我慢出来ない!!」
(この子も嫉妬してるの…?)
エミリーはやや呆れた表情でナリスを見る。
「そう言うことか…悔しいなら女を磨け!これだけ強くなったんやからアンタやって出来る!」
「うるさい!イオデイン!!」
ナリスは高等魔法とされるイオデインを放った。
*…イオデインは空気中に大爆発を起こしモンスターを一掃させる魔法。
これを食らったものはもはや息の根はないだろう(*…RPGの取り扱い説明書より)
「そうやその意気や、この前の下品な技より断然良いで!」
チイは盾でナリスの魔法を防ぐ。
「でやああぁ!!!」
ナリスが斬りかかってくる。
「私も助太刀します…」
エミリーはチイを助けようとしたがチイはそれを拒否した。
「これは師匠と弟子の戦い!アンタはそこでウチらの戦いを見とり!!」
チイは鍔迫り合いをする中エミリーに放った。
チイはナリスを前に押し出し、ナリスは尻餅をつく。
「アンタの強さはこんなもんで無いやろ!もっと本腰入れて斬りかかってこい!!」
「ち、ちくしょうううぅ!!!」
ナリスは悔し紛れにチイに斬りかかっていった。
ゼエハア…互いは体力と集中力を使い全身から汗が滝のように滴り息を荒げている。
(このままやいけん!ナリスは何者かに操られとる!それとその圧倒的なパワーはナリスのもんやない!何かがナリスにパワーを与えとるんや!)
チイは気を探った。
するとナリスの持っている剣がナリスに力を与えているのがチイの目に見えた。
(ナリスの持っている剣はヴォーパルソード!真の勇者にしか持つ事は許されないとされる!ナリス!そこまでして勇者になりたかったのか!!)
チイは気を高める。
「ナリス!今お前にかかっとる呪いを解いたる!ナニワリングバースト!!」
ナニワリングバーストとは浪速の気を高めて相手にぶつける剣技である。
それは相手に直接ダメージは与えないが会心の気を送る事によって相手の洗脳を解く事が出来る。
「ええぇい!!」
「ふおぉん!!」
ナリスの手から剣が離された。
ナリスは地面に倒れ臥す。
「やりましたわ!」
エミリーは喜ぶがナリスの方は苦しみもがいていた。
「ぐわああああぁ!!」
苦しみもがき大地にのたうち回るナリス。
大地にナリスの脂汗が塗りたくられる。
「どうしたんですの!?」
「ナリスと戦っているうちにわかった事がある…この子の体内に時限爆弾が仕掛けられとる!」
「なんですって!?何とかしないと!!」
「ここは私にお任せください!」
すると銀髪の少女が現れた。
「私はアンジェリカ、この者に仕掛けられている爆弾を取り除いて見せましょう!オールヒール!!」
するとナリスの体内からあるものが飛び出した。
それは丸っこいが機械のような物体だった。
「このままやといけん!」とチイはナリスの体液がべっとりと付いた時限爆弾を握りそれを空高くまで飛ばした。
その時限爆弾は遠くに放り投げられ、光ったかと思うと猛烈な光を発し、その後大爆発を起こした。
「ありがとうあんさんのお陰で助かったわ」
「いえ、世界を救う旅をしてるので…」
「おおいアンジェリカ!」
向こうからアンジェリカを呼ぶ声が。
「では私はそろそろ行きます、西村木花様の女神の娘という作品の中に私がいますのでいつでも会いに来てください♪」
アンジェリカはチイ達にそう告げ、仲間達の所に戻っていった。
「旅は道連れ世は情け、旅しよったら色んな出会いがあるもんやな、次はラストバトルや!」
チイはエミリーを引き連れて最後の戦いへと身を投じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます