第68話 忍者4、日本の三大妖怪が現れる!?

「それでは皇室、プリンセス奏様の入場です。」

 パチパチと大きな拍手で奏は迎えられる。財団法人のイベントに招待されてやってきたのだ。イベント会場は、皇室の娘、奏の登場にとても盛り上がる。

「どうも。皇室です。どうも。皇室です。」

 奏は、皇室の娘として小さいな頃から皇室の行事に参加しているので、イベントでの可憐な振る舞いは慣れたものである。営業スマイルで手を振って、一般大衆に答えている。

「さすが奏姫だ。人々から、こんなにも愛されているなんて。殿や父上や爺が知ったら、大粒の涙を流すでござる。うるうる。」

 睦月も忍者として、奏の式典を陰から見守っていた。未来の奏姫が人々の慕われているので感動して涙が出てくる。

「あれ? 雨漏れだ。」

「あれ? 外は雨だっただろうか?」

 睦月が会場の天井裏に隠れている性である。会場のお客様は、睦月の涙が当たり、天気や会場を心配している。

「本日の本日の仮装大賞は実に面白かったです。これからも、皆様が健やかに健康に仮装を楽しんでいくことを心よりお祈り申し上げます。」

 奏姫は、皇室としてイベントの最後に、丁寧な挨拶を申し上げている。

「キャアアアアアアー!?」

 その時だった。会場のお客さんたちから悲鳴声が聞こえる。

「何どうしたの!?」

「何事でござるか!?」

 奏姫と睦月は、悲鳴の方を注目する。

「これが現代日本か? 昔の日本の方が良かった。」

「そうかしら? 私は、この世界の日本も好きよ。煌びやかで。」

「二人とも、本題を忘れるなよ。」

 2階の客席に3人の妖怪が現れた。

「何者でござるか!?」

「俺は酒呑童子。」

「私は妖狐。」

「私は大嶽丸。」

「我らは、偉大なる鬼妖神に仕えし、日本の三大妖怪だ!」

 現れたのは、酒呑童子(鬼)、玉藻前(妖狐・九尾の狐)、大嶽丸(鬼神)の日本の三大妖怪たちだった。

「に、日本の三大妖怪!?」

 睦月は、強大な妖気を放つ3匹の妖怪に恐怖する。

「おまえたちを食いにきた。未来の人間は美味しそうに太っているな。」

「酒呑童子、人間を食べる前に仕事をしなよ。私たちは鬼妖神様の命令で、姫を奪いに来たんだから。」

「さっさと姫をさらって帰るぞ。」

 三大妖怪の目的は、現代の姫、奏を誘拐することだった。

「待てい! この悪役妖怪ども! おまえたちの相手は、この睦月がするでござる!」

 三大妖怪の前に忍者の睦月が立ちふさがる。

「この時代にも忍者がいるんだな。お前も食べてやろうか?」

「ちょいとお待ち。あいつは、私たちを封印から解いてくれた、ありがたい忍者だよ。」

「ただのへっぽこ忍者に何ができるというのだ。」

 三大妖怪の妖力は絶大で、たかが忍者1人など気にする必要もなかった。

「睦月ちゃん、どういうこと? あいつらの封印を解いたって?」

 奏は、直感的に妖怪が現れたのは睦月の性だと感じ取った。

「誤解でござる!? 私は人助けで、女の子についていっただけでござる!?」

 睦月は、必死に弁明する。

「へっぽこ」

「そ、そんな!? 姫まで!?」

 奏は、睦月に冷たく言い放つ。

「でも睦月ちゃんらしいわ。悪い妖怪に騙されたのね。人を騙す人より、人に騙される睦月ちゃんの方が好きよ。ニコッ。」

「姫!? さすが奏姫でござる! よく睦月のことを分かってくれているでござる。」

 睦月と奏は、目と目を見つめあい、お互いに分かり合うのである。

「こい! 妖怪たち! おまえたちなんかに奏姫は渡さないでござる! 由緒正しき忍者の家柄、旧暦家の一人娘! 睦月が、お相手仕る!」

 睦月は、奏姫との友情を確かめ合い、今まで以上に姫を守るという強い意志が芽生える。

「がんばって! 睦月ちゃん!」

 奏も睦月が日本の三大妖怪と戦うことを応援する

「面白い。忍者から食べてやる! 伸びろ! 俺の腕!」

 酒呑童子は、腕を伸ばして睦月を襲おうとする。

「そうはいくものか! 忍法! 上半期分身の術!」

 睦月は、忍術の構えをして、自分の分身を複数出すのであった。

「如月です。奏姫様、私は睦月のように、へっぽこ忍者ではありません。忍法! 氷壁!」

 如月は、分厚い氷の壁を作り出す。

「なに!?」

 酒呑童子の伸びた腕は氷の壁に防がれた。

「ほ~い! 弥生です。奏姫様、よろしくお願いいたします。 忍法! いきなり太陽光線!」

 弥生は、三大妖怪たちの目の前に眩しい光を放つ。

「ま、眩しい!?」

 玉藻前は、いきなり太陽のような明るい光に目を覆う。

「ジャジャジャジャーン! 卯月です。奏姫様、私は酔っ払いのフリをしているだけです。忍法! 桜吹雪・拘束!」

 卯月は、きれいな桜吹雪を妖怪の体にまとわせて動きを抑えようとする。

「きれいな桜だ。だが、こんなものでは私たちを抑えることはできないぞ。」

 大嶽丸は、桜吹雪に全身を覆われても、まったく動じない。

「爽やかっていいな! 皐月です。奏姫様、私とデートしましょう! 忍法! 樹木可!」

 皐月は、妖怪の足元から木の根っこを絡ませていく。

「こんなもの俺に効くか! うおおおおおー!」

 酒呑童子は、妖気を高めて桜と木を吹き飛ばす。

「燃え尽きるがいい。青い炎、狐火。」

 玉藻前は、狐火で桜と木を燃やし尽くす。

「こんな幻術まがいの術、我々には通じないぞ。」

 大嶽丸は、桜の花弁を散らし、木を枯れさす。

「ちょっと湿ってますけど、私のことを嫌いにならないで。水無月です。奏姫様、濡れたらごめんなさいね。忍法! カビ塗れ!」

 水無月は、カビを三大妖怪たちにまき散らしていく。

「汚い!? 男の俺より臭い!?」

「気持ち悪い!? 早くお風呂に入って落とさなくっちゃ!?」

「今日の所は見逃してやろう! 覚えていろよ!」

 そう言って、三大妖怪たちは消えていった。

「恐るべし!? 三大妖怪たち!?」

 睦月は、今後の戦いが激しいものになると、新たに覚悟をするのであった。

「そんな奴らの封印を解いた睦月が怖い。」

「へっぽこ忍者。」

「それでも我々の本体か?」

 分身たちは、睦月のことをボロカスに言う。

「ガーン。おまえたち、本当に私の分身なのか? 分身だったら、もっと本体に優しくして欲しいでござる。シュン。」

 睦月は、分身たちにボロクソに言われて悲しむ。

「何だったのかしら!?」

「さっきの妖怪たちはなんなの!?」

「ステージにいる、へっぽこ忍者は何者なの!?」

 会場のお客さんたちが一連の事態にザワザワし始めた。

「今のは天皇家による、日本の伝統文化の忍者による仮装ショーでした。」

 奏は、ザワツク会場のお客たちを鎮めるためにとっさに嘘をついた。

「どうも! 忍者の睦月です! アッハッハッハー!」 

 睦月たちは手をつないで6人でお辞儀をする。

「面白かったぞ!」

「最高! 忍者ショー!」

 会場のお客たちは、スタンディングオベーションで睦月たちの忍者ショーを称えた。

「これで私のハリウッドデビューが近づいたな。ウッシッシ。」

 汚い笑顔で笑う睦月。アメリカに行けば行ったで、欧米妖怪との戦いが待っているのだった。

「睦月ちゃん、その前に妖怪、残り106匹を倒していってよね。」

 奏は、睦月に念を押すことを忘れない。

「忍者の睦月! ただいま参上!」

 この物語は、へっぽこ忍者の睦月の心温まる物語である。

 つづく。

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