思案
メモリアホールのマルティネスのオフィスにジョシュやJP達、それとジョナが各自椅子を並べて座って作戦会議を開いていた。
「なー、何で此処でやんの?
オフィスと言っても面会者3人も入れば一杯な所に十数人が入って居れば狭苦しくて仕方がない。マルティネスがボヤくとホセが弄る
「お前んとこのボスの部屋はかなり広いが盗聴器やカメラがわんさか仕掛けられている。今、それを全部取っ払うのは難しい。だが、この部屋までつける程お前はエラクねぇし、そもそも大した仕事はしていないからな」
「うるせぇよホセ、とっとと作戦練って出て行ってくれ」
正論過ぎて言い返せずにマルティネスは不貞腐れたように先に進めるように急かす。
「それではホセとジョシュ、知りえた事を教えてくれ。それとジョナ現在入手した情報も頼む」
くそ狭い部屋でイラっとしながらが良くわかるJPの司会で会議は進む……島の人々や環境、目標に在留戦力……ホセやジョシュの見立てとそこから導き出される推測で報告されホワイトボードにジュリアが書き込んで行く。
「てなわけで、要注意は断罪隊と御付きの猟犬……ぐらいか?」
ホセが隣のジョシュに思いつくことが無いか問いただすと反対側のスタンが手を上げて告げる
「いーや、それだけではないようだ……うちのエージェントが興味深い情報を持って来たんだよ」
そう切り出すとスタンは此処に到着して方針が決まり、仕入れ担当のジル・トレイシーに帰りの船を回してもらうように頼んだ際、アンソニーに対する売掛金の話になった。
「当然支払うようにと
「ほーん? あの奇妙なお城に使ったんではないのか?」
興味深げにジョシュが尋ねると待ってましたと言わんばかりにスタンが話を続ける。
それは地下を掘り進む掘削マシンに耐圧試験と強度、剛性を兼ね備えた建材に数十機に及ぶビル向けのエレベーター、リフトの類、総額は数百億はくだらない
「金持ちの道楽にしては規模がデカ過ぎるな……そしてそれらを内包する施設は
JPがヤレヤレと疲れた目を押さえながら指摘すれば、ホセが疑問を口にする。
「しかしまぁ、ジェルマンの承認の上でやってるのかねぇ?」
「知らないからモメたんだよ。それも
スタンが吐き捨てるように答えながら紙コップのインスタントコーヒーを口にする。
「了解した。後で教授かブースさんに連絡して調べて貰おう……しかし……秘密基地かなんかあるのかねぇ」
スタンの呟きを受け、ジョシュが調査を頼もうとスマホを取り出し連絡をしだす。
「十中八九な、ただし、正確な場所や潜入口はほぼ不明だが、分かってるのは1か所だけだ……」
ホセが立ち上がると地図の一点、シェルターアイランドのアンソニーの邸宅を差した。
「例の猟犬が番犬として鎮座するここが一番怪しい……だが、手を出すとめっちゃめんどくせぇ、とにかくマッキンタイアの留守を狙うとして……まず邸宅で猟犬とバトル確定、情報のない地下施設のドンパチが待ってる……」
「時間が経てばそのマッキンタイアも戻って来る。……如何にして猟犬を外して地下に秘密裏に入り込むか? だね」
ホセの想定に付け出ししつつジョシュが作戦の概案を口にしたのをJPがまとめる。
「手順としてはこんな感じだ、断罪隊の出動を確認し食料強奪、強奪への追手を確認した後に邸宅へ潜入し地下への道を探して降下だ」
「帰り用の足を用意しとくかな……おい、エディ」
「なんすか?」
「適当なボートか船用意してあそこの埠頭に付けて来い。それでバックレる」
「
そこで机の上のスマホのバイブが鳴り、ギョッとした顔でマルティネスが取る。全員がヤレヤレとした顔で溜息を吐くとその後驚きに変わる。
「
スマホを傾けスピーカーモードにする隣に設置されたAIアシスタントが単語を拾いスピーカーを起動する……
「初めましての人もいるかもしれん、私は元アメリカ吸血鬼評議会、中央執政官筆頭秘書官・エリクソンブースだ……」
「とりあえず、全員顔見知りですよ。ブースさん」
アンナがクスっと笑いながら答える
「ああ、そうか、なら話は早い。先頃、メイン州避難所連盟とバートリーグループである種の作戦契約が結ばれてね。ニューヨークの避難民数万人を脱出させる作戦を始める事になったんだよ」
「「「「なにっ!!」」」」
話が急すぎてジョシュ達もJP達もスタン達も一斉に驚き、声をそろえる。そんな無茶苦茶な作戦、現場の人間達にとって笑い事ではなかった。
「まぁ、落ち着いて、今ゲオルグ所長達が教会の後ろのZを片っ端から解放した後、そちらに合流する。それと
「帳尻合わせるって……無茶言いよる」
ボソッとシュテフィンが文句を言うが、その見返りをエリクソンは伝える
「代わりに本土の5~6エリアの人類サイドへの奪還と維持するための資材、兵力の提供を無期限、無制限で回してくれるそうだ……」
「見返りは魅力的だぁね……そんでブースさん、アンソニーの本宅地下の施設について聞いたことある?」
ジョシュが単刀直入にエリクソンに尋ねると笑い声の後
「先程、メール送っただろ? それでエメが教えてくれたよ……私も機材が搬入されたのは知っていたが、行先は分からん……ん? ちょっと待て」
エリクソンが慌てると声の主が若い女性の張りのある声に変わる。
「ハイ、ジョシュ、シュテ、まだ生きてる?」
「エメ! あんたらのおかげで俺ら生き延びさせて貰ってるよ」
破顔一笑してジョシュが答えるとシュテフィンも答える。
「ありがとう!
「ふふっ、装備開発部一同に伝えておくわ。それでね、連絡貰って早速ここでデータ捌くって見たらそれらしきものがあったわ……資材関係をざっと見る限り、推定直径500m、高さ40m程度のドーム型の地下施設が作れるわね」
その情報を聞いて全員が微妙な空気を出す。マジであるんだと……
「場所等や詳細な情報は?」
少しでも情報が欲しいジョシュが尋ねるとエメが嗜める。
「まだ、焦らないの、今からデータコピーして所員に分析させるわ」
「お願いします」
「よし、とりあえず使えそうな船と其の配置を調査してみよう。場合によっては食料強奪も無視して構わない……情報のやりとりと不審な連中が居たら報告してくれ、以上だ」
最後にジョナが閉めると全員、せまっ苦しい部屋から我先に出て行った。
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