第8話 魔法祭に向けて
「じゃあ気を取り直して、1階に行くぞ!」
これだけ荒れた雰囲気でも周りを明るくしようとする振る舞い。それがみんなが稜に引き付けられる理由の一つであろう。
「ロウソク?」
ベアトリクスがつぶやいた。勇者系統のクラスや廊下には燭台がかけられていた。現在では科学技術も進歩していて、REDライトだってある。
「あぁ、勇者系統には蝋燭を使う魔法も多いからな。ベアちゃんは魔王系統なのか?」
「あ、ハイ。ですが蝋燭を使う魔法でしたら魔法実験で使われるアルコールランプなどがあるじゃないでスカ。」
「んー、うちの学校ってほら、あくまで中立的な場所じゃん?片方に寄った人がたまにうちを狙いに来るんだ。そうなるとルーンなんて書いてる暇がない緊急の事態に備えて蝋燭が置いてあるんだ。」
そう、必ずしも呪文においてルーン文字が必要ではないのだ。限定されたものにもなるが、詠唱魔法が使えない人でも詠唱と道具によって魔法を撃つことが出来る。四大元素などがそうだ。
「生徒でも対抗できるようにということでスカ……。」
「そうだな。」
「改めて、ここは学科集会などで使われるホールになっているな。ここをまっすぐ行くと練習場や職員室、特別棟にもつながっているな。ざっとこんなところか?」
「いろいろありがとうございまシタ。早く学校の内容を覚えられるよう努力しマス。」
「そんな無理に覚える必要ないぞ、俺だって使う場所しか覚えてないし。」
「え!?そうなんでスカ!?」
「慧、お前はベアトリクスちゃんを見習ってもう少し覚えろよ……。」
「善処するよ。」
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あれから2週間ほどがたった。
「本日から本格的に魔法祭に向けて訓練をしてもらいます。皆さんには上級生と組んで練習をしてもらいます。」
周りから、落胆の声や心配の声が上がった。妥当であろう、魔法祭は実力に差が開かないよう、学年ごとに分かれて行うのだ。何より1年生が3年生を倒してしまい、メンツが丸つぶれということが起きたということもあったためだ。
「では読み上げた人から順に個人戦とタッグ戦に分かれてください。」
先週、俺たちにはどちらの試合に出たいかアンケートが出された。当然俺は個人戦を選択した。あいつの隣にいた下っ端らしきやつが俺に伝言を伝えたためだ。当然ここで逃げれば負けとなる。
「俺の相手は……。ん?」
見たことあるような顔がいた。確か……
「君は……慧君……だっけ?」
「はい、佐伯先輩も個人戦ですか?」
佐伯 遥
3年の寡黙な女性の先輩で書記を担当している。自分と同じタイプだから会話が弾まなくて苦手だ。
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