お皿の運搬
ツアレはアルベドとシャルティアに別れを告げ、ペストーニャが待っているキッチンへ急ぐ。
「アルベド様とシャルティア様の話を聞いていたら長くなってしまった。急いで戻らなきゃ・・・・」
ツアレは犬柄の皿とコップを4人分、籠に入れて歩く。
そして、アルベドとシャルティアはツアレがいなくなると、「下等生物は気持ち悪いわね・・・だけどあの人間なら少しは話せるかもしれないわね・・・」と、人間の気持ち悪さについて話していた。
「ハムスケさんのおかげで早く到着できたけど、帰りはこの重い皿だと時間が掛かりそう・・・ふう・・・」
よいしょよいしょと、ツアレは進む。
こんなに重いのなら、台車を借りればよかったと後悔する。
でも、誰に言えば借りられるのか分からないし、モンスターばかりのナザリック地下大墳墓内に「台車」という便利な人間向けの道具があるかもわからない。
(セバス様に相談したいことがもう一つ増えたなあ~ふう・・・)
人間が一人だけというのは楽だし安心かと思ったが、いなければいないで大変なことが意外と多いなと、しみじみ今思う。
ここには、人間にとって当たり前の道具や考えがないので、その都度ツアレがセバスに相談しないといけないことになる。
細かいことで何回も忙しいセバスに相談するのは、気が引けるのでペストーニャにどうしたら良いかをツアレは、この後のお茶会で話すことにした。
(それにしても重い・・・手が赤くなっちゃった・・)
ツアレはたびたび休憩をしながら、キッチンへ進む。
あと少しでキッチンへ到着するころには、キッチンの入り口の前でペストーニャが心配そうに右へ左へ行ったり来たりしていた。
「ツアレ、大丈夫かしら~誰かに絡まれたり、迷子になってないかしら・・・心配だワン」
ペストーニャが探しに行こうとしたら、メイド服のツアレの姿が見えた。
「あ、ツアレ~!!!大丈夫かワン~!?」
ペストーニャがツアレのもとへ駆け寄ると、ツアレが少し泣きそうな表情だった。
「ペストーニャ様、遅れてしまい申し訳ございませんでした」
「いいのよ~気にしないでワン。取りに行けないからお願いした私が悪かったワン・・・」
シュンとするペストーニャ。
そして、ツアレの赤い手の平を見たペストーニャは心配をする。
「あら!ツアレ!手が赤いけど、大丈夫かワン?痛くないワン?」
「大丈夫です、ペストーニャ様。少し重かったので遅くなりました」
「見ていて辛いので、治癒魔法掛けても良いかワン?」
「え、そんな、私になんて・・・そんなお気遣いは・・・」とアワアワするツアレ。
ツアレの手のひらが優しい光に包まれると、あっという間に今までにつけた手の傷がなくなっていく。
「さて、手の傷も無くなったことだし、お茶会にしましょうワン」
「はい!ペストーニャ様の紅茶は美味しいので楽しみにしてました~!!!プジングも早く食べたいです~!!!」
二人はキッチンへ入ると、中ではセバスが待っていた。
「お皿運びご苦労様でした、ツアレ。一緒にお茶会に参加してもよろしいでしょうか?」
「あ、ぜ、是非!!お願いします」
ツアレは頑張ってお皿を運んだ甲斐があるな~と嬉しくなった。
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