人間は優しく使用しましょう。

「ええと、備蓄倉庫ってこっちだったっけ・・・」

ツアレはメイド服にエプロン姿のままで、通路を歩く。

そして片手にはペストーニャが書いた簡単なメモを持っていた。



「地図を描いて頂いたのだけれども、私まだこの辺詳しくないからここで合ってるのかな・・・」


時々すれ違う魔物にびっくりしつつも、ツアレは目的の備蓄倉庫に進んでいく(たぶん)


「あ、こんにちは~」


ツアレの後ろからとても可愛らしい声が聞こえてきた。

振り向くとそこには、杖に赤い液体が滴っているマーレがいた。


「お疲れ様です、マーレ様。私に何か御用でしょうか?」

(あの赤い液体は何だろう・・・血じゃないよね??)



ツアレはマーレに声を掛けられたのが初めてだったので、とても驚いたが表情には出さないように冷静に対応した。


「えっと・・別にあなたには用は無いのですが・・・アインズ様よりナザリック地下大墳墓内の人間に優しく使用・・・あ、違った・・・


(優しくしよう月間)であるとのご意向を伺ったので・・えっと・・ちょうど良いところに・・・人間がいたから声を掛けてみました・・・ひい~」


マーレの声と言い方は優しいのだが聞いた感じ、冷たい印象を受ける。



「ああ、そうでしたか・・マーレ様、お気遣いありがとうございます」


「何か・・・あなたは、ぼ、ぼくに優しくして・・・欲しいことはありますか?ちょっと誘拐とか調教は・・・ぼくは苦手なので・・・

それ以外なら・・・痛めつけるのとかは怖くて・・・」


杖に謎の赤い血のような液体が滴ってる様子とは相反するマーレの話である。





「ええと、マーレ様は備蓄倉庫への道順はご存じでしょうか?私、そちらに用があったのですが、道に迷ってしまって・・・もしご存じでしたら教えて頂けると大変助かります」

話終わると、ぺこっとお辞儀をしたツアレ。


「・・・・あ、それならぼくにでも出来そうなお願いですね。良かった~。備蓄倉庫へは魔獣に乗っていけばすぐですよ~。あ、でもアウラおねえちゃんが人間の匂いがつくと嫌がるかな・・・う~ん・・・どうしよう・・・」


「あ、マーレ様!そんなにお気遣いして頂かなくても大丈夫です」


「う~ん・・・まあ、洗えば・・・うん。それで、ぼ、ぼく上手く話すの・・・苦手だし・・・あ!ハムスケなら・・・」

ツアレの言葉が聞こえてないのか、ずっとぶつぶつ呟くマーレ。


そして、マーレはツアレを魔獣に乗せることをやめて、ハムスケに乗せることを選んだ。

「お姉ちゃんの魔獣にはまだ人間は乗せられないので・・・ありがとうございます・・・ハムスケ・・・よ、よろしくお願いします~」


「では、マーレ殿行ってくるでござるよ。それがしの美味しいご飯があるところでござるね!ツアレ殿、しっかり掴まってて下さいでござる」


「は、はい~。よろしくお願いしますね!ハムスケさん!」

内心もふもふに癒されるツアレ。


「出発でござる~」

「きゃああああああああ~」


ハムスケは全速力で、マーレの前を駆け抜けた。


それを見たマーレは呟く。

「あ・・・これでもう・・・アインズ様のご意向に沿ったことになった・・・と思うんだけど・・・お姉ちゃんに後で聞いてみよう・・・。人間は弱いからすでに話せない状態で出会うことが多かったのだけど、しゃべる人間もたまには良いかもしれないです~」

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