第97話**短編**『夏の日の朝』

 彼が眠るベッドの傍らで読みかけの本を開く

 タオルケットに包まる彼の横顔は少年のようだ。


 初めて二人で迎えた朝を思い出す

『あの日のことを覚えてる?』

 まだ眠る彼に小さく問いかける


 あれから何度も一緒に朝を迎えているけれど

 愛おしさは変わらない

 のだと気づく。


 開いた本の中から小さなメモが舞い落ちる

 この本は古本屋で買ったものなので以前の持ち主のものなのだろうか?


 渡すはずの言葉なのか

 渡されたものなのかわからないこのメモ

 


『君がすきなんだ、ずっと前から…』


 この言葉は誰かに当てたものなのかわからないけれど


 切なさは伝わってくる



『おはよう』とやっと目覚めた恋人くん


『きっと伝わってるよね』


『えっ?なんの話?』


『ううん何でもないよ、おはよう』


 私たちの1日が始まる





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