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「萌。本当に部活でるんだ」
硯が言う。
「うん。できるだけ、一応」萌は言う。
「……まあ、誘ったのは私だし、萌と一緒に部活できて嬉しんだけどさ、どうして急に、そんなに積極的にオカルト研究会の部活に出る気になったの? 今日も、さっきは帰るって言っていたのに?」
「うーん」
萌は考える。
別に深い理由があったわけではない。でも、一人で下駄箱のところで靴を履き替えようとしていたときに、ふと、このまま帰っても、とくにすることもないし、最初くらいはオカルト研究会にちゃんと出てみようかな? と萌は思っただけだった。
オカルト研究会のみんなはいい人たちばかりだったし、雰囲気もすごくよかった。(オカルト的な雰囲気はまあ、変だとは思うけど、なんだかとても居心地がよかったのだ)
それに硯もいるし、せっかく誘ってもらったし、朝日奈くんも、それに葉摘ちゃんも、……それから新谷くんも、なんだか、私がオカルト研究会に入部することを喜んでくれているみたいだし、だから、オカルト研究会にちょっとだけ顔を出してみようと萌は思ったのだった。
「別に深い理由はないよ」萌は言う。
「萌って、なんだか、たまにそういうことあるよね」なんだか呆れた顔をして硯が言った。
「まあ、嬉しいんだけどさ」
「流れがいいんだよ。きっと、早川さんは、この部室に流れるいい流れに誘われて、オカ研の部活動に出てみようと思ったんだよ。ね? 早川さん」
朝日奈くんの言葉に萌は、「もしかしたら、そうなのかもしれません」と答えた。硯は「別に朝日奈くんの話に付き合わなくてもいいよ」と言ったけど、以外と萌は、朝日奈くんの言う、いい流れというものが、案外本当に萌をこの場所に導いたのではないか、と今では少し、思うようになっていた。(案外、私はこういうオカルト的、スピリチュアル的なものによくはまってしまう、性格なのかもしれない、と萌は思った)
「じゃあ、部活動を始めようか。プリント配るからちょっと待ってね」
そう言って朝日奈くんは自分のカバンの中からごそごそと、なにやら白い紙を数枚取り出すと、それをみんなの前に一枚ずつ配って行った。
朝日奈くんが、そのプリントを配っている間に、萌は、「野田さん。今日はなに読んでいるの?」と葉摘に聞いてみた。
すると葉摘は「これです」と言って、本を閉じて、その表紙を萌に見せてくれた。
そこには『ノルウェイの森』の文字があった。上下巻の、ノルウェイの森(上)巻の赤い本だ。
どうやら葉摘は村上春樹さんが好きなようだった。なのでそのことを聞いてみると、「そうです」となぜか葉摘は、少し恥ずかしそうに顔を赤く染めながら、萌に向かって、そう言った。
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