VS 九十階層②
相手を視線だけで殺せてしまいそうな、鋭い目つきに鋭利な牙。そして身体を覆う鱗は、七色に輝いていて、その姿は、まさにこの海の主。
「マジかよ…コイツを二人で相手しなきゃいけないのかよ…」
「ギャァァァァア!!!」
ヨルムンガンドのまるで、心臓が鷲掴みされたような感覚になる咆哮が、戦いの合図となったのだった。
先手を取ったのは、ヨルムンガンドだった。
開いたままのヨルムンガンドの口から、強烈な魔力が収束しはじめた。
「っ!!…何か仕掛けて来るぞ!」
「……!!」
次の瞬間―――。
収束した魔力は一筋の光線となり、俺たちに襲い掛かってきた。
それに対して俺は、《第一階位魔術》【フィジカルブースト】で身体を強化し、強化された脚力で回避しようと試みるが―――。
「ゔがぁぁあ!」
僅か数秒だけ間に合わなかった所為で、完全に回避する事は叶わず、右腕から先が光線に巻き込まれて無くなっていた。
「主人!!」
幸い傷口は光線で焼かれて塞がれており、大量に出血する事はなかった。
「ぐっ…だい…じょうぶ…だ!…それよりリリムは、そのまま上空から攻撃し続けてくれ!」
「分かったのだ!主人は?」
「俺は飛べないからな…このまま奴の攻撃を回避しつつ、隙あらば攻撃するしかない」
こうして互いのこれからの行動を確認しあっている間にもヨルムンガンドは攻撃を続けている。
「っ…《飛剣》!」
身体の至る所に傷を負いながらも、それらを左右に飛び退きながら、反撃する。《飛剣》により放たれた斬撃がヨルムンガンドを射止めんと、超速で奴の額に当たるも決定打には全くならず少し傷を与える程度だった。鱗に覆われた奴の身体は、思った以上に硬かったようだ。
そして、魔術を行使しようにも、普段から左手に剣を持ち、右手で魔術を行使している為、左手で魔術を行使するのが慣れてなく、右腕を失った今、剣での攻撃しか出来なかった。この戦いが終わったら、左手でも魔術が行使できるように練習しないとな…。
それからもヨルムンガンドの攻撃を回避する度に、【技能】《空歩》で、島から島へと転々といどうし、隙あらば《飛剣》で攻撃していた。
そして今もまた、ヨルムンガンドが口を大きく開き、魔力を収束し始めたのを確認し回避する姿勢を取ろうとした時、それは突然訪れた―――。
「しまっ―――!」
《第一階位魔術》【フィジカルブースト】の効果が切れたのだ。
「ギュォォォオ!!!」
そして、それを待ってましたと言わんばかりに、ヨルムンガンドは、こちらに向かって光線を放ってきた。
急激に低下した身体能力では、当然奴の攻撃に対して反応が遅れ、俺は、光線を受けてしまった。
アルス×∞ −1
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