王都へ

今日も今日とて重い瞼を開けて眼を覚ます。すると日光が当たり、視界が一気に明るくなる。


  「うぅ…眩しい…」


 まだ眠いし二度寝しようかなぁ。


  「あぁー!やっと起きたぁ!もう遅いよぉ〜って何でまた寝ようとしてるの!起きて!」


 ………駄目らしい。


 声のする方に視線を移すと、其処には俺の幼馴染のエリナが怒っているのか前で腕を組んで頬を膨らませながら立っていた。


 彼女の髪は桜色のツインテールで瞳は翠色で大きく手足も細くて長い。そして何より……大きい……何がとは言えないがとにかく大きい…さらに腰が引き締まってるので、身体のラインは起伏していてとても―――なんかさっきから彼女の視線が冷たい...…もしかして思考が読まれた?……まさかエスパーでもあるまいし……読まれてないよ…ね…?


  (大丈夫…大丈夫…)


 俺は自分にそう言い聞かせて極めて冷静にエリナに声を掛ける。


  「おはようエリナ」

  「……おはよう変態アル君」


  読まれてたよ!……つい視線逸らしちゃったよ!ていうかまじエスパーじゃん!……まぁ多分女の勘ってやつだと思うけど……それでも怖いな。


  「もぉ〜起きるの遅いよ!」

  「ごめんごめん」


 さっきの事を気にした様子もなく彼女は普通に話し掛けてきた……なんてありがたい事だ。


  「……最近朝弱くなってるけど、どうしたの?」


 そう言われて俺は今日も見た夢の事を思い出す。


 最近はずっと同じ夢を見ている。俺じゃない誰かが殺されるところで場面が切り替わり、辺りは暗くて...そして最後に聞こえるのは女の人の声、何を言ってるのか分からないけど、何時もここで眼を覚ます。


  (こお何度も同じ夢を見ると強ち夢では無いんじゃないかって思えてくるよなぁ〜)


 彼女に何て言おうか悩みながら逸らしていた視線を再び彼女の方へ向けると、彼女は不安げな様子で俺の事を見ていた。


  (……心配させるわけにはいかないよな)


  「あぁ〜えっと最近夜更かししててあんま寝れてないんだよねぇ〜なんてあは、あはははは……」

  「あははじゃないよ!私達もう十五なんだよ?成人さんなんだよ?しっかりしてよねもう!……それに今日は大事な日なんだから!」

  「……えっと今日なんかあったけ?てか何でエリナはここにいるの?」

  「……」


  ……え、何その無言の圧力怖いんですけど……。


  「……アル君」

  「はっ、はい!!」

  「……本当に今日が何の日か分かんないの?」


 ……やばい怒っていらっしゃる。―――彼女怒ると結構怖いんだよね。たまに彼女の背後に鬼のような形相をした長い髪の女の人が居るけど、アレ本当になんなんだろ。アレが居るときは、特に怖いんだよね。―――この前、一緒に買い物してる時に綺麗なお姉さんが通りかかったから、ちょっとそっちの方見ただけなのに怒られたんだよね。その時も背後に居たんだよね。―――だってしょうがないじゃん!?本当に綺麗だったんだよ!?ボン!キュッ!ボン!だったんだよ!?特に最初のボン!の部分が凄かったんだからね!?見てなきゃ損するレベルだったからね!?―――うん、分かってる、俺が全面的に悪かったんだって―――てか何でこんな事を思い出したかと言うと―――居るんだよね。―――彼女の背後に―――アレが―――


  「……えっと…その…な、なんかあったっけ?」

  「っ!!」


  やばいなんかアレが武器持って構え出したけど、あぁ、終わったよ。人生終了のお知らせだよ。訳の分からない奴に斬られて終わりだよ。てかその武器どっから出てきたんだよ!


  「……昨日事前に言ったよね?明日は女神様から加護を授かる日だから王都に行くって、王都までは距離あるから早く起きて出発するって、言ったよね?」


  アルス達が暮らしているリーベルの街は、アルカナ王国の東側に位置する街で近くに森がある為遠回りする必要があり、王都まで数時間はかかってしまう。


  「……あ、あぁ〜言った、言ってたねそんな事」

  「なのにアル君全然起きて来ないから、叔母さんに頼まれて起こしにきたんだよ!!」

  「……すみません」

  「本当だよもぉ〜まさか忘れてたなんて思わなかったよ!」

  「いや、本当にすみません」

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