第34話 ルドルフの依頼再び
住み家が見えてくると、何もない空間からルドルフが現れる。
ルドルフは現れると、開口一番、不平を口にする。
「厄介事を持ち込もうとしているだろう。家に上げたくはない」
「家に上げてくれとは頼まない。だが、話は聞いてほしい」
「当ててやろう。碌でもない件の後始末を頼もうとしているな」
「はっきり言えば、そうだ。ボーモン王殺しの犯人になってくれ。捕まってくれなくてもいい」
ルドルフは呆れた調子で発言する。
「国王殺しの身代わりなんて、よく頼めたな」
「別に、いいだろう。ルドルフとボルベル族の仲が最悪なら、これ以上に悪くはならない。それに、ただで俺は物事を押し付けたりしない。報酬は払う」
ルドルフは驚いた調子で了承した。
「まるで、こっちの内情を知っているかのようなタイミングだな。いいだろう、国王殺しの犯人の身代わりを引き受けよう。ただし、やってもらいたい仕事がある」
(来たね。これは実績絡みだね。ルドルフに難題を押し付け、俺は実績を解除する、一石二鳥だな)
「いいぜ。何だ? 何でもやってやるよ。話してくれ」
ルドルフがヒイロの様子を伺いながら訊く。
「ビリビリ族を知っているか?」
(ボルベル族と戦争で負けた部族だったな)
「あまり、よく知らないが、そいつらがどうした?」
「ビリビリ族が守る御神木のドドンの木を伐採してほしい」
(そういえば、変わった木を伐る実績もあったな。上手くいけば、同時に二つ解除になる美味しい話か。やるの一手だな)
「伐るだけで、いいのか? 木は必要ない、と?」
ルドルフが
「できれば、ドドンの木がほしい。だが、必要なのはドドンの伐採の事実だ」
有難味を出すために、少し
「ビリビリ族が大事にしているのなら、難しいだろうな。俺にできるかな」
「そうだ。だから、頼んでいる。やってくれるか?」
「わかった。了承しよう」
ヒイロはルドルフと約束して村に帰る。
すぐにでも、木を伐りに行きたかった。だが、ビリビリ族を支配下に置いているボルベル族の状況がわからないのでは危険だと思った。なので、少し様子を見ることにした。
十日後、家にモモンがやって来た。モモンは外交使節の綺麗な衣装を纏っていた。
パオネッタがモモンに椅子を勧めて、お茶を出した。
「久振りね、モモン。今日はどうしたの?」
モモンは、しょんぼりした顔で語る。
「トウリオ総督代行にお願いがあって来たっちゃ。でも、成果は得られなかったっちゃ」
(また、身勝手なお願いをしたのかな。ありそうなことだ)
「どんな、お願いをしに来たんだ? よかったら教えてくれ」
「ボーモン王を殺害したのが魔人と判明したっちゃ。そこで、魔人討伐に兵を出すように要請したっちゃ」
(ルドルフが動いてくれたか。これで、表向きには開拓村から戦争の危機は去ったな)
パオネッタが白々しく驚く。
「ボーモン王を殺害は魔人の仕業だったのね。恐ろしいわ」
(パオネッタは中々の役者だな)
真相を知るヒイロだが、難しい顔を浮かべとぼけた。
「モモンの気持ちはわかる。だが、他国の争いに開拓村は関与しない、が方針だからな」
パオネッタも、それとなく言葉を添える。
「政治的な判断はミランダ村長やトウリオ総督代行の仕事よ。だから、私たちでは何ともできないわ」
モモンは気落ちした態度で語る。
「事情はわかるっちゃ。でも、魔人との関係を絶つくらいはできるっちゃ。開拓村は魔人との関係断絶も拒否したっちゃ。これでは、
モモンの愚痴を聞いても面白くも何ともない。なので、聞きたい内容を訊く。
「そうか、大変だな。ところで、一つ聞きたい話があるんだが、いいか?」
「何だっちゃ? 急にっちゃ」
「ビリビリ族が持つ、ドドンの木だよ。あれ、伐れないかな?」
モモンは
「何で、ヒイロがドドンの木を知っているっちゃか」
ヒイロは適当に嘘を
「いやあ、ドドンの木は伐れると金になるんだよ。お金って大事だよ」
「背高族って変わったものをほしがるっちゃね。でも、御神木であるドドンの木を伐るとなると、ビリビリ族が黙ってないっちゃ。それに聖王の紋章がない者がドドンの木を傷つけると、呪われるちゃ」
(聖王の紋章? 実績お婆さんから貰った紋章だろうか?)
ヒイロは左の掌をモモンに向けて「紋章よ、出ろ」と念じる。左の掌が熱くなった。
掌を確認すると、紋章が浮かび上がっていた。
「聖王の紋章って、これのことか?」
パオネッタは不思議そうに紋章を見る。
だが、モモンは椅子から転げ落ちんばかりに驚いた。
「何で、ヒイロが聖王の紋章を持っているっちゃ? ヒイロは聖王の末裔っちゃか?」
(大した、驚きようだな。実績解除は大変だったけど、これ、そんなに凄いものなのかな)
「聖王の末裔かどうかは知らん。末裔なのかも知れないし、違うのかも知れない。だが、末裔かどうだかなんて、どうでもいい。紋章があるんだ。木を伐っていいかな?」
モモンは慌てふためき、答える。
「ドドンの木なんて、どうでもいいちゃ。それより、聖王の紋章を持つ者が現れたのが、一大事っちゃ。こうしてはおれんちゃ。すぐにホムホムに戻るっちゃ」
「戻るのはいいんだけど、俺がドドンの木を切断したがっている件は、忘れないでくれよ」
「わかったっちゃ。大人しく、待つっちゃよ」
モモンは駆け出すように、ヒイロの家を後にした。
パオネッタが穏やかな顔でサラリと意見する。
「どうやら、何か一波乱が起きそうね。私にも後で詳しく紋章を見せてね」
「いいぜ。この紋章が、さらなる実績を呼ぶ鍵になるかもしれないからな」
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