第5話
風間は、作業場と聞くと広い倉庫のようなところで、中央には作りかけの飛行機があるものだと思っていた。作業場は講義室よりも狭く、飛行機は数パーツに分割されて、二段のパイプ製のラックに置かれていた。
代表の寺村が、新入生の前に立って、話しだした。
「ここが、私たちの作業場です。活動は基本的に、ここで行っています。活動日は、平日の講義終わりと土曜日ということになっていますが、毎日強制じゃなくて、来たいときに来るって感じです。まあ、みんなほぼ毎日来てるんですけど」
新入生の後ろの先輩たちがくすくす笑った。どうやら、毎日来ているのは、本当らしい。
「次に製作について、翼班長とフェアリング班長から説明してもらいます。」
寺村先輩に替わって、春馬先輩が前に出ていった。
「一応、翼班長の春馬です。翼の作業について説明します。まず、翼の形の図面を、型紙って呼んでるんですけど、これを厚い紙に貼り付けて、型をつくります。これをマスターって呼んでます。それで、できたマスターを今度はこの発泡スチロールの板に貼り付けて、熱線で切り出します。このできたやつをリブって呼んでて、それを、作業場のウマ……ウマじゃわかんないか……
あの、パイプでできた棚に置いてある黒い棒のことをスパーとか桁って言うんですけど、そこにこのリブをつけていきます。そのあとは、補強材とか、プランクっていうカバー的なやつを貼って、フィルムを貼ったら、翼の完成です。
なんか、専門用語ばっかりで、上手く説明できなくて、すみません。だいたい翼の製作はこんな感じです。じゃあ、次はフェアリングの説明で。」
今度は、守富先輩と別の先輩が、ウェディングケーキみたいに丸い発泡スチロールのブロックが何段も積み重なったようなものを持って、前に出てきた。
「フェアリング班長の守富です。翼は説明しなくても分かると思うんですけど、フェアリングっていうのは、飛行機が飛ぶときに、このパイロットが入るところです。この発泡スチロールが、今作りかけのフェアリングです。まだ、発泡スチロールの輪っかがつながってるだけなんですけど、これをやすって、パイロットが入る場所を作ります。
あと、これが大事なんですけど、ゴールデンウィークにフェアリングの前の、窓になるところを作る作業があって、そのときバーベキューもするんで、是非来てください。以上です。」
「じゃあ、あとは機体とかに触らなかったら、自由に見学してくれて大丈夫なんで、十分間くらい自由に見学してください。あと、荷物は、作業場の前とかに置いてもらって大丈夫です。」
代表の寺村が締めた。新入生は荷物を置き、おそるおそる作業場に入っていき、機体を眺めた。
翼は、一つが5 m、翼のパーツが付きかけの骨組みみたいなやつが三つと、黒い棒が三つ置かれていた。黒い棒に発泡スチロールのリブって言われていたやつが、接着剤でつけられていることは分かったが、そのくらいしか分からない。それでも、初めて機体を目の当たりにして、気持ちは昂ぶっていた。
「じゃあ、今日はこのくらいで、終わりにします。最後に、そこの名簿に所属と名前と連絡先を書いていってください。新歓の日付とか連絡に使います。興味があったら、明日以降はここで作業してるんで、好きなときに来てください。今日はありがとうございました。」
寺村先輩のこの言葉で、みんな名簿に記入して、帰っていった。
これは入部決定だ。早速、明日も行ってみよう。風間は、すでに決心していた。
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