飛ばしたいだけでワケはない

伍一 降人

第1話

 高校生活は青春とは無縁だった。公立の進学校の理系クラス、1年生のころから大学受験のための授業に、0時限目の授業、休日にも模試があったりして、恋人もできないどころかクラスは全員男子の男子クラス、女子との交流も全然なかった。運動部は盛んだったが、野球やサッカー、ラグビーみたいな運動をやりたくはなかったし、文化部も吹奏楽部や、放送部とか、いまいち惹かれなかった。

 

 大学ではサークルに入ろう。それも青春できそうなサークルに。

 そう考えていた風間は、大学の合格が決まった日から、大学のwebサイトのサークル紹介のページやSNSでサークルのことを調べていた。

 

 生物部とか地学研究会とかあるじゃん。天体観測とかおもしろそうだよなあ。あっ、ロボット作ってるサークルもあるのか。俺がやりたかったサークルってこういうサークルなんだよなあ。とりあえず、サークル紹介はどんどん聞きにいこう。

 大学の入学の日が楽しみだった。


 大学の入学式の日、はじめてスーツを着て、新生活をはじめた一人暮らしの部屋を出た風間は、数年ぶりのわくわく感に満たされていた。

 「テニス部興味ありませんかー」

 「来週、新歓コンパやりまーす」

 「このビラどうぞー」

 入学式の会場前には、新入生にビラを配って宣伝しようとする大学の上級生でいっぱいだった。一応、腰の高さくらいの柵が道にようになっていて、ビラを配る上級生の入れる場所は決まっているようだ。きっと、混雑防止のためなんだろう。

 

 風間にとっては、このビラ配りは嬉しくてしょうがなかった。そんなわけで、わざと柵の近くのほうを歩いて、もらえるビラは全部もらった。入学式中は、学長のありがたい話は全然聞かずに、貰ったビラを読んでいた。

  テニス部はないな。これは、保留。ここは、聞きに行こうかなあ。貰ったビラを次々めくっていた風間は、一枚のビラに釘付けになった。

 

 琵琶湖に行こうぜ! 一緒に青春したい人求む!


 風間が航空研究会と出会った瞬間だった。

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