B美術館の静かなる睡蓮

B美術館のモネの前

正六面体のコロッとした椅子

浅葱あさぎ色のふかふかな椅子

静かな睡蓮を眺める日々


そこに座ってその一枚を観る

それだけのために来る人がいる

一時間も黙って座り

ふっと立ち去る人がいる


ここの睡蓮は華やかではない

静謐せいひつな空間の仄暗ほのぐらい水面に

ポツリポツリといくつかの花


椅子に座って小一時間も観ていると

庭を造り替えようとしたモネが

咲いた花を惜しんでいるような

これが散るまで植え替えられぬと

ため息交じりに眺めているような

そんな空想にふけったりする


都会の真ん中のB美術館には

サイコロみたいな椅子がある

睡蓮の前の特等席

平日には空間を専有できるらしい


モネと椅子の間の

見えない庭先に想いを馳せる





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