第十八話・13
メイド服は、さすがにやりすぎたかな。
スカートの丈も短めで、季節を無視したものになっちゃったし。
でも楓が好きみたいだから、これでいいよね。
しかし花音は、そうではないみたいだ。
「ちょっと⁉︎ あんまりジロジロと見るの、やめてくれない? 恥ずかしいんだけど」
「ごめん……」
楓は、言い返すことができないのか、花音に謝っていた。
「ふんっ。…でも楓になら、別に見られても平気かも……」
花音は、楓がどこを見ているのかしっかりとわかっているみたいで、ボソリとそう言って部屋を後にする。
花音も、楓のお世話をするのはまんざらでもないみたいだから、私が咎めなくても大丈夫だろう。
ちなみに花音がボソリと言ったことに対しては、楓には聞こえていなかったみたいだ。
その証拠に、楓はぼーっとしている表情の中に、思案げな目をしている。
私は、楓の傍に近寄っていき、耳元で小さく言った。
「花音も、ちゃんと成長してるでしょ?」
「っ……⁉︎」
途端、楓の顔が赤くなる。
風邪で熱を出して元々が赤かったんだけど、さらに熱が上がってしまった感じかな。
「うふふ。赤くなってるよ。もしかして、意識しちゃってたりするの?」
「意識だなんて──。花音はまだ中学生だよ」
「それって、中学生じゃなかったら惚れてたって事かな?」
私は、悪戯っぽい笑みをつくりそう訊いていた。
楓がどういう反応をするか気になったのだ。
楓は、きっぱりと言う。
「たとえ同い年であったとしても、惚れるっていうことはないよ。たしかに、可愛いのは認めるけど……」
「うんうん。花音は、可愛いよね。姉の私から見ても、そう思えるくらいだし」
「僕も、香奈姉ちゃんと同様、花音の事は妹のようにしか思っていないよ」
「そっか。まぁ、セックスするにはまだ早い感じだからね」
「そこで、何でセックスの話題になるの?」
「ん? まぁ、なんとなく…かな」
私は、とりあえずといった感じでそう答えておく。
万が一にでも、花音と楓とのセックスは絶対にないと断言できる。
なぜなら、楓と付き合っているのは、他でもない私なのだから。
一緒にお風呂に入ってまで近づいたんだ。
このチャンスを逃すわけにはいかない。
「なんとなくで、そんな話になるんだ」
「花音だって、後2年くらい経てば、もっと可愛い女の子になると思うんだよね」
「それは、そうだけど……。その時になれば、花音だって彼氏とか連れてくると思うよ」
「そうかな? 花音に限ってそれはないと思うけど」
「大丈夫だよ。花音は、意外としっかりしてるから、男の人を見る目はちゃんとあるよ」
「その相手が、弟くんだったりするかもよ」
私は、意地の悪い笑みを浮かべてそう言ってみる。
「僕には、香奈姉ちゃんがいるから、残念だけど付き合えないかな」
「そっか。…そうだよね。私なんだもんね。ありがとう、弟くん」
なんだかんだ言っても、楓は私のことをちゃんと見ているんだな。
私は、楓の額に手を添える。
まだ熱は下がっていないようだ。
風邪薬はちゃんと飲んだから、あとは安静にしていればいいんだけど、今日一日で治るようなものじゃなさそうだ。
これはもう、付きっきりで看病するしかない。
「よしっ。決めた!」
私は、ある事を決めてそう言っていた。
案の定、ベッドで寝ている楓は思案げな様子で訊いてくる。
「『決めた』って、何を?」
「そんなの決まってるじゃない。弟くんの風邪が治るまで、私がしっかり看病してあげるのよ。こんな時は、誰かが一緒にいてあげなきゃいけないでしょ」
「いや、それはさすがに……。遠慮しておくよ」
「遠慮なんてしなくていいよ。私が看病したいんだから、そうさせてくれないかな? 今だったら、下の世話なんかも追加でしてあげるよ」
私は、悪戯っぽい笑みを浮かべてそう言っていた。
楓はとても慌てた様子で下半身の大事な部分を押さえる。
「そっちのお世話は、別にしなくても──」
「大丈夫だよ。弟くんは、何も心配しなくてもいいから。お姉ちゃんに全部任せなさい」
「そんなことを言われてしまうと……。香奈姉ちゃんに任せるしかないじゃないか」
そんな恥ずかしがらなくても大丈夫だよ。
私たちは幼馴染なんだから、楓の体の事は隅々まで知ってるんだし。
花音には申し訳ないけど、ここから先の楓の看病は任せられない。
ここから先は、お姉ちゃんである私の仕事なんだから。
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