第十四話・12

 部屋に着くと楓は、緊張した面持ちで私のことを見てきた。


「あの……。香奈姉ちゃん。聞きたいことがあるって言っていたけど……。何かな?」

「うん。楓のバイト先にいる女の子のことなんだけどね──」

「女の子って、千聖さんのこと?」


 楓の部屋なのに、私がいるとそこまで緊張しちゃうのかな。

 それとも、私が『ご奉仕する』って言ったから、余計に気を遣っているのか。

 どちらにしても、私が楓にご奉仕するのには、変わりはないけど。


「そうそう。千聖ちゃんね。…その子とだけは、付き合うのはやめておきなさいよって言いたかったんだけど……。その様子だと付き合ってはいないみたいだね。ちょっと安心したかな」

「どうして付き合ったらダメなの?」


 まさか楓の口から、そんな言葉が出てくるとは思わなかった。

 楓なら素直に『わかった』の一言で済ませてしまうんだけど。

 たぶん、興味本位だろうな。

 本気で付き合うつもりはないんだろう。

 何故付き合ったらダメなのかを聞きたいだけだろうと思う。


「千聖ちゃんはたぶん、私との関係を壊そうとしてるんだよ」

「香奈姉ちゃんとの関係を? そんなバカなこと……」

「バカなことでもないよ。一人の女の子の所為で、バンドメンバー同士の仲が微妙になって、そのまま解散ってこともザラにあるんだから」

「千聖さんに限って、そんな──」


 どうやら楓は、千聖ちゃんのことを疑ってないみたいだ。

 まぁ、信じたいのはわかるんだけどね。

 私の中にある女の勘が『あの子は危険だ』って訴えてくるのだ。

 だけどそれは、あまりにも漠然としていてわかりにくいから、確証はもてないのだけど……。


「まぁ、そうと決まったわけじゃないから、断言はできないんだけどね。…だけど、気をつけた方がいいのはたしかだよ」

「香奈姉ちゃんがそう言うのなら……。気をつけるよ」


 楓にとって、私の言葉は重かったようだ。

 彼は素直にそう言った。

 そんな楓を見て、私は嬉しくなってしまい、そのまま楓の首元をそっと抱きすくめる。


「さすが楓だね。わかっているじゃない」

「いや……。そんなことは……」


 楓は、あきらかに照れてるのか顔を赤くして言った。

 そんな表情も、また可愛いとさえ思ってしまう。

 このままエッチな行為に及んでもいいんだけど、楓のことだ。きっと嫌がるだろう。

 だから、楓には言ってやることにする。


「千聖ちゃんは、確実に楓のことを狙っているよ」

「僕のことを? どうして?」

「それは…ねぇ。女の子っていうのは、色々と思うところがあるものだからね」

「そっか。そんなものなんだ」


 楓は、なにやら納得した様子でそう言った。

 これ以上は、私が何を言ったところで無駄だと思う。楓自身に納得してもらうしかない。

 楓のことを想う気持ちなら、私も負けないんだけどな。


 いつもどおりにご奉仕を済ませると私は、楓にキスをしていた。

 キスをしてるついでに中に舌を入れて、楓の舌を舐めとる。

 グイグイ来るかと思っていたんだけど、楓は頬を赤くして、私がいくのを待っていた。

 これって、普通は男の方から来るものだと思っていたんだけどな。

 どうやら、楓の場合はそうじゃないらしい。

 だったら私から攻めてもいいよね。

 でも、やっぱり感情には素直なもので、楓は私の内股の辺りを触ってくる。


「んっ……」


 楓の手は、いよいよ私の大事なあそこに触れた。

 一応、服は着ているがショーツを脱いでいるので、感触ですぐにわかってしまう。

 さっき、たくさんやったばかりだというのに……。まだそんな元気があるんだな。

 それとも、私に屈服させられっぱなしは嫌なのかな。

 まぁ、どっちでもいいことだけど。

 最近、エッチだけじゃ満足できない私がいる。

 ただ単に、楓があんまり激しくしてきてくれないのが、原因なのかもしれないけれど……。

 だからこそ、私の大事なあそこをなぞるように愛撫してくる楓の手が、少しだけ気持ち良かったりする。

 楓ったら、いつの間にこんなテクニックを身につけたんだろう。

 これなら、私の胸を優しく揉んでくれてもいいかもしれない。

 私は、私の大事なあそこを愛撫していた楓の手をギュッと掴んだ。


「え……。香奈姉ちゃん?」


 案の定、楓はキョトンとした表情で私の顔を見てくる。

 でも顔が赤くなっているのは、変わらなかったが。

 こんな時こそ、最高のご奉仕をしてあげないといけない。


「まだだよ、楓。私のご奉仕は、まだ終わっていないよ」


 そう言うと私は、騎乗位の状態になり楓を見下ろす。

 普通は逆だろって言いたくなるが、楓の場合はこれでいい。


「香奈姉ちゃん。…今日は、何をするつもりなの?」


 まるで漫画のヒロインのようなことを言ってくる。

 ヒロインは、私なんだけどな。


「今日はね。楓の体に抱きついて、そのまま一緒に寝るの。…どうかな? 私にしては、いいご奉仕だと思うでしょ?」

「香奈姉ちゃんと一緒に寝るのか。…うん。香奈姉ちゃんらしい、良いご奉仕だね」

「そうでしょ。こんな『ご奉仕』、滅多にないんだからね」


 私は、そう言って着ている服の上を脱いだ。

 これで楓の前にいるのは、ほぼ裸に近い私だ。

 ブラジャーに関しては、楓に任せよう。

 楓は、当然のように私が身につけているブラジャーに手をかけてきて、言ってくる。


「これ……。外してもいいかな?」

「楓に任せるよ。私のおっぱいがそんなに見たいのなら、どうぞ」


 ブラジャーを外したら、私のおっぱいが楓の前に晒されてしまうだろう。

 まぁ、楓になら、別に見せても構わないんだけど。

 私のたわわなおっぱいのすべてを、楓に見てもらうのか。

 改めて見せるとなると、ちょっと恥ずかしいかもしれない。


「それじゃ、遠慮なく」


 楓は、そう言うとブラジャーのホックに指をかけて、ゆっくりと外していく。

 ブラジャーがはらりとベッドの上に落ちる。

 それと同時に、私のおっぱいがぷるんと揺れた。

 私は頬を赤く染めて、思わずおっぱいの先端の部分を手で隠す。

 なんで隠す必要があるんだろうかと今更ながら思ったが、やっぱり恥ずかしいんだと再確認できた。

 楓は、私のおっぱいに手を触れてきて言う。


「香奈姉ちゃんのおっぱい。…やっぱり大きいや」

「おっぱいを触るだけなの? それだけでいいの?」


 私は、楓の手をギュッと掴み、そのまま私のおっぱいを揉ませる。

 こうなるとおっぱいの先端を隠す必要がないから、楓に全部見せた。


「香奈姉ちゃんが、いいって言うなら。僕は──」


 楓は、私のおっぱいを両手で触れてきて、そのまま揉みしだく。

 途端、私は変な気持ちになり、口元に手を添える。

 楓は、私のおっぱいの先端を指先でクニクニとつねり始めた。


「あ……」


 私は、たまらず声を上げる。

 どうしようもないほどの気持ちよさと解放感が、私の全身を駆け抜け、私はおっぱいを楓に差し出すように姿勢を整えていた。

 いっそのこと、楓のその口で私のおっぱいの先端を舐めてくれないかな。

 楓は、私のおっぱいを揉みしだきながら、おっぱいの先端を弄っていた。

 ──なにこれ。

 とっても気持ちいいんだけど。

 これだと楓とのエッチよりも、こっちの方がいいと感じてしまう。

 もっとやってほしいな。

 そうした思いがあふれてきて、楓をそのまま抱きしめたくなったが、やめておいた。

 楓は、私の顔を見てきて言ってきた。


「おっぱいの先端……。クニクニしてて変な感じだね。試しに舐めてみてもいいかな?」

「楓がしたいようにすればいいよ」


 私は、恍惚とした表情を浮かべてそう答える。

 もう何をされても、怒る気にはなれない。

 楓が私のおっぱいを舐めたいのなら、そうすればいい。

 私は、楓の恋人としてここにいるのだから。

 でも、少しだけ手の力を緩めてほしいな。

 今も、にぎにぎと揉みしだいているけど、このままだとちょっと私の精神が保たないかも……。

 だけど、おっぱいの先端を舐められたら、私はどうなっちゃうんだろう。やっぱりイッてしまうんだろうか。

 楓の舌なら上手く舐めてくれるから、きっと気持ちよくなれるに違いない。

 少なくとも、普通にやるセックスよりも、これは重要なことだ。

 楓は、私のおっぱいの先端をまじまじとみた後、指でツンっと突いてきた。


「んっ……」


 私は、思わず体を震わせる。

 やっぱり精神が保ちそうにない。


「香奈姉ちゃんのおっぱいって、意外と敏感にできてるんだね」

「それは……。私のじゃなくても、敏感だと思うけど」


 女の子のおっぱいは、女にとっては急所にもなってるところだからね。

 敏感にならないことの方がおかしいと思う。

 むしろ男よりも性感帯が多いと思うから、楓にどこを触らせようか迷う時がある。

 気分によって、触ってほしい箇所が異なる時があるから。


「そうなんだ」

「そうだよ。普通に揉みしだかれただけでも、結構くるものなんだから。楓にも、わかってほしいくらいだよ」

「う~ん……」


 楓は、私の体を見て、なにやら悩んでいる様子だった。

 どうやら私のおっぱいを見て、どうしようか悩んでいるみたいだ。

 やっぱり舐めるのはやめるとか、そういうことかな。

 楓は、私のおっぱいからゆっくりと手を離す。

 私は、途端に不安になり訊いていた。


「どうしたの? もう触らないの?」

「うん。やっぱり、今回はもういいかな。また次の機会があれば、触らせてもらおうかなって」


 楓は、名残惜しそうに私のおっぱいを見て言う。

 そんな目で見られたら、私の方が名残惜しくなってしまうんだけど。


「次の機会…か。──うん。その時がきたら、また…ね」


 私は、苦笑いを浮かべてそう言うとベッドの上に落ちてるブラジャーを手に取った。

 次の機会って言うけど、そんな時は…きっとあるんだろうな。

 そう考えながら、ブラジャーを身につけようとしていた時、楓は急に私に抱きついてきて


「最後に…いいかな?」


 と、言ってきた。

 これは、私とセックスがしたいって言ってるのかな。

 まだブラジャーを身につける手前だったから、また楓のベッドの上に落ちてしまったけど。

 楓は、何を思ったのか抱きしめたまま私を押し倒してくる。

 私は一切の抵抗をせず、楓を見つめた。


「やっぱり抱きたくなったの?」

「香奈姉ちゃんのおっぱいを見ていたら、つい……。もっと欲しくなっちゃって……」


 楓は、頬を赤く染めてそう言った。

 そういうことなら、仕方ないか。


「私のおっぱいは、誰のものでもないんだけどなぁ」

「うん。わかってる。だけど、我慢できなくて……」


 そう言って楓は、私のおっぱいに再び手を触れてくる。

 そんなに触り心地がいいんだろうか。

 私にとっては、変な感じがするだけなんだけど……。


「あ……」


 またしても、声に出してしまった。

 楓ったら、私のおっぱいを揉みしだき、おっぱいの先端部をクニクニと優しくつねってきたのだ。

 しかも大胆にも、両方のおっぱいを……。

 さすがに両方のおっぱいを攻められたら、抵抗なんてできない。

 私は、恥ずかしさというべきかなんというか頬を上気させてしまい、楓から視線を逸らしてしまう。


「もっと、優しくして……」

「あ、うん。ごめん……」


 楓は、素直に謝ってくる。

 そうは言ってもやめる気はないようで、楓はしばらく私のおっぱいを揉みしだいた後、ゆっくりとした動作で顔を埋めてくる。

 私は思案げな表情を浮かべ、楓の頭に両手を添える。


「楓? どうしたの?」

「香奈姉ちゃんの心臓の音を聴いてるんだ」

「私の心臓の音?」

「うん」


 楓は、ギュッと私の体を抱きしめてきた。

 私の心臓の音なんか聴いて、何があるんだろうか。


「何かわかったことでもあったかな?」

「人のぬくもり…かな」

「ぬくもり…か。たしかに、私の肌のぬくもりは感じるかもね」

「うん。柔らかくて気持ちいい……」


 楓は、そう言って私のおっぱいを枕のようにして顔を埋めてくる。

 不思議と嫌な感じはしない。

 むしろ私の中にある母性本能がくすぐられてしまうのは、気のせいだろうか。


「そっか」


 私は、微笑を浮かべると楓の頭に両手を添えた。

 きっと楓は、私とのスキンシップのとり方に悩んでいたのかもしれない。

 ちなみに私の『ご奉仕』は、まだ終わってはいないから、楓にスキンシップのとり方を教えるには十分だろう。

 まずその前に、お互いに裸にならないとね。

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