第199話 槍壤

サタナキア 8時24分



麻島班vsバスタードレベルB



ジャキ



鍔に親指を掛け、抜刀の構えを取るチコ



江藤の背中から伸びた2本の触手がピーンと張り、その内1本の触手先端部が花びらのように4つに割れ出した。



硬質化、鋭利な刃へと変形した触手がバスタードに向けられる。



ライト光に照らされたバスタード2体は静かに首を動かし、2体揃って何やらこちらを観察している様子



単眼用ヘッドマウントディスプレイの画面には江藤が映され、カーソルが合わさるやロック、それからスキャンが行われ、searchingの文字と英数字の羅列が表示される。



そして次に隣りのチコもスキャンされ、次々モニター上でスキャンされていた。



ピピ



ロシア語と日本語で表された文字



抹殺当該数 計14体…



武器保有数14… 内11 自動小銃及びサブマシンガン… 内3 刀剣及びナイフ所持…



抹殺優先順位… 小銃及びサブマシンガン所持者…



すると



ピピ



再びスキャンされ



銃器を持たない江藤、チコ、合間の3名が省かれ、残りの者に赤いマークがつけられロックされた。



そして再び画面がスキャンされると今度は個々に矢印が表示され、共に抹殺の順位らしき数字が表された。



4本腕のバスタードは第1に石田を選択



左右別人のトゥーペアなバスタードは14名の中から七海を第1に選別



他にも順位づけで数字が表記される中、まずはこの2名が最初に捕捉された。



そして3度目のスキャン後、石田と七海がズームアップされロックされた。



確定…



抹殺処理実行開始



シャキン



4本腕からそれぞれ鋭利なブレードが突起



またトゥーペアは腕からはボルテックスドライバーなる長いドリルが現れ、もう片腕からは筒状の物体が現れた。



それを目にし眉をピクリとさせた江藤とチコ



来るか…



そして2体のバスタードが動き



突っ込んできた。



2体は先頭の2人には目もくれずに通過



江藤の真横を駆け抜けた4本腕



またトゥーペアもチコの真横を疾走



チコ「なっ」



あわくう表情でチコが振り返るや



石田「…」



部隊の中に入り、石田の眼前に現れた4本腕



またトゥーペアも七海の前で止まり、麻島や海原、恩田等が反応する間も無く、2体同時に武器を振るおうとした



その時



1本のブレードを振りかざし、回転されたドリルをブチ込む



その寸前



ガチン



ドリルが日本刀で受け止められた。



またブレードには触手が巻き付かれていた。



回転したドリルを受け止める刀身



合間「お姉さん 引かれよ ここは私目(わたくしめ)が」



中に割って入り、阻止したのは合間



七海「あっ は はい…」



中野によって七海の腕が引かれる中



190はあるだろうタッパもガタイもよろしい剣豪が腕を振るっていた。



だがトゥーペアは邪魔する合間を相手にせず、後退した七海をガン見、立ちはだかる剣士の横をすり抜けようとした時だ



真剣がトゥーペアの喉元へと添えられ



合間「待たれよと言うに… 曲者(くせもの)」



バスタードがピタリと足を止める。



合間「私目の目が黒い内は…」



年季の入った刀



ドリルを受けても傷1つ無い美しくも波打つ刀身の刃文、切っ先や鎬部がライト光に反射し神々しい程の光りで照らされている



合間「我が愛刀 鬼切羽(おにきりば)を前にこいつを度外視するなど問答無用」



業物級で立派な打ち刀が鞘から抜かれていた。



一方



背を向けたままの江藤の背中からピーンと伸びた触手が4本腕を捕まえ、石田のすぐ手前で動きが止められていた。



そして江藤が振り返る



チコ「ごうま ちょい あんたは手を出さないで」



合間「皆様 お下がりを」



その掛け声で一斉にバスタードから下がった麻島達



トゥーペアはまだ七海のみを凝視



そして喉元に据えられた刃から離れるや再び襲いかかろうとした時



胡座流一心抜刀術…



一刀斬りの心得…



隼の爪跡…



キィン キィン キィ~ン



胴体にZ型で3連の打ちが放たれ



トゥーペアが弾き返された。



合間「お嬢もしばし離れてくだされ こやつは私目が引き受けます…」



チコと同じ流派を扱う、合間の抜刀技が繰り出された。



そして変わった構えで刀を構え、トゥーペアと対面させた合間



合間「ここは通さぬと申したろう…いざ尋常に私目と一騎打ちを受けよ……変怪なからくりのお化けよ」



それでも尚 合間には目もくれず七海に固執するトゥーペアが七海に腕を向け




何やら筒状の物を発射させた。



筒からその何かが飛び出した瞬間



シュパ



踏み込んだ合間からのすくい斬り



突出と同時にそれは両断された。



ワイヤーが断ち切られ、七海に届く事無く途中で転がったのは網



捕縛用と見られるワイヤーネットらしき物が転がっていた。



そして



バシュ シュパ シュパ スパ



間合いを詰めた合間から4連の斬撃がくわえられ



胴や脇を斬りつけられたトゥーペアがその場から弾かれた。



ザザザザ



床を引きずりながら停止したバスタード



合間「ほぉ ほぉ なるほど…」



キズをつけたのみの強固なボディースーツに守られ、再び七海目掛け、猛突進



七海が狙われている…



麻島がそれに気づき発した。



麻島「彼女が狙われてるぞ」



中野「七ちゃん逃げて」



そして中野が盾に入り、また海原や三ツ葉も前に飛び出し、銃器を向けてガード、その後ろで七海が後ずさった。



トゥーペアはマークした七海のみを狙い突進、接近しようとするや



突きの心得…



雷鳥…



ズドン



重い打突の一撃がトゥーペアの胸部に打ち込まれた。



足の浮いたトゥーペアはまたも弾かれ、ボディーが跳ばされた。



私の出る幕無しね…と言わんばかりにつまんなそうな顔のチコ、既に刀から手を離し、腕を組むその前をぶっ飛ばされたバスタードが横切っていった。



落下しゴロゴロ転がったトゥーペアがすぐに起き上がり、顔を向けると



突きの構えで静止された合間の口から



合間「折角御相手致すというのに私目を片手間で相手するつもりか…」



すると合間が刀で床に一線を引き



合間「この私目をないがしろにするとは不届き千万、不逞な輩め ぬしをこの線より一歩も通さぬ」



強面な表情へと一変させた合間が下段霞の構えを取った。



一方



キーーン キン キィン



先端部が4つに割れ、伸ばされ、硬質化した触手が4刀流のバスタードとチャンバラを行っている。



もう1本の触手は江藤本体を螺旋状に取り巻き、浮遊



本体のガードに務めていた。



江藤はその場に立ち尽くし、ジッと静観



バスタードを観察した。



キィン キン



バスタードが繰り出す刃を受け、弾く金属音



江藤は包まれた触手の間から暇そうに毛先をいじるチコを目にし、そして戦闘中のバスタードに着目した。



あの左目のスカウンターみたいなの何だろう…?



そして合間と交戦中のバスタードにも目を向け



あいつも同じの着けてるんだけど…



あれって戦闘力でも計るやつかな…?



まさかね…



でも何はともあれあの装置は俺達にとって不利益な代物… 脅威でしかないよね…



ねぇ そう思わない…?



まるで…



そうは思わん… これしき首を跳ね飛ばしてやればすぐに終わる話しよ…



えぇ 私も同感ですぞ 直接あの装置に脅威は感じられません… あれは大方計測やら分析などをする装置と見受けられます…



分析ねぇ…



共生、共有する寄生体と頭の中で会話を交わす江藤



意識の中のとある部屋の中 スティックを手にし、ハットを被った老人と



騎士の格好をした青年の幻像と共に視覚から映る光景を窓から覗く江藤



邦光よ 何をためらう いいからさっさとあの首を切り落としてやればよかろう… さすればすぐに終わるのだ…



ちょっと待って… こいつらのこのナリ 明らかに戦闘用の格好じゃん… これって明らかに兵士だよね 今後に関わるかもしれないんだ…もう少し様子みたんだけど…



何を調べようと…?



それは 分からないんだけどね…



はっ 何の冗談だ いつまでじゃれ合うつもりだ やらぬなら我がやろう おい ピルル パルル 代われ…



え~ なんで~  え~ なんでなんでぇ~



さっさと代わらぬか…



貴様等のようなおみなごがいつまでも戯れおって…



だってぇ~ 手ごわいんだもん…



だもん…



いいから代われ スイッチだ…



すると



騎士風が忽然と部屋から消え、同時に双子の幼女が部屋に現れた。



は~ 面白かった~… かったかったぁ~



ホントに仕留めてもよろしいんですな…?



老人が窓を眺めながら問いかけてきた。



江藤「…」



そして主導が騎士に代わった途端



触手の動きが見違える程変わり



キン  キンキン シュパ パス



剣戟と同時にバスタードのボディーに斬撃が刻まれはじめた。



それを眺める江藤本体の前で



ブシャー



バスタードの1本の腕が切り落とされた。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



屋敷内 地下1階 とある小部屋



冴子を打ち負かし部屋を後にしたエレナが地下に作られたいくつも点在する小部屋を、御見内達を探した。



そして



エレナ「道ぃ~~~」



御見内の名を大声で叫んだ



すると



美菜萌「エレナさん こっちです」



声がし、奥にある小部屋から顔を出した美菜萌



エレナはすぐに駆けつけ、その部屋へと入っていった。



床や壁、天井はレンガもタイルも板も無く、何も舗装されぬままの土に覆われた空間



ただ土を削って作られた穴蔵のような部屋だ



天井に1つだけぶら下がる電球が微かに揺れながら何も無い穴蔵を照らすその地べたには横になる御見内の姿があった。



エレナ「道」



エレナはすぐに駆け寄り、座り込んで覗き込み、御見内の安否を気に掛けた。



エレナ「道 道ぃ」



村田か佐田のだろう迷彩の上着が下に敷かれ、美菜萌のだろう上着が下半身に掛けられている



目を閉じたままエレナの呼び声に応じない御見内



エレナ「え… 道」



美菜萌「エレナさん 大丈夫ですよ 今さっき眠っちゃったみたいです」



エレナ「そう…」



それを聞いたエレナは御見内の寝顔を見つめながらホッとさせた。



美菜萌「あの女に変なクスリを投与されたようですね、瞳孔が開いてて意識もかなり混濁してました」



エレナ「そうなんだ…」



美菜萌「恐らくマイスリーって麻酔薬の一種か、ハルシオンか… あの女の常套手段で使用されるクスリを服用させられたんだと思います その影響が出ただけで命には別状ないかと思います」



エレナ「そっか なら良かった…」



気が抜けたように女の子座りで地べたにしゃがみ込んだエレナ



美菜萌は座り込むエレナに恐る恐る顔を近づけ、覗き見しながら口にした。



美菜萌「それよりなんですが… あの冴子は…どうなったんです?」



エレナ「あの女? あぁ ここに私がいるのが答えよ 始末したわ」



美菜萌「あの女を…? ホントですか? 全く傷も負ってないようで… よくあの女相手に無傷でいられましたね」



エレナ「傷なら負ったわここに」



エレナがメスで刺された背中部に手を当てた。



エレナ「あんな女 燃やしてやったわよ」



美菜萌「え! 燃やす?」



エレナ「うん 暖炉に叩き込んでやった」



美菜萌「す… 凄い… レジスタンスの男性陣でさえ何度立ち向かっても歯がたたなかったあの殺人鬼を倒しちゃうなんて」



エレナ「そんな事無いよ あいつはそんな恐れる殺人鬼なんかじゃ無い ただ卑怯でただ狂気に呑まれてただけの薄汚い女よ」



美菜萌「へぇ でも私達が苦戦を強いられたのは事実です あの女には何十人も犠牲になってるんです やっぱり凄いです」



感心した眼差しでエレナの後ろ姿を見下ろす美菜萌へ



エレナ「ところで村田さんと佐田さんはどこ?」



美菜萌「2人なら御見内さんの服を探しに行きました」



エレナ「服を?」



美菜萌「はい… その… ご覧の通りで…」



若干モジモジ、ソワソワした口調なり急に恥ずかしそうな顔をする美菜萌



美菜萌「その… すっぽんぽんなもので せめてズボンくらいはいて頂かないとこれでは行動出来ませんから」



そんな恥ずかしそうな表情をする美菜萌を見てなんだかおかしくなってきたエレナから笑みがこぼれた。



エレナ「フフ それもそうね」



美菜萌「っにしても少し遅いですね すぐ戻るって言ってたのに」



エレナ「探すっても普通なら服が落ちてるなんてありえない状況よね ましてやこんな所で」



美菜萌「えぇ 村田さんが町民か黒フードを探してとっ捕まえるって言ってました 下に行けば1人くらいいるだろうって そして身包み剥がして持って来るって言ってたんです」



エレナ「なるほど どれくらい経つの?」



美菜萌「エレナさんと別れてからすぐです 15分… 20分くらいですかね 何かあったのかな…」



エレナ「美菜萌さん ちょっと道をこのまま見てて貰える」



美菜萌「え? はい それは構わないんですが 下 見に行くんですか?」



エレナ「うん ちょっと見に行くだけだから」



美菜萌「分かりました」



そしてエレナが腰を上げようとしたその時だ



足音が通路から響いてきた。



美菜萌「あれ 噂をすれば 戻ってきたんじゃ」



2人が入口へ振り返ると慌てた様子の村田と佐田が戻ってきた。



佐田「はぁ はっ は」



村田「はぁ はぁ 大変だ」



荒い息継ぎからの村田の第一声



エレナ「え?」



ゼーゼーに息を切らした2人



村田がちょっと待てのジェスチャーを送り息を整えはじめた。



佐田「はぁ はぁ」



また両手を膝につかせ、屈んで息継ぎする佐田



エレナと美菜萌はそんな様子の2人を黙って目にし、落ち着くのを待った。



村田「はぁ はぁ 悪い もう大丈夫だ」



エレナ「今2人を探しに行こうと思ってたの 何があったの?」



村田「はぁ は その前にほれ 一式手に入れてきたぜ はぁ はあ」



村田が雑に掴んだ衣服を美菜萌へと投げ渡した。



フード付きの黒い衣とミリタリーベースのカーゴパンツ



そしてもう片方のをエレナに渡した。



エレナが受け取ったのは黒のスニーカーだ



村田「はあ はっ サイズが合うかわからんがそいつを着せとけ」



エレナ「うん」



美菜萌「よく手に入りましたね」



村田「はっ は は この下に奴等がいた 交戦になって1人ブチ殺してやった… はぁ はあ それと早織ちゃんを見つけた この下にいる 」



エレナ「え?」 美菜萌「え?ホントですか?」



村田「はぁ は 赤い装束の男もだ」



それを耳にしたエレナと美菜萌が互いに目を合わせ



エレナ「山吹ね」



村田「は はぁ はっ その男に手を取られ、奥に連れてかれるのを見たんだ はぁ はっ 2人で後を追おうとしたら黒フード達がぞろぞろ出てきて再び交戦になっちまって それで逃げられた」



エレナ「でも 早織ちゃんはこの下にいるね それが分かっただけでも大収穫よ」



美菜萌「はい すぐに助けに行きましょう」



すると



村田「はぁ は ちょっと待て待て 話しはまだだ… はあ はぁ その交戦中に1人の女の子が俺達の前に現れたんだ… はあ はっ 早織ちゃんと同じくらいの少女が…」



エレナ「…」



村田「はあ はぁ その子は背中から異様な腕を生やしていた それと…」 



美菜萌「…」



村田「……触手を生やしていた」



美菜萌「背中に腕… バスタードですか」



エレナ「触手があるって事は感染者よ」



佐田「はぁ はっ は 俺達その少女に襲われました」



エレナと美菜萌が再度顔を見合わせ佐田に目を向けると



村田「はっ あぁ 黒フードの奴等がいるにも関わらず無差別に暴れやがったんだ」



エレナ「…」



佐田「はぁ ふぅ 十数人いた黒フードはあっという間に殺され 俺達命辛々逃げてきたんだよ」



美菜萌「その少女のバスタードが…」



その時だ



御見内「山吹がお気に入りの完成品だ」



突如目を覚まし上体を起きあがらせた御見内に一同目を向けた。



エレナ「道」



村田「起きたか」



御見内「あぁ その少女… 山吹が最高傑作と言ってたバスタードだ 名前は彩羽」



エレナ「彩羽…?」



村田「その彩羽なんだが… なんだか今までの奴と様子が違う…例の継ぎ接ぎの化け物にしろ感染者にしろ、支離滅裂な独り言とは違うしっかりした自我を持ってるというか…」



佐田「俺等と変わらぬ人間 そう あの助っ人に来てくれたあの人みたいに普通にコミュニケーションが出来てた」



御見内「やはりな エレナ その彩羽こそ俺が以前話した理沙の再来を予感させる元凶だ」



エレナ「…」



美菜萌「理沙の再来って…何の事です?」



エレナは美菜萌を目にし



エレナ「そいつにトラウマになる程えらい目に遭わされた事があったの… 超ヤバい感染者よ もうあんなのは懲り懲り」



御見内「今はまだ山吹に飼い慣らされてるようだが そいつもいつ暴走を起こすとも限らない 嫌な予感が的中する前に… 手を打ちたい」



エレナ「うん そうね 早織ちゃんがまだ無事な事も分かった 山吹がいる事も確認された 全ては下ね」



コクリと頷いた村田



そして御見内も…



美菜萌「御見内さん 体調は?」



御見内「あぁ お陰様で みんなには面倒をかけた」



村田「ホントだよ それよりさっさとその服を着ろ レディーの前でいつまで素っ裸でいる気だ」



美菜萌「どうぞ」



御見内「ありがと」



いつの間にかしっかりと畳まれた衣服を受け取り、着替えを行う御見内



御見内「状況を教えてくれ」



着替えながら状況説明を受ける御見内



純や達が合流した件、現在2班に分かれての救出、奇襲作戦が行われてる件、それから既に犠牲者が出た件、そして冴子を始末した件



エレナ「…簡単に話すと現状こうね」



一気に聞かされた情報に驚きを見せる



御見内「驚いたな 純やと江藤が今ここに来てるとは」



純や達が来てる…



久々の戦友との再開に喜びたい所だが… それを掻き消す程のショックを受けていた御見内



御見内はその後しばし言葉を失い、茫然としていた。



それは… マツの死を聞かされたからだ…



作戦突入早々に脱落した指令塔の死に顔色を曇らせ、青ざめた。



超高層ビルの時と似ている…



あの時の最初の犠牲者 おおますの死の時と重ねていた…



他にも…



自分の居ぬ間に早くも数名が犠牲になっている…



いくら死が日常な世界に変わろと、ここが死と隣り合わせな戦場だろうと…



仲間の訃報を聞く度、胸に突き刺さるような衝撃を受け、悲しみに打ち拉がれそうになる



これだけはどうにも慣れる事が出来なかった…



ショックを隠し切れない御見内は顔を俯かせ、それを目にしたエレナや美菜萌達も口を噤んだ



誰もが口を閉ざし、静寂する中このまま悲しみの淵に引きずり込まれそうになる御見内



だったが御見内は必死にしがみつき、何とかそれをこらえた。



そう…



俺にはまだやらなきゃならない事があるんだ…



こんな所で挫けてる場合じゃない…



マツさんの死を無駄にしない為にも…



散っていった仲間の為にも…



生き残った俺達で目的を果たさなければならない…



俯く御見内が顔を上げ、皆と視線を交わした。



エレナ「道…」



御見内「悪い 思わず気が動転しちまったがもう大丈夫… 気持ちの整理はついたよ」



村田「…」



御見内「マツさんの為にもここは踏ん張り所だね」



美菜萌を目にした御見内



美菜萌「はい 仇取りましょ」



御見内「俺も奴には借りがある…」



ゾンビを使役すると言われる黒魔術ネクロマンシーの術士



この町を恐怖で支配し続ける殺戮集団のアタマ



人を実験体に恐ろしい怪物を作った卑劣で許せない男



山吹の顔を思い浮かべた御見内



御見内「決着をつけよう」



完全復活を果たした御見内の言葉にエレナと美菜萌が頷いた。



すると



村田「これだけで? 山口さんや純や、青木等の合流を待った方がよくないかぁ?」



エレナ「もう 今一つになって盛り上がった所なのに水を差すような事言わないの」



村田「でもよ…」



美菜萌「いいから行くんです 宜しいですね?」



村田「う… あ あぁ」



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