第74話 現着

シートに伏せたバイヴスの体躯



タタタタタタタタタタタタタタタ



カンカンカンカンカンカン



車のボディーからの黒煙も濃くなり



いつ炎があがってもおかしくない



そんな切羽詰まった厳しい状況の中



バイヴスが撃たれ… 死に絶えた。



メサイア「どうした?撃たれたのか?」



御見内は目を見開きながら伏したバイヴスを目にしメサイアに告げた。



御見内「あぁ 死んだよ」



メサイア「はぁ? 死んだ… まじかよ…」



突然の訃報を受け、頭が真っ白になるメサイア



御見内はバイヴスの死に顔を見下ろし心に誓った。



おまえの死を無駄にはしない…



この窮地から抜け出し…必ず生還を果たす…と



見開かれた瞼を閉ざし、バイヴスの握るマカロフを手に取った御見内



それには… 飛び入り参加のサイボーグもどき…



御見内が二丁拳銃で追って来るバスタードに視線を向けた。



おまえは邪魔だぜ…



静かにも激昂した眼差しでスイスイ滑って追走して来るバスタードに御見内がマカロフを向け



そして二丁拳銃で発砲した。



パァンパンパンパンパンパンパン



2つの銃口から交互に放たれる銃弾



シャャー



右 左に移動を重ねるバスタードを銃口で追いかけた。



パァンパンパンパンパン パァン



絶え間なく鳴り響く銃声



人外な機動で回避する人形に…



キン



やっと胸部に1発ヒットさせた。



パァンパンパンパンパンパンパン



ピキュン



そしてまた1発脚部にも…



御見内は徐々にバスタードの驚異な機動を捉え、続けてヒットさせていった。



だが…アーマースーツは銃弾を弾きダメージが与えられない…



御見内は単身で銃を持ち替えた。



無傷で横移動を繰り返しながらバスタードが軽機関銃を向け、発砲に転じようとした瞬間



パアン…



突如バスタードの眼球に銃弾がめり込んだ



全身は強硬なボディーアーマーに包まれ、銃弾さえ効かないが…



顔は違う…



頭部は生身 つまり唯一の弱点箇所…



それに気づいた御見内がそこを狙い撃ちにした。



顔面に被弾し、動きが鈍ったバスタードに再度単銃でしっかりと狙いを定める



逃がさねー…



そしてバスタードを捉えた御見内が反撃の銃弾を浴びせた。



パァンパンパンパンパアンパンパアン



放射された弾丸が見事に人形の顔面を捕らえた。



たちまち頬、眉間に銃穴が開き、態勢をぐらつかせたバスタードがスリップ



御見内は畳み掛けるようにもう1つの頭にも狙いを定め、弾丸を発射させた。



解体人の仇… 貰ったぁ~…



パン パァンパァパンパン



だが…



乱した動きの中、バスタードが腕で頭部を守り



防御された。



カン キン キンキン



鋼鉄なアーマードスーツに弾丸が弾かれる。



なに? クソ… 



御見内が再び銃撃を浴びせようと身構えた時



バスタードが急にバランスを崩し、ブレードがスリップ



140ものスピードで転倒させ



バスタードはコケたまま地を滑らせガードレールに接触



そのガードレールを突き破り、崖へと真っ逆さまに落下して行った



ポキッ バキバキベキ ガサガサ



枝をへし折り、生い繁る木々に接触した音を鳴らしバスタードは森林の中へと消えていった



メサイア「どうした?やったのか?」



御見内「あぁ 自爆して崖に落ちていった……」 



メサイア「そうか ラッキーだな」



御見内「あぁ だが… あれしきで死んだとは思えないが」



メサイア「おい 大きな道に出るぞ」



過ぎ去る車中から破られたガードレールを眺め御見内は直感した



奴はまたすぐに来る……と



気づけば後ろの車両群を大幅に突き放し距離が開いていた。



100メートル近くも離した車両群に目を向けた御見内が前方に振り向いた。



御見内「このままなら逃げ切れる あとどれくらいで着く?」



メサイア「少し遠回りになっちまったけど あの大通りを右に曲がればもうちょいだ」



バイヴスが使用していたマカロフを懐に仕舞い、新しい弾倉に交換する御見内



メサイア「ホントにサンクチュアリーに行くのか?」



御見内「勿論だ」



ガシャン



メサイア「奴らが待ち受けてるぞ」



御見内「いや 俺の予想では廃病院はもぬけの殻だろう」



メサイア「はあ?」



御見内「さっきの下水場に総動員で出張ってる可能性が高い」



メサイア「お!なるほどな それは確かにありえる」



T字の突き当たりを右折したSUV



御見内が無線を手にし、交信を図った。



御見内「こちら御見内」



「ザァー こちらポン吉です…ちょ代われ… 御見内くん こちら川畑だ 無事か?今どこにいる? ザァァ」



御見内「そろそろ病院に着きます」



川畑「ザァァ 奴等の動きが活発化してる…無線の傍受でそこら中に検問を敷きはじめてるんだ すぐに出ないと脱出出来なくなる…なるべく早く来てくれ…ザァー」



御見内「承知してます すぐに戻ります」



川畑「ザァーー せかしてすまないが早めに頼む ザザ」



御見内「了解 オーバー」



メサイア「着くぞ」



大通りから細道に進入



病院の案内看板だろう 蔓草が巻きつく古びた看板を通り過ぎた。



走行するが奴等の検問は無い



また見張りもいなければ警備もいない…



誰1人いない静かで自然に囲まれた山道をスムーズに進んで行く事が出来た



メサイア「いつもならこの辺りに多数徘徊してるんだが誰もいない 読み通りだな…」



野鳥の鳴き声が聞こえる山道を進み、SUVが駐車場に到着した。



メサイア「着いたぞ」



停車された車から2人は外に出た。



噴煙するボロボロのSUV



後ろのシートに横たわるバイヴスの死体を目にした御見内



ひとときではあるが行動を共にした仲間…



丁重に埋葬したいところだが時間は無い…



死した仏に1~2秒の黙礼を終え



御見内「半田さんを頼む」



メサイア「オーケー」



メサイアが半田をおぶり



御見内「行こう」



御見内がハンドガンを手にし、2人は小走りで車から離れた。



ある意味 メサイアとの出会いの場である廃病院に戻って来た2人



御見内「この建物の裏手だ こっちから回り込もう」



2人は建物の裏手にあるトラップの森を目指し進んで行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る