第14話 蹴散

根城「アブね」



咄嗟に後ずさった3人の目の前で



ガタガタ ガシャー



根城、ポン吉、大堀の目の前で音を立てて崩落したテーブルや椅子のバリケード



突破口が開き、障害無き一本の通路が唖然とする皆の前で出来あがってしまった。



佐田「やべ」



斉藤「まじかよ…」



斉藤もマツも…



誰しもがその場で身を固まらせ



凍りつかせた。



その開いた途端



1体の感染者が足を踏み入れ、悠然と皆の前に姿を現した。



後続でぞろぞろ奴等が入り込んで来ようとしている…



だが…



凍りつく一同はその感染者に目を向けるのみで動けないでいた。



入り込んで来た1体の白衣姿の元学者らしき感染者がギロリと左右を見渡し超早口で喚いた。



「俺様は宇宙人だ… 4400000光年先のアルファ星から来てこの星に住み着く異星人だ この星の民はあまりに原始過ぎてテクノロジーも遅れまくりもいい所 例えるなら俺が人ならこの星の民は微生物レベルのテクノロジーだよ しかもおまえ等はすべてに対しての概念も間違いだらけで笑っちゃうよ… そうだなぁ いっぱいあり過ぎるけど 一つだけ言い事を教えぉぃてやるるるよよよ この世は時間が1方向にしか進まないと考えてるのはおまえ等地球人だけなんだぜぇ アインシュタインが相対性なんたらって意味不明な理論で物事が同時に起こらない為時間が存在するとか馬鹿げた提唱をしちまったもんだから地球人は間違った概念が植え込まれちまってるもんだよ…この世には虚時間ってもんが存在しその時間を横すべりすれば時空なんて簡単にショートカット可能なんだぜ 俺達に距離や時間は関係ない どんなに離れてようがこの星は隣りの家みたいなもんさ そうだな 例えば1月1日から1月2日までは24時間としてまっすぐに進む場合だけどその虚時間ってのを通って横に滑れば1年かけて翌日に進む事も可能だしその逆に一瞬で行く事も可能なんですわ……まぁ おまえ等死ぬから言っても無駄かな…はは」



その学者風感染者が歯を剥き出し、目の前にいる根城に襲いかかろうとした



その瞬間



シュ



学者風感染者のこめかみに小槍が突き刺された。



次いで…  シュ



バカッ



横から飛び出した御見内からの跳び膝蹴りが頬を捉えていた。



テメェー等…



そこには臆する事無く誰よりも先に動く御見内がいた。



ここは通さねぇーよ…



勝手にテーマ曲 melody of awakeningが流れ



奴等の侵入阻止にいち早く動いた御見内が跳び蹴りを胸部へヒット、元学者を押し返した。



総崩れで感染者達が倒れる



それにハッとさせた一同も御見内に続き動いた。



マツ、阿部、川畑がそれぞれボウガンや水中銃を発射させ、援護する



バシュ バシュ バシュ



銛矢、カーボン矢が入り込もうとする後方の奴等の額や顔面に突き刺さる



マツ「押し返したら すぐにバリを組み直す 絶対こいつらを中に入れるな」



しかし我先に入り込もうとする感染者がすぐに群がり、ごったがえした。



御見内は紐で繋がれた打根の小槍を握り、ヨーヨーの要領でスナップを効かせて投げつけた。



目に突き刺さり、目玉をえぐった小槍が紐で引き寄せられるや



御見内は隣りにいる大堀からライオットシールドを借りた



御見内「それ貸して」



そして崩れ落ちたテーブルを足で蹴り押した。



侵入しようとする感染者の足に滑らしたテーブルが激突、バランスを崩した感染者を今度はライオットシールドで体当たりし、再び押し返した。



バシュ バシュ 



撃ち込まれた矢が額に突き刺さり、へたり込んで昇天する感染者



小泉は薙刀の突きで生きた屍の口内を串刺した。



またバリケードの隙間から顔をねじ込ませた感染者がキックミットへとかじりつき、そいつをアイスピックでメッタ刺しにする谷口



その隣では隙間から伸びた腕に胸ぐらを掴まれたポン吉が引き寄せられ



ポン吉「わぁ わ 誰か助け…」



すると手斧で感染者の腕が真っ二つにぶった斬られた。



斉藤「あぶねぇだろ 気抜くな おまえ」



ポン吉「ごめんなさい…」



またナイフやトンカチ、フライパンで応戦する男達



その頃…



七海「美菜ぁ~ 後どれくらい?」



今ではスムーズに移送が進み、続々と建物から脱出して行く行列



美菜萌「後30~40人です」



七海「分かったぁ 後3、40人くらいです」



エレナ「皆さん 落ち着いてこっから外に出て下さい」



誘導するエレナの耳に聞こえてくる男達の声にチラリと振り返った。



「ああぁぁぁあ」 「うがあゃゃあゃあややぁ~」



「A pesar de que el cielo es tan azul, el viento es tan cálido, el sol es tan brillante, ¿por qué tiene tanto sueño? これを訳すとだな… ズボッ」



ザクッ ザク ブシャー バキ ゴン



マツ「奴等を押し返したら一気に塞ぐぞ そこの長テーブル2つを置いて、椅子とテーブルを積み上げるんだぁ~」



気がかりなエレナが廊下の先へ視線を向けるやふと美菜萌の視線に気が付いた。



こちらに顔を覗かせる美菜萌



美菜萌も廊下の先へ視線を向けながら口にした。



美菜萌「私も気になります でも…エレナさん 今は男子を頼りにしましょ」



エレナ「うん…うんそうだね…」



道…気をつけて…



速やかな脱出が行われる中



御見内の押し切る盾に群れて来た感染者等に押される。



一匹でも火事場の馬鹿力を発揮するこいつら



地を滑らせながら盾が押し戻されて行く



マツ「誰か御見内に力を貸せ 根城と佐田、小泉は長テーブルでいつでも塞げるように待機しとけ」



川畑「俺達で後ろを射止めましょう」



水中銃に銛矢が装填され



川畑から即座に撃ち込まれた



バシュ



こめかみに銛矢が突き刺さり、一体倒れるのだが…数で勝る奴等の群れに、一匹二匹倒した所でまるで無意味に等しかった



御見内が押される中 チラリと後ろを振り返り、口にした。



この場で一番ガタイのいい男



アメフト用のヘルメットを着用し、

見るからに力もありそうな男



百村へ…



御見内「そこのラガーメン 渾身のショルダーブロックをかましてくれ」



百村「え?俺?」



御見内「そう 頼むよ ラグビーのあの豪快なタックルでこいつらを盾ごしから蹴散らしてくれ」



百村「あ あぁ… 分かった」



右の指先を地に着け、タックル態勢をとった百村がボソリと口走った。



百村「つ~か ラガーマンじゃないし… 似てるかもしんねぇ~けど俺アメフトだし…」



御見内「用意はいい?」



百村「いいよ」



拳を握り、全身に力を入れた百村



皆が百村に注目した。



御見内「3…」



御見内のカウントダウンの掛け声に百村が目の色を変え



御見内「2……1…ゴー」



パッと手を放し、ライオットシールドから離れた御見内に代わり、猛突進でショルダータックルが盾へとブチ当てられた。



総崩れで倒れ込む感染者達



タックルの衝撃により 一瞬にして群れが蹴散らされた。



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