閑話 手紙


 唯はもらった2通の手紙を眺めている。


(ママに渡してって言われたけど、ママの知っている子なのかな?)


 そして、唯は知らなかった。

 この手紙を、母親である九条くじょうすずが読む時に新しい犠牲者が産まれる事を・・・。


(マホちゃん?私以外には声をかけなかったけど良かったのかな?もうどっかに居なくなっちゃったけど?)


「唯!」

「うん!」


 自分を呼ぶ声に気がついた唯は周りを見回すが、手紙と順番を教えてくれた女の子が居なかった事を不思議に思ったが、気にしないで名前を読んでくれた、タクミの方に急いだ。


---


 ふふふ


 すずに手紙がしっかり渡るといいな。


 本当は、すずを巻き込みたくなかったのだけど、仕方がないよね。


 ふふふ。

 もうすぐだね。もうすぐ会えるよ。


 楽しみだよ。楽しみだね。


---


 すずへ


 この手紙を読んでくれているという事は、唯ちゃんは手紙を渡してくれたって事だね。


 あのね。

 すずにお願いが有って手紙を書きました。


 私を見つけてください。


 学校では、すずとなつみだけが友達だった。

 委員長や副委員長は、先生に言えば大丈夫と言った。先生に言ったら、委員長と副委員長は、”あdfがr”と”ぱgたvばヴぇ”に私が先生に言ったと教えていた。

 あと、”うvたvら”に言われたって他の子が雨の日におばあちゃんに買ってもらった大切な傘を隠した。男子が、傘を破った。許せなかった。

 あの傘を探してくれたのも、すずとなつみだったよね。本当に嬉しかった。見ていただけの子も多かった。


 でも、こっそり教えてくれる子も居たよ。あの夜。私を探してくれた子は許そうと思う。ダメかな?


 あの夜。すずは私を守ってくれよね。行かなくていいと言ってくれた。すごく嬉しかった。すずとなつみが守ってくれた。

 あとで知ったけど、”ぱgたvばヴぇ”や”うvたvら”が、すずとなつみを殴ったのだよね。ごめんね。私の為に・・・。


 私は、”あdfがr”に呼び出された。そこに、”ぱgたvばヴぇ”や”うvたvら”も居て私のパパやママやお兄やお姉の事を馬鹿にした。許せなくて、許せなく、悲しくて、辛くて、なんで、なんで、なんで・・・。と、思ったけど、我慢したの・・・。


 ”あdfがr”が、肝試しを怖がって、私に変わりに行けと命令してきた。服を脱がされて、”あdfがr”の服に無理やり着替えさせられて、肝試しに行かされた。私、怖いからイヤって言ったら、”あdfがr”に殴られた。泣いていたら、”ぱgたvばヴぇ”や”うvたvら”が私を先に歩かせようと言い出した。

 ”ぱgたvばヴぇ”や”うvたvら”や”ヴぁいばちゅd”の荷物も持っていたの。手紙も持っていけって言われて持っていったの。


 道が暗いって言われて、”ぱgたvばヴぇ”に殴られて、歩くのが遅いって言われて、”うvたvら”に殴られたの・・・。

 懐中電灯は一つしか無いから、後ろを照らしていないと”ヴぁいばちゅd”に怒られたの。


 でもね。怖いのも痛いのも、我慢していれば、大丈夫って”ヴぁいばちゅd”が言うから頑張ったの・・・。


 でも、ダメだった。

 我慢することができなかったの・・・。


 私の事だけなら我慢したよ。でも、パパやママやお兄やお姉だけじゃなくて、すずやなつみの事も悪く言うのだよ。それも”ヴぁいばちゅd”がだよ。すずやなつみまで殴るっていい出したの。

 なんで?って、口答えしたら殴られた。”ヴぁいばちゅd”に殴られた。その時に、”ヴぁいばちゅd”が大事にしていた時計が壊れたの・・・。私のせいだって言い出して、また殴られた。弁償しろと”ヴぁいばちゅd”の時計を投げつけられたの・・・。


 それで、それで・・・私・・・沢山殴られたの・・・。


 気がついたら暗い所にいたの。

 暗くて、冷たくて、寂しくて・・・。誰も来てくれなくて・・・。遠くで、すずとなつみと他の子や先生の声が聞こえたの・・・でも、返事ができなくて、寂しかったの・・・。


 すず。あのね。わたし、”ヴぁいばちゅd”に殺されたのだと思う。

 どこかに埋められたのだと思う。


 肝試しの最中だったから、仏舎利塔の近くだと思うの?

 やっと暗い所から出てこられたの。


 すず。私を見つけてほしい。お願い。

 帰りたい。私、帰りたい・・・。


 すがやまほ


---


 この手紙が、九条鈴の所に届けられるのは数日後となる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る