全ての終わった朝

「ふわぁ……」


 龍野があくびをしながら、目を覚ます。


「んっ……」


 同時に、ヴァイスも目を覚ました。


「おはよう、ヴァイス」

「おはよう、


 至って普段通りの、龍野への呼び方だ。

 そこに、ディノが割り込んだ。


「おはよー、龍野、ヴァイス。いやー、昨日の夜は大変だったぜ」

「知ってるさ。シュランメルトって奴に、何か言われたんだろ?」

「ああ、『お前の大切な者を守りに行け』とな。お陰でつい、全力出しちまったぜ。まああのヘンテコなヤローユージョーは跡形も無く消し飛んだけどよ」


 その一言を聞いて、龍野は安堵した。


「そうか。なら、無事なんだな」

「ああ。シュランメルトに連れられて他の奴らの夢を見る事になったけどよ、狙われてたのは龍野とヴァイスだけだった。間違いないぜ」

「良かった……」


 再び安堵する龍野。

 と、シュシュの目が覚めた。


「おはようございます、お姉様、兄卑。そしてディノさん」

「おはようございます、シュシュ」

「おはよう、シュシュ」

「おはよー」


 普段通りの挨拶を交わす4人。

 やがて洗顔などを終えた一同は、他の団員と、そしてフーダニットと顔合わせをした。


---


「さて、黒龍騎士団諸君。撤収作業開始だ」


 全団員がいつも通りの挨拶をし、ユージョーの脅威が確実に去った事を確かめた龍野は、号令一下で作業を始めた。


 とはいえ最低限の備品を除き、持ち込んだのは鋼鉄人形だけであったため、わずか30分で作業は完了したのである。


「全団員の搭乗を確認」


 龍野達もまた、自身の鋼鉄人形に搭乗すると、フーダニット達に向けて機体の右腕を振って見せる。“じゃあな”の合図だ。


『また必ず来る! それまで息災でいろよ!』


 龍野は拡声機越しに、フーダニットに伝える。

 それを受けて、フーダニットもまた返した。


「はい、私の騎士様!」


 フーダニットの返事を聞き届けた龍野達は、カメリア宮殿へテレポートを始めた。

 かくして、黒龍騎士団は撤収を無事に完了したのである。




 ……ここに、龍野達と“カンパニー”との悪しき因縁は、断ち切られたのである。

 全ての元凶、ユージョ=メニーマネーを討った事によって。

 これからは、両者が共存の道を歩み続けるであろう。

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