vs学園祭(中編)

「うおっ!?」

「何だ!?」


 入口付近にいた二人の、用心棒と思しき大男達が斬り倒されたのは、突入わずか数秒後の事であった。


「突入しろ!」


 龍野は片っ端から、防衛要員と巻き込まれたを切り捨てながら、奥へ奥へと進む。

 ヴァイスやシュシュ達も、それぞれ携行した銃器、あるいは法術でもって、次々と防衛要員やカンパニーVIPを、屠っていった。


 と、あるVIPが落とした物が、龍野の視界に映った。


(あれは……ヴァイスの、人形!?)


 敵を屠り、また牽制しつつ、龍野は人形の元まで駆け寄る。


「これか……クソッタレが!」


 そしてヴァイスの人形を確認するなり、ためらいなく大剣を叩きつけた。


「他にも人形があるはずだ!

 探し出して破壊しろ!」

「「了解!」」


 龍野以外の黒龍騎士団の団員達もまた、防衛要員の殺傷や人形破壊で、大暴れしていた。


「よくも、こんな汚らわしいものを……!」

「お姉様を侮辱したその罪、死で償いなさい!」


 自らの存在を貶められたヴァイス、そして姉を想うシュシュは、ヴァイスを模した人形を片っ端から破壊する。


「叔母様が……!

 くっ、汚らわしい人形たち……!」

「これは、大叔母様の……!?

 何たる偽物を!

 わたくしの持つ本物以外は、全て消えなさい!

 この、恥知らず……!」


 叔母様、あるいは大叔母様と呼ばれる少女――ララ・アルマ・バーンスタイン――を、最も大事な存在の一つとして認識するブランシュ、そしてグレイスは、ララを模した人形を、銃器、法術、光剣といった手段で、続々と破壊する。


 と、その時――


「動くな!」


 龍野達黒龍騎士団を呼び止める声が響いた。


「あ?」


 龍野達が見ると、そこには――刃物を首筋にあてがわれた、各地の女子生徒と、彼女達を人質に取る司会進行役の男や防衛要員、そしてカンパニーVIPの姿があった。


「ひっ……!」


 女子生徒達の目は生気が無いが、命の危機を敏感に感じ取っている。

 その証拠として、体が、特に脚が、ガクガクと震えていた。


「武器をその場に、ゆっくりと置け!」


 司会進行役の男が、大音声で龍野達に呼びかける。

 龍野はこっそり、歯嚙みし――いや、笑みを浮かべていた。


     *


 その頃。

 ある一人の少女を連れた、マフィアとそのお付き――に変装している“ハンター”二人組は、突然の事態に困惑していた。


「な、何だよ、これ!?」

「わ、わかりません!」

「……っ!」


 三人が困惑する。

 だが、こうしている間にも、死の嵐は迫っている。


「と、とにかく逃げるよ!」

「ええ!」

「え!? ちょ、ちょっ……!」


 は、入口とは逆方向へ逃げ出した。


     *


「どうした!?

 武器を置け、さっさと!」


 司会進行役の男が怒鳴りつけ、同時に、ナイフをこれ見よがしに震わせる。

 人質となる女子生徒が傷つこうと、お構いなしだ。


「クソ、この外道が――」

「何とでも言え、雑魚が!」


 うめく龍野を嘲笑う、男。


 だが、次の瞬間。

 龍野は笑いながら、こう言い返した。




?」




「何を強が――」


 男の声が、不自然なタイミングで途切れる。


「わたくし達を見くびった罰ですわよ」


 男の背後には、いつの間にかグレイスがいた。

 男の脳天を貫いてから、冷たく言い放つ。


「!?」


 VIP達が、わかりやすく動揺する。


 そう。

 司会進行役の男の他にも、同様の方法で防衛要員やVIPが、続々と現れたのだ。


「さて」


 龍野は作戦通りに事が進んだのを確かめると、手近な男に大剣を向けた。


「う、撃つな須王龍野!

 撃てばこの女を――」


 龍野の能力を知っているのであろう、男ががなる。


「知るかよ」


 だが龍野は、大剣を構えた。

 その手には、腕には、いささかの震えも存在しない。


「ひっ……!」


 男がナイフを引いて、人質の首筋を裂く――よりも速く、龍野は光条レーザーを放った。

 男の手や腕の一部分ごと、ナイフの刃を抉り取る。


「さっさと離れろ、クソが」


 龍野はわずかに切っ先をずらすと、二発目を放つ。

 今度は人質を抑えていた腕が、吹っ飛んだ。


「ひぎぃぁあああっ!」


 男が叫ぶと同時に、拘束が解けた女子生徒がへたり込む。

 それは即ち、事を意味する。


「終わりだ!」


 がら空きになった上半身と頭目掛け、龍野は三発目を放った。

 頭部から胸部にかけ、男の体が欠損した。


 龍野は女子生徒の無事を確認すると、彼女に囁く。


「もう、大丈夫だ。

 俺達は君たちを、助けに来た」

「あ……ああ……」


 女子生徒はいまだ、恐怖に震えていた。

 だが、龍野は辛抱強く、言葉をかけ続ける。


 兜を、一時的に取ってまで。


「怖がるな。

 君をもてあそぶ男はもういない。

 これから俺達が、君たちを安全な場所まで逃がす!」


 龍野の宣言により、女子生徒の体から、恐怖が抜け始めた。

 その様子を見て安堵した龍野は、周囲の様子を確認する。


「流石、俺の団員達だな。

 よくやってるぜ」


 ある者はテレポートで背面に回ってから光剣を突き立て、

 またある者は魔術で腕を氷漬けにしてから殺し、

 さらにある者は素手で遠くまで殴り飛ばしていた。


 驚くべき事に、女子生徒に関しては一人の死者も出さず、救出活動は終了した。

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