第11話 いきなり深刻ぶる

 今日はお葬式だった。パパとママの。


 とゆー、パロディ、もとい、パクリをしたいわけではないのだ。

 今、意識障害に悩んでいる。

 呼吸の合間に、「あ、気持ちいい」という感覚がふいにおとずれ、瞬間意識が飛び、ふうっと戻ってくる。

「あ。今意識が遠のいていた」という自覚は後から来る。

 すごく怖い。


 この感覚は、経験者ならわかる。

 かつて、学校で倒れたときと同じ感覚がしたので、これはいけない、と思った。

 その感覚とは、急に意識がとぎれて、気づくと膝からくずおれて、床が目の前にある――というもので、

「なにが起きたんだ?」

 と愕然とする。

 その感覚までそっくりだ。

 倒れたと言ったって、最初は別に恐怖はなかった。

 若かったので、自分の身に起きたことに無自覚で、怖いもの知らずだったのだ。

 しかし、その一日のうち、四度、同じ苦しみを味わい、そのうち二度、倒れた。

 周囲に分別のつく大人がいたので、医務室へ行くように勧められ、無事に単位ももらえた。

 たしか、真夏のスクーリングで、(わたくしは通信課程で美大を卒業したのだ)熱中症の症状に合致した。

 のちのちも、炎天下、日傘も帽子も使わずにてくてく道を歩いていたら、呼吸がおかしくなったり、両足をつったりしたので、以来、出かけるときは涼しい時間帯か、車でと決めて、日がな部屋から出ない生活を続けてきた。

 それを親にもたれかかっていると言われても、どうしようもない。

 わたくしはもう、働ける体ではないのだと思いこんでいた。

 実際はそれからもアルバイトはしていたのだが、実は、エアコンの利いた室内のみ。

 ゴミ拾いなどは早朝に片づけておいた。


 そしてまた、今日、意識がとぎれた。

 まずいんである。


 どうまずいかというと、原因が一つに絞れない。

 三日間出ずっぱりで、イベントに興じていた疲労なのか、それとも暑さなのか、それとも脳の病か。

 脳の方はちゃんと薬を最低限、処方されており、飲み続けている。

 再発防止のお薬だ。

 これはおいておいて。

 疲労の上に、暑さ。

 これも考えられるが、対策はエアコンを入れる、ちゃんと寝る、くらいしか思いつかない。

 困ったことに、一緒に住んでいる祖母がエアコン嫌いだ。

 寝ようと思っても、ついつい考え事をしてしまい、そして意識が飛ぶんだから、しかたがない。

 横になっていれば、とりあえず、倒れてどこか致命的な個所を打って死ぬのは免れる。

 しかし、今は恐怖が先に立つ。

 もう、飛んだ意識が戻らないかもしれないと、未来を憂う。

 人間らしくなったものだ。

 怖いもの知らずの宇宙人は、若い内だけなのだ。

 やれやれ。

 本当に困った。

 なにが一番困るって、家族が、わたくしの状況を知らせても知らん顔なところである。

 自分はそうはならないから、関係ないし、理解する必要がないと思っているのだろう。

 大きな間違いである。

 自分は体力があるから、強いから、ヤワではないから、だいじょうぶだと思っていられるのは、まだまだ初夏だからで、これから暑くなったらますます危険度が増す。

 今から対策を講じておきたいのに、みんな非協力的だ。

 こういう態度が、一番弱い人間にしわ寄せがいく原因になる。

 早めに、扇風機を買うとか、古くてうるさい奴でもいいから、物置から引きずり出してくるとか、したいのだ。

 ええい、邪魔をしてくれるな!

 もう、相談はしない。

 勝手にやるわい!


 あ~~あっち。

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